タイトル戦でも採用された「串カツ囲い」の注意点と発展形とは【玉の囲い方 第52回】

タイトル戦でも採用された「串カツ囲い」の注意点と発展形とは【玉の囲い方 第52回】

ライター: 一瀬浩司  更新: 2018年10月25日

前回のコラムでは、「串カツ囲い」をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、串カツ囲いに組むまでの手順の復習です。初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲6八玉、▲7八玉、▲5六歩、▲2五歩、▲7七角、▲6八角、▲5七銀、▲6六銀、▲8八玉、▲9八玉、▲8八銀、▲7九金、▲5九金、▲6九金右、▲7八金右(第1図)。

【第1図は▲7八金右まで】

それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。

組む際の注意点

前回、玉を9八へ移動させるよりも、先に角と銀の移動を先にすると書きました。それはなぜなのかをまず見ていきましょう。第2図をご覧ください。

【第2図は▲6八角まで】

前回ご紹介した将棋ですが、平成13年10月5日、第49期王座戦五番勝負第3局、▲羽生善治王座ー△久保利明七段戦(肩書は当時)です。前回の図は、串カツ囲いが完成した局面でしたが、今回は角を6八に引いた局面です。

ここで、久保王将は△2二飛と回って2筋を受けました。もし仮に、第2図で先手の4八の銀が6六にいたとしましょう。すると、後手は2筋を受けずに△6二玉と上がることができます。それはなぜでしょう? 第2図から△2二飛に代えて△6二玉なら▲2四歩と仕掛ける手が成立します。以下△2四同歩▲同角に△2二飛がよくある受け方ですが、▲3三角成△2八飛成▲4三馬(第3図)と二枚換えになって先手が指しやすくなります。

【第3図は▲4三馬まで】

では銀が6六なら? そうですね、同様の手順に進むと△2八飛成と飛車を取られた手が王手になって▲5八金右などと受けるしかなく、△3三桂と馬を取られて飛車損になります。これは先手必敗形ですね。△2二飛と受けさせるために、羽生竜王は先に▲6八角と引いたのですね。

では、第2図でもし後手が△4五歩としてきたら? それも気になる手ですよね? 対して、▲8八銀と受けるのでは、堅い囲いに組みにくくなってしまいます。△4五歩には、強く▲2四歩と突く手が成立します。以下、①△2四同歩▲同角△9九角成なら▲4二角成△同金▲2一飛成で先手よし、②△9九角成なら▲8八銀△9八馬▲2三歩成と2筋を突破してこれも先手よしとなります。次に第4図をご覧ください。

【第4図は△3三角まで】

第2図と比べると、後手の形が△9四歩に代えて△5二金左となっています。この形ですと、▲6八角と引いても△2二飛とは受けてくれず、△6二玉とされてしまいます。なぜでしょうか? 以下▲2四歩△同歩▲同角△2二飛のとき▲3三角成としても、△2八飛成で4三の銀には5二にいる金のヒモがついています。こうなると4三の銀が取れず、逆に先手が不利になってしまいます。

よって第4図の形では、▲5七銀△9四歩▲8八玉△7四歩▲9八玉のような手順で、先に玉を移動させてしまうほうがよいでしょう。では、次に囲いの発展形を見ていきましょう。

囲いの発展形

第1図から、▲7七銀引、▲8六歩、▲8七銀、▲8八金上(第5図)。

【第5図は▲8八金上まで】

以前、居飛車穴熊の発展形でご紹介しましたビッグ4と似たような形ですね。玉頭も厚くなり、より堅固な形になっています。ただし、やはり穴熊とは違い、△9六歩▲同歩△9七歩と攻められたときすぐに王手が掛かってしまいますので、ビッグ4と比べると囲いの強度としてはかなり劣ります。第1図の形もですが、端からの玉頭攻めも中盤以降には注意しなくてはならない点のひとつともいえます。

玉の囲い方

一瀬浩司

ライター一瀬浩司

元奨励会三段の将棋ライター。ライター業のほか、毎月1回の加瀬教室や個人指導など、指導将棋も行なっている。主なアマチュア戦の棋歴としては、第34期朝日アマチュア将棋名人戦全国大会優勝、第63回都名人戦優勝などがある。

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杉本和陽

監修杉本和陽四段

棋士・四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。
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