ライター将棋情報局(マイナビ出版)
「矢倉は本当に終わったの?」藤井聡太七段や増田康宏六段らが矢倉について語る【将棋世界2019年4月号のご紹介】
ライター: 将棋情報局(マイナビ出版) 更新: 2019年03月05日
将棋世界 2019年4月号が3月1日に発売となります。本ページでは、高見泰地叡王、郷田真隆九段、屋敷伸之九段、木村一基九段、糸谷哲郎八段、藤井聡太七段、増田康宏六段の超豪華パネラー陣が、出されたテーマについて見解を語る人気コーナー「イメージと読みの将棋観・Ⅱ」の一部を紹介いたします。4月号で用意されたテーマは4つ。うち、増田六段による有名な衝撃発言について触れたテーマ「矢倉は本当に終わったの?」に各棋士はどう答えたのか。その一部を御覧ください。
「イメージと読みの将棋観・Ⅱ」
【テーマ1・解説】
後手急戦の流行とともに、がっちり組み合う相矢倉は激減した。ただし、5手目▲7七銀はこのところ一時よりむしろ増えている。その理由は?
【第1図は▲7七銀まで】
「矢倉は終わった」という増田康宏六段の衝撃的発言が反響を呼んだのは2017年5月。しかし、その増田六段もいまだに5手目▲7七銀を指しています。あれ? 矢倉は終わっていないのでは?
高見泰地叡王
そもそも、矢倉は終わっていません。私も5手目▲7七銀はいまもよく指しています。ただ、増田さんが指した▲7七銀は急戦への変化も見越した手で、先に▲7七銀と上がってはいるものの、将来また▲6八銀と引く手を含みにしている。
有名なのは、去年の竜王戦決勝トーナメントの増田さんと藤井聡太七段の対局で、A図で増田さんは▲6八銀と引いた。この手を指すために5手目▲7七銀を指したといってもいい。いわば、カモフラージュ作戦ですね。(後略)
【A図は△6五歩まで】
郷田真隆九段
ははは。いま、後手はテーマ図の▲7七銀に対して急戦矢倉に出ることが多いけど、定跡がまだ出そろってないんですよ。△7三銀型と△7三桂型の両方あって、それぞれがまだ整備されてない。なので、ある程度それぞれが突き詰められたら、またがっぷり四つの矢倉が出てくるんじゃないかと思っています。(後略)
屋敷伸之九段
結構いまでも、指す人は指しています。矢倉は終わっていません。ただ、後手の△7三銀と△7三桂の急戦策にどう対応するか、それが課題になる。がっちり組み合う形はほとんど見ないので、どちらかが急戦を狙い、相手はそれに対応することになりそうです。(後略)
木村一基九段
発想自体は消えていないが、後手急戦の流行によって、がっちり組み合う矢倉は絶滅の危機にある。ここ数年の流れをいえば、角換わりが大流行し、それに飽きた一部の棋士が相掛かりに手を伸ばし、結局、角換わりも相掛かりも定跡がずいぶん変わった。
やがて、そこも飽きて矢倉を見直す人が出てくれば、流れが変わる可能性もある。しかし、それはまだ当分、先のことでしょう。いまの5手目▲7七銀もすぐに▲6八銀と引いたりする。かつての▲7七銀とは別の将棋です。
糸谷哲郎八段
それは増田君に聞いてくださいと言うしかない(笑)。まあ、やる人はやるんですよねえ。ただ、局数が減っていることは確か。角換わりとか雁木とか、他にやる将棋がありますから。とはいえ、矢倉は長年、指し続けられてきた戦法だから、終わっているということはない。やっぱり、人間は人間が指し続けてきた形のほうが強いんですよ。だから今後もある程度、指し続けられる。(後略)
藤井聡太七段
ははは。終わってないです。5手目▲7七銀は公式戦での採用数は減っていますが、先手の得は残っている作戦だと思います。後手は△3三銀を上がらず急戦にすることが多いですが、それはそれで先手も五分以上には指せる。
なので、これから5手目▲7七銀からの矢倉はむしろ増えていくのではないかと思っています。
増田康宏六段
まあでも、これは従来の矢倉とは目指しているところが違うんです。先手は金銀3枚が固まった矢倉にするのではなく、米長流のような急戦矢倉を目指している。あるいは、高見叡王が得意とする▲6七金左の矢倉を目指している。それは結構ありかなと思う。(後略)
おわりに
「矢倉は本当に終わったの?」に対する各棋士の回答全文と、他テーマ「武富女流初段の研究手順(テーマ2図)」「女性中学生名人の誕生」「藤井聡太、トン死で勝つ(テーマ4図)」についての回答は、将棋世界 2019年4月号でお読みいただけます。
【テーマ2図は△3五銀まで】
「武富女流初段の研究手順」
【テーマ4図は△7五飛まで】
「藤井聡太、トン死で勝つ」