ライター一瀬浩司
注意するべき相手の仕掛けは?相振り飛車での穴熊囲いの組み方
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年03月10日
前回のコラムでは、相振り飛車での「穴熊囲い」についての組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形は、振り飛車対居飛車の場合とはどう違うのか? そちらを見ていきましょう。
それでは、相振り飛車においての、穴熊に組むまでの手順の復習です。初手から、▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲7七角、▲8八飛、▲4八玉、▲3八玉、▲5八金左、▲2八玉、▲3八金、▲1八香、▲1九玉、▲2八銀、▲4八金左(第1図)。
【第1図は▲4八金左まで】
それでは、後手の駒を配置して、組む際の注意点を解説していきます。
組む際の注意点
美濃囲いのときもでしたが、相手の飛車がこちらの陣をにらんでいますので、仕掛けには気をつけなくてはなりません。例えば第2図です。
【第2図は△5二金左まで】
ここで▲2八玉と寄ると、△3六歩と突かれる手が気になります。▲3六同歩に△同飛なら、▲3七歩△3四飛▲3八金でなんということもないのですが、△5五角(第3図)と王手をされる手が嫌味です。
【第3図は△5五角まで】
第3図で▲1八玉は、△3六飛と歩を取り返されておいて先手の形が悪いですし、▲3七桂は△3六飛▲3八金△3二飛で、次の△3六歩が受けにくく、これでは早々に先手不利となってしまいます。一応、第3図では▲4六歩という受け方があります。△3六飛は▲4七金、△4六同角にはそこで▲3七桂と跳ねて、今度△3六飛には▲4七金が飛車角両取りとなる仕組みです。
ですが、△4六同角▲3七桂となってしまうと、もう穴熊には組むことはできませんし、△1三角と引いた後に桂頭を目標に攻撃形を作られてしまう心配もあります。
では、第2図ではどうすればよいのでしょうか? まずひとつは、▲4八金上や▲1六歩として、穴熊以外に囲うことです。ただしこれでは妥協した感じがして少し気分が悪いですよね?
もうひとつは玉方面はそのままに、▲8六歩と攻撃側に手をかけていきます。一例として△3六歩▲同歩△同飛▲3七歩△3四飛▲8五歩△4四歩となったらそこで▲2八玉(第4図)と寄れば、今度は後手の角筋が止まっているため、△3六歩と合わせられても、▲同歩に△5五角がなく、▲3八金~▲1八香と穴熊に組んでいくことができます。
【第4図は▲2八玉まで】
このように、相手からの仕掛けには、常に警戒していないとすぐに指しにくくなったりしますので、漠然と組んでいくのではなく、細心の注意が必要です。それでは囲いの発展形はどうなるかを見ていきましょう。
囲いの発展形
実は、相振り飛車での穴熊では、囲いを発展させていくことはほとんどありません。それはなぜか? 例えば第5図です。
【第5図は△3五歩まで】
相向かい飛車になった場合の一例ですが、例えば、ここから▲4六歩と突いて、▲4七金直~▲3六歩△同歩▲同金と盛り上がっていく順を狙ったとしましょう。ですが、▲4六歩には△3四銀と上がられると、▲4七金直として次に▲3六歩△同歩▲同金としても△3五歩で追い返されてしまいますし、歩は交換してものの、将来3六に駒を打ち込まれる拠点を作らせてしまうことになります。
また、いつでも△4五歩で歩をぶつけて攻められる心配もしなければならず、第5図の形が先手にとっていちばんよい形となっています。左銀を▲5六銀~▲4六歩~▲4七銀と引きつけても、今度は攻撃力がなくなってしまいますし、角頭の薄さも気になってきます。ですので、相振り飛車の穴熊では、囲いを発展させていく、ということはめったにありません。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。