竜王戦第3局の逆転劇。広瀬八段が羽生竜王を破った終盤での一瞬の攻めとは?【注目対局プレイバック 2018年11月上旬】

竜王戦第3局の逆転劇。広瀬八段が羽生竜王を破った終盤での一瞬の攻めとは?【注目対局プレイバック 2018年11月上旬】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年11月28日

竜王戦も佳境に入ってきました。挑戦者が2勝を返し、長いシリーズになりそうです。王将リーグもプレーオフの組み合わせが決まり、いよいよ大詰めとなってきました。

【第1図 第31期竜王戦七番勝負第3局】

第1図は第31期竜王戦七番勝負第3局(▲羽生善治竜王△広瀬章人八段)。先手ペースで進んでいましたが、後手にチャンスが巡ってきた終盤戦。後手玉はすぐにでも寄ってしまいそうな状況で、先手玉はまだ手つかずで敗勢に見えますが......。

第1図から△5八角▲4五竜△6九銀が「要の金を狙え」で、わずか2手で先手玉に詰めろが掛かりました。以下▲5三銀△6三玉▲6五竜で後手玉が詰んだように見えますが、△6四金の移動合が好手でギリギリ耐えています。広瀬八段が一瞬の切れ味で、シリーズ初勝利をあげました。

【第2図 第26期大山名人杯倉敷藤花戦第1局】

第2図は第26期大山名人杯倉敷藤花戦第1局(▲里見香奈倉敷藤花△谷口由紀女流二段)。振り飛車党同士の対戦ですが、戦型は意表の相居飛車となりました。後手の作戦がぴたりとハマり勝勢を築きましたが、速い寄せを逃して少しずつ混戦になってきました。

第2図で▲5六玉が「中段玉寄せにくし」の粘りのテクニック。以下△6六銀▲4五竜で辛抱します。苦しいながらも決め手を与えない粘りが最後は逆転を呼び、里見倉敷藤花が勝利を収めています。

【第3図 第8期リコー杯女流王座戦第2局】

第3図は第8期リコー杯女流王座戦第2局(▲里見香奈女流王座△清水市代女流六段)。中飛車から気持ち良く中央突破に成功し、先手が大きなリードを奪いました。図の局面はすでに先手勝勢です。

第3図では▲6六桂△5二香▲5五歩が「寄せは俗手で」の通り手堅い勝ち方です。馬の利きを止め、駒得しながらの寄せは間違いありません。快勝した里見女流王座は第3局も制し、3連勝で防衛を達成しました。

【第4図 第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦】

王将リーグの首位攻防戦から強烈な攻めを見ていきます。第4図は第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦(▲佐藤天彦名人△広瀬章人八段)。先手は堅陣で攻めていますが、飛車が詰んでいます。攻め駒が少なく大変なようですが、ここは踏み込むチャンスです。

第4図で▲1三同飛成が強烈な攻め。△1三同銀に▲3三香△2四歩▲4五角△同歩▲4三金と要の金を狙って一気に攻めていきます。こうなると6二の金が離れているのが痛く、玉飛接近の悪形にもなっています。このまま押し切って佐藤名人が1敗をキープ。挑戦争いをリードしました。しかし最終一斉対局で佐藤名人は敗れてしまい、プレーオフ進出とはなりませんでした。

【第5図 第4期叡王戦】

第5図は第4期叡王戦(▲佐藤康光九段△松尾歩八段)。角交換振り飛車から両者バランスの良い構えで長い中盤戦になっています。歩が向かい合っており打開が難しそうに見えますが、覚えておきたい手筋があります。

第5図で▲6七桂が「桂は控えて打て」の好打。直接的な狙いは▲5五歩△同歩▲同桂で、5筋で歩をぶつけることができるようになっています。実戦は△5三金と当たりを避けましたが、3四の桂頭が気になります。後に5筋で一歩持って▲3五歩の攻めが実現し、先手が勝利を収めています。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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