ライター一瀬浩司
昭和15年に指された形が現在に。土居矢倉の組み方(1)【玉の囲い方 第77回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年07月05日
今回のコラムでは、「土居矢倉」をご紹介します。最近将棋を始められた方には、土居矢倉? 聞き慣れない名称だと思われることでしょう。土居矢倉とはどういう囲いなのか? そちらを見ていきましょう。 囲いの特徴:第1図をご覧ください。
土居名誉名人が好んだ形
【第1図は△8二飛まで】
昭和15年6月25~27日、第2期名人戦第3局、▲土居市太郎八段ー△木村義雄名人 戦(肩書は当時)です。かなり古い将棋ですが、先手の陣形は最近似た形を見た記憶はありませんか? 第2図をご覧ください。
【第2図は△3二玉まで】
平成29年9月1日、第89期棋聖戦1次予選、▲高見泰地五段ー△西尾明六段戦(肩書は当時)です。最近流行の△4三金左(▲6七金左)型矢倉ですね。もちろん、土居名誉名人の時代とは狙いなどは違いますが、昭和15年に指された形が現在に見直されたというのはおどろきですね。
この形は、土居名誉名人が好んだ形でしたので、土居矢倉と言われるようになりました。通常の▲8八玉、▲7八金の形に比べると薄さは気になりますが、バランスのよい形です。また、つかみどころがなく、意外と攻めにくい形をしています。次に、第3図をご覧ください。
【第3図は△8七歩まで】
いま、△8六歩▲同歩△8七歩と玉頭を攻められたところです。第3図から▲8七同玉は、△8六角(次に△7七角成の狙い)が厳しいですし、▲8七同金も、△8五歩▲同歩△8六歩と調子よく攻められます。また、▲7九玉とかわすのは、8七のくさびが大きいですね。もし、第3図の先手玉が7八、7八の金が5八だったらどうでしょう? △8七歩が王手ではなく、手抜きができますね。8八と深く囲うよりも、7八で浅く広く、のほうが受けやすいことが多々あります。
土居矢倉に組むまでの手順
現在流行の形を土居矢倉と呼ぶのかは微妙なところですが、ほかの名称もいまのところありませんので、このコラムでは土居矢倉と呼ぶことにします。それではいつも通り、先手側の駒だけを配置して、土居矢倉に組むまでの手順を見ていきましょう。
囲いに組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲6八銀、▲7七銀、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲7八金、▲6九玉、▲5八金、▲6六歩、▲7九角(第4図)。
【第4図は▲7九角まで】
ここまでは、矢倉の組み方と同じですね。▲3六歩を突いたり、▲4六歩~▲4七銀などとしてから組む場合もありますが、まずはほぼ一直線に組む手順で見ていきましょう。第4図から、▲6七金左、▲7八玉(第5図)。
【第5図は▲7八玉まで】
5八の金ではなく、7八の金を6七に上がり、あいた7八に玉を上がって完成です。矢倉では、▲6七金右、▲6八角、▲7九玉、▲8八玉とあと四手かかりますが、土居矢倉では▲6七金左、▲7八玉の二手で終わるところもメリットのひとつです。次回は組む際の注意点を見ていきましょう。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。