ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年03月18日
前回に続き、仕掛けの格言を見ていきます。
同じような意味で「離れ駒に手あり」と言うこともあります。相手の陣形が未完成の状態や、浮いている駒を目標にできるタイミングでの仕掛けはより効果的になります。
【第1図は△7五銀】
第1図は角換わりの早繰り銀対腰掛け銀の戦いです。今、後手が△7五歩▲同歩△同銀と攻めてきたところ。ここで▲7六歩と打っては△8六歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛で後手成功です。
ここは▲2四歩が手筋の反撃。△2四同銀には▲5五角の両取りがあるので後手は△同歩と取るよりありませんが、そこで▲2五歩の継ぎ歩が狙いの攻め。△2五同歩には▲同飛で7五の銀を狙った十字飛車が決まります。これが7五銀の浮き駒を狙った反撃策になります。
▲2五歩には△8六歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛▲8七歩△8二飛▲2四歩△2二歩が一例で難しい勝負です。
【第2図は△8三銀まで】
第2図は角交換振り飛車対居飛車穴熊の戦い。後手は△8三銀と上がって銀冠を目指しましたが、これは危険でした。
第2図では▲2四歩△同歩と突き捨ててから▲3一角が手筋の攻め。△2三飛には▲4二角成があります。また、飛車を6二など遠くに逃げるのも▲2四飛で飛車をさばいて先手優勢。▲3一角には△3二飛と寄って角が捕まったようですが、構わず▲2四飛と走る手が成立します。以下△3一飛には▲2二飛成が王手飛車。これも駒が離れている瞬間に動いたことで、▲2二飛成が王手になります。
振り飛車で銀冠に組み替える瞬間は注意しましょう。
【第3図は△6三銀まで】
第3図は相掛かりの定跡の一つです。狙うべき離れ駒はどこでしょうか。
ここから▲3五歩△同歩▲4五桂が勢いのある仕掛け。後手は△4二玉と5三の地点を受けながら3三も補強しますが、▲3三歩△同桂▲同桂成△同金に▲3四桂と一気に攻め込みます。以下△3四同金▲2二角成△同銀▲6六角で綺麗に両取りが掛かりました。途中▲3三同桂成に△同角は▲3四桂△5二玉▲3三角成△同金▲6六角でやはり両取りです。
これは8四飛の浮き駒を狙った仕掛けでした。
【第4図は△2三銀まで】
最後に髙﨑一生六段の実戦から見ていきます。第4図は先手の石田流に後手は左美濃の持久戦で、△2三銀と上がって銀冠への組み替えを目指した局面です。次に△3二金と上がられると居飛車の陣形が引き締まりますが、この瞬間は中途半端。「浮き駒に手あり」です。
実戦は▲6五歩△8四飛▲7四歩△同歩▲2五歩と歩を次々とぶつけて戦いを起こしました。前回見た『開戦は歩の突き捨てから』ですね。▲2五歩に△同歩は▲1七桂から角を目標に攻め込めます。後手から角交換する形になると▲6六角の王手飛車が残るのも痛いところ。実戦は▲2五歩に△3二金と後手は辛抱しましたが、▲2四歩△同銀▲4五銀(第5図)と出て後手はまとめるのが難しくなりました。この後も先手が短手数で勝ち切っています。
【第5図は▲4五銀まで】
今回紹介した形はいずれも覚えておきたい仕掛けの筋です。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段