フルセットから木村九段の初タイトルへ。

フルセットから木村九段の初タイトルへ。"十番勝負"後半戦 第60期王位戦七番勝負を振り返る【後編】

ライター: 渡部壮大  更新: 2019年10月03日

注目対局プレイバック

*第60期王位戦七番勝負を振り返る【前編】はこちら

第4局の後に行われた竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第2局は木村が制勝。これで挑戦者決定戦の方はフルセットにもつれ込むこととなった。

第60期王位戦七番勝負第5局

木村が良い流れで迎えた第5局は徳島県徳島市「渭水苑」にて。豊島が先手となり、ここでついに角換わりが登場した。腰掛け銀から互いに馬を作り合って手の難しい中盤戦に。陣形をうまくまとめた豊島が抜け出す。

【第5図は△2三歩まで】

ここから▲5五銀が気持ちの良い決め手。銀を取っても飛車を取っても▲3三歩成から寄せが決まる。実戦は△4五歩で馬のラインを止めたものの、今度は▲4四銀△同飛▲3一銀△同玉▲3三歩成で決まった。豊島が3勝目をあげて防衛まであと1勝。

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王手をかけた豊島王位

第60期王位戦七番勝負第6局

第5局の後に行われた竜王戦挑戦者決定戦第3局は先手を得た豊島が制勝。初の竜王挑戦を決めた。

第6局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。木村先手の局では三度相掛かりへ。早い段階で駒得した木村が優勢となる。

【第6図は△8五桂まで】

図で▲8五同金と取っては△8八馬▲同飛△7六桂がある。▲7五飛が攻め駒を責める木村調の受け。以下△1九馬に▲8五金△6六桂打▲同歩△同桂▲7九飛が馬に当たるのが大きい。丁寧に面倒を見た木村が快勝となった。

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タイに戻した木村九段

竜王戦挑戦者決定戦に続き王位戦七番勝負もフルセットとなり、文字通り十番勝負となった。ここまで豊島が5勝、木村が4勝。最後の一局が持つ意味はとてつもなく大きい。木村にとっては「勝てば初タイトル」の一局を迎えるのは9度目だ。

第60期王位戦七番勝負最終局

最終第7局の舞台は東京都千代田区「都市センターホテル」にて。注目の振り駒で先手になったのは豊島。角換わり腰掛け銀から、課題の局面へと進む。木村は時間を使っていくが、豊島はほとんど使わず準備の深さがうかがえる。しかし豊島も封じ手で大長考し、時間の差は一気に縮まった。

【第7図は△5二飛まで】

ここでは指しにくいがそっぽにいく▲8二桂成が良かったようだ。本譜は▲2四歩△同歩▲6二歩と垂らしたが一瞬重く、歩切れになったのが痛かった。△7七銀▲5八玉△7八銀不成▲6一歩成△6九角と踏み込んで後手に形勢が傾く。

【第8図は▲4七金打まで】

先手は歩切れのため、2三に打つ一歩がないのが痛いところ。とはいえ後手もここで決めないと先手に攻める余裕を与えて逆転する。まずは△2七角から入る。▲同飛なら△同金と応じておけば良く、頭の丸い駒しかない先手は後手玉に迫れない。実戦は▲3九玉とかわしたが、△4五桂が気持ちの良い活用となった。▲4六金、▲4五同桂、▲4五同銀いずれも△3八金と打って詰む。実戦の▲3六金にも△同馬▲2七飛△同馬として、後手玉は詰まず先手玉は受けなしだ。

木村が2連敗の苦しいスタートから追い込んで悲願の初タイトルを奪取。タイトル挑戦は7度目、46歳3カ月での初タイトルはダントツの最年長記録だ。

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インタビューに答える木村新王位

十番勝負は5勝5敗の痛み分けとなったが、木村にとっては言葉にならないほど嬉しい結果となったことだろう。タイトル初防衛に失敗した豊島だが、竜王挑戦権を得て、史上4人目の竜王・名人を目指して秋の七番勝負に臨む。

画像は王位戦中継ブログより

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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