ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年09月17日
豊島・木村夏の十番勝負は本当に十番戦い切ることとなりました。竜王戦の挑戦者決定戦は豊島将之名人が制しましたが、王位戦を制するのは果たして。また、女流棋戦では初代清麗に輝いた里見香奈が女流六冠の新記録を樹立しました。
【第1図は△1八飛まで】
第1図は第60期王位戦七番勝負第6局(▲木村一基九段△豊島将之王位)。相掛かりからうまく後手の攻めを余して先手勝勢の局面です。ここで▲3七銀は△3六歩でいけません。▲2八歩が「大駒は近付けて受けよ」の軽手で、△同飛成と取らせてから▲3七銀とすれば竜取りの先手になります。以下も着実な指し回しを見せた木村九段が勝利。シリーズは3勝3敗となりついに最終局へともつれ込みました。
王位戦七番勝負はフルセットに 王位戦中継ブログより
【第2図は▲6一馬まで】
第2図は第67期王座戦五番勝負第1局(▲斎藤慎太郎王座△永瀬拓矢叡王)。東西の若手同士のタイトル戦です。ここで△5七銀と上から押さえるのが寄せの基本で、先手の投了となりました。このように居玉は寄せられやすい場所なので「居玉は避けよ」という格言があるのです。まずは挑戦者が白星発進です。
敗れた斎藤王座 王座戦中継ブログより
先勝した永瀬叡王 王座戦中継ブログより
【第3図は▲7五同歩まで】
第3図は第1期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第3局(▲甲斐智美女流五段△里見香奈女流五冠)。ゴキゲン中飛車に超速3七銀戦法の戦型です。ここで△4八角と打ち、5筋を緩和しにいきました。以下▲2九飛△5三飛▲6四歩△同歩▲3七銀打△7五角成と「馬は自陣に引け」で手厚い形を実現して後手勝勢です。初代清麗には第一人者が輝きました。
里見香奈初代清麗誕生の記者会見の様子 ヒューリック杯清麗戦中継ブログより
【第4図は△9九竜まで】
第4図は第32期竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局(▲豊島将之名人△木村一基九段)。角換わりで後手の猛攻がひと段落したところです。▲4四香が「要の金を狙え」で平凡ながら厳しい攻め。後手の総矢倉は堅いのですが、一枚一枚はがしていけば大丈夫です。以下△8八銀に▲4三香成△同金▲4四金と守りの駒をはがしにいって先手が押し切りました。豊島名人は初の竜王挑戦です。
竜王戦中継ブログより
【第5図は▲7七角まで】
第5図は第41期霧島酒造杯女流王将戦挑戦者決定戦(▲伊藤沙恵女流三段△西山朋佳女王)。ここで△2五角が「浮き駒に手あり」の反撃。5八の金取りを見せながら、手順に▲2四飛も消しています。実戦は▲6八金右に△4六歩が確実なと金攻めで、以下駒得に成功した後手が押し切っています。
【第6図は▲4七同飛まで】
第6図は第9期リコー杯女流王座戦挑戦者決定戦(▲伊藤沙恵女流三段△西山朋佳女王)。女流王将戦と同じカードです。5二の金取りになっていますが、まだ後手玉は大丈夫なので寄せのチャンスです。ガツンと△5八角が強手で、▲同金△7九金▲8八玉△6九竜が速い寄せ。「終盤は駒の損得よりも速度」です。以下数手で先手の投了となりました。
秋の女流王将戦三番勝負、女流王座戦五番勝負はどちらも里見香奈女流六冠─西山朋佳女王の頂上決戦です。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段