ライター一瀬浩司
△3四歩には角をうまく使おう!矢倉における4六銀、3七桂型の攻め方とは【第97回 矢倉の崩し方】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年07月09日
今回のコラムも、矢倉で1筋の端歩を突き合っている形で4六銀、3七桂型から攻めていく指し方を解説していきます。それでは第1図です。
【第1図は▲3五同角まで】
いま3五の地点で銀交換が行われたところです。ここで、考えられる後手の主な候補手として△6四角、△2四歩、△2四銀、△3四歩を挙げましたが、そのうち△6四角、△2四歩、△2四銀の三つをどうなるのかこれまで見てきました。
最後の候補手△3四歩
今回から、最後の候補手である△3四歩を見ていきましょう。ここでもし、8二に飛車がいたり、9一の香取りになったりするならば、▲4六角(第2図)と引く手(わかりやすいように8二に飛車など、後手の駒をいくつか置いておきます)がよい手になります。
【第2図は▲4六角まで】
第2図から△6四歩なら▲3三歩と打ち、角や金で取ってくれば▲同桂成で駒得になって先手よしですね。△3三同桂なら▲1五香と走り、△同香なら▲1三角成△2一玉▲1二銀まで先手の勝ちになります。▲1五香のとき、△2五桂なら▲1一香成として、△同玉なら▲2五歩、△3五銀なら▲2一銀でいずれも先手よしです。
第2図で△6四角には、二通りの攻め方があります。ひとつめは▲3三歩と打ち、金で取ってきたら▲同桂成でこれも先ほどと同じように駒得となるので先手よしです。△3一金や△4二金寄とかわすのは、▲6四角△同歩▲6一角(第3図)が厳しい(図は△4二金寄とした場合)です。
【第3図は▲6一角まで】
第3図からは▲4三角成△同金▲3二金が狙いで、以下△1二玉なら▲1五香△1三歩▲同香成△同桂▲2一銀まで、△3二同飛なら▲同歩成△同玉に▲8二飛や▲6一飛などと打ち込んで先手優勢になります。
△5二銀と受けられても大丈夫
ところで、第3図から△5二銀と受けられるとどうでしょう? 角の行き場がないじゃん、と思われるでしょう。ですが、安心してください。この形でよく出てくる返し技があり大丈夫です。▲8三銀と打てば、△6一銀には▲8二銀成(場合によっては不成のほうがよいこともあります)として▲7一飛と打ち込む手が残って先手よしですし、△6二飛と逃げても▲7二角成とすれば飛車角交換は必至でやはり先手よしです。
では、▲3三歩に対し、△同桂と取ってくる手はどうでしょうか? これには▲6四角△同歩に▲1五香と走り、△2五桂には▲1一香成として、△同玉なら▲2五歩と桂を取り返して先手十分。△1七桂成なら▲2一銀と打ちます。この場合は飛車の横利きが通っているので、△1一玉▲3二銀成△同飛とされてしまいますが、そこで▲4一角(第4図)と打てば、△8二飛には▲2三角成、△2二飛には▲1三歩、△2二玉には▲1三金△3一玉▲3二角成△同玉▲1二飛△4一玉▲2三金でいずれも攻めきれます。
【第4図は▲4一角まで】
▲1五香のときに△同香は、▲1三角と打ち、△2一玉▲3三桂成△同金寄▲2五桂(第5図)でやはり先手よしです。
【第5図は▲2五桂まで】
▲1三角では、▲1三銀△3一玉▲3三桂成△同金寄▲2五桂でも先手よしです。
次回のコラムでは、第2図からの△6四角に対し、別の攻め方を見ていきます。
矢倉の崩し方
監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。