ライター一瀬浩司

上部に厚く、相居飛車でも有力!銀冠の組み方(1)【玉の囲い方 第75回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2019年06月26日
前回までのコラムでは、「菊水矢倉」の組み方の注意点をご紹介しました。その最後で、第1図の局面を出しましたね。
相居飛車における「銀冠」
【第1図は△3一角まで】
ここで、▲8八銀と上がってしまった場合は△8六歩▲同歩△同角と角交換をされて、菊水矢倉に組みにくくなってしまうということでした。菊水矢倉に組むには、第1図では▲5九角と引かなくてはなりません。一見、△8六歩▲同歩△同角で8筋が不安ですが、▲7七桂と角交換を拒否して大丈夫です。以下、△7七同角成▲同角△8九飛成と強攻されると、飛車を成り込まれてしまいますが、▲8七歩(第2図)と打てば竜の行き場がなくなり先手優勢です。次に▲9八角と打てば竜を取ることができます。
【第2図は▲8七歩まで】
では、第1図で▲8八銀と上がってしまった場合はどうなのか? そちらを見ていきましょう。
もし、△3二金などとして△8六歩と突いてこなければ、▲6八角や▲5九角として角交換を防ぐことができます。もちろん、これも一局です。△8六歩には、▲同歩△同角▲同角△同飛に▲8七銀(第3図)と上がります。
【第3図は▲8七銀まで】
△8二飛▲8六歩となると、なにか見たことのある囲いになりませんか? そうです。「銀冠」ですね。飛車先交換はされてしまいますが、上部に厚く、相居飛車でも有力な作戦になります。というわけで、今回からご紹介する囲いは、相居飛車における「銀冠」となります。
囲いの特徴:▲8七銀~▲8六歩まで進めば、「銀冠」に組めましたが、相居飛車の場合は、組もうと思って組めるものではないところが大きな特徴です。例えば、第1図から▲8八銀△3二金▲5九角△4一玉と後手が飛車先交換をしてこなければ、▲8七銀と上がる形にはならないので、銀冠には組めません。△4一玉で△8六歩なら、▲同歩△同角▲同角△同飛▲8七銀と、▲5九角と引いたぶん手損になりますが、銀冠に組むことができます。また、▲7七桂として菊水矢倉にすることもでき、どちらに組むかは先手に選択権があります。
これまでご紹介してきた囲いは、すべて組もうと思えばその形に持っていくことはできましたが、この銀冠の場合は相手の手によっては組むことができないので、その場合は菊水矢倉か普通の矢倉に組むことになります。それでは、先手側の駒のみを配置して銀冠に組むまでの手順を見ていきましょう。
「銀冠」に組むまでの手順
囲いに組むまでの手順:初手から、▲7六歩、▲2六歩、▲6六歩、▲7七角、▲7八金、▲5八金、▲8八銀、▲6九玉、▲4八銀、▲5六歩、▲6七金右(第4図)。
【第4図は▲6七金右まで】
ここまでは菊水矢倉と組む手順と変わりません。菊水矢倉にどうしても組みたいのであれば、△3一角とされる前に▲6八角と引かなくてはなりませんが、銀冠に組むつもりなら飛車先交換と角交換は大歓迎ですので、比較的神経を使わずに組んでいけます。では、ここから完成までの手順を見ていきましょう。▲5七銀、▲7九玉、(△8六歩▲同歩△同角▲同角△同飛)▲8七銀、▲8六歩、▲8八玉、▲9六歩(第5図)。
【第5図は▲9六歩まで】
今回は、△8六歩と後手が指してこないと8八の銀を押し上げられず、銀冠に組めませんので、盤上の駒は先手のみですが、後手の手も入りました。次回のコラムは、銀冠に組む際の注意点について見ていきます。
玉の囲い方


監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。