ライター一瀬浩司
第71期A級順位戦、佐藤VS高橋戦でも使われたカニ囲い右四間飛車の組み方【玉の囲い方 第87回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年08月14日
三回前までのコラムでは、対矢倉における「左美濃急戦」、そして前回のコラムまでは「左美濃」つながりで、「左美濃右四間飛車」をご紹介しました。今回は「右四間飛車」つながりで「カニ囲い右四間飛車」をご紹介します。じつはこのカニ囲い右四間飛車、形が二種類あります。順に見ていきましょう。
カニ囲い右四間飛車の特徴
囲いの特徴:まずはよく見られる形から。第1図は平成24年6月14日、第71期A級順位戦、▲佐藤康光王将ー△高橋道雄九段戦(肩書は当時)です。【第1図は△4二銀まで】
後手の高橋九段の陣形がカニ囲いです。飛車が後手側から見て、右から四つ目の6二に構えているので右四間飛車となります。この腰掛け銀の形の右四間飛車は、プロの実戦でも見られると思いますし、将棋世界8月号でも、左美濃の形とともに、戦術特集で取り上げられています。
第1図から、佐藤九段は▲4六銀と銀を進出させ、高橋九段は△6五歩と、手薄になった6筋から仕掛けていきました。▲6五同歩は、△同銀で先手が支えきれなくなりますが、もちろん佐藤九段は仕掛けられるのは読み筋通り。▲5七銀上と6筋を補強し、△6六歩▲同銀△6五歩▲5五銀左(第2図)と進み、難しい形勢です。
【第2図は▲5五銀左まで】
また、第3図をご覧ください。
【第3図は▲5九金まで】
令和元年6月6日、第91期棋聖戦1次予選、▲金沢孝史五段ー△小林宏七段戦です。右金を5八に上がらず、5九に寄ったところです。玉のナナメのラインが開いていますが、代わりに飛車の打ち込みには強い形(例えば△3九飛と打たれたときに王手にならない)になっています。右四間飛車は基本的にガンガン攻める戦法ですので、より飛車を切って攻め込んでいきやすい形ともいえます。
カニ囲い右四間飛車に組むまでの手順
このように、腰掛け銀に構えて囲うのが第一の形です。カニ囲い右四間飛車なので、まずは5八に金を上がる手順を見ていきましょう。いつも通り、先手の駒だけを配置して進めていきます。
囲いに組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲4六歩、▲4七銀、▲5六銀、▲4八飛(第4図)。
【第4図は▲4八飛まで】
組み方はいろいろありますが、今回は銀をスルスルと5六に進出させ、すぐに右四間飛車に構えていく手順にします。こうすることにより、いつでも▲4五歩の仕掛けを見せて、後手にプレッシャーを与えることができます。ここから、玉を囲っていきます。第4図から、▲6八銀、▲7八金、▲6九玉、▲5八金、▲3六歩、▲3七桂(第5図)。
【第5図は▲3七桂まで】
一つずつ上がった金銀の形がカニの甲羅、そして玉を寄ったのがカニの横歩きのようですね。玉を囲ったら、▲3六歩~▲3七桂と右桂も活用し、総攻撃の形になりました。いかにもすごそうな攻撃力に見える陣形ですよね。
次回のコラムでは、カニ囲い右四間飛車に組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。