ライター一瀬浩司

右四間飛車戦法で攻める。玉が3一の場合の攻め方【矢倉の崩し方 vol.14】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2017年07月23日
前回までは、後手玉が2二での攻め方をご紹介いたしました。今回は、玉が3一の場合の攻め方をご紹介していきます。それでは、第1図をご覧ください。
【第1図】
後手玉が2二の場合は、▲2五桂と▲4五歩のどちらも有力でした。まずは、第1図から▲2五桂と跳ねてみましょう。△2四銀には、▲4五歩と突いて△同歩には▲1一角成、放っておくのも▲4四歩△5三金▲4三歩成△同金寄▲1一角成と香得してよしです。
では、今回も▲2五桂と跳ねていけるじゃん。そう思われた方は▲2五桂と跳ねた形をよく見てください。銀の逃げ場所は2四だけですか?そうです。今回は△2二銀(第2図)と逃げることができます。
【第2図は△2二銀まで】
2二銀の形は「壁銀」と言って、第2図の形では、せっかく玉が入城できるところを銀で塞いでしまう悪い形の見本なのですが、この場合は▲4五歩に△同歩と取れるようになっており、1一の香を角筋から守る形になっています。もちろん、ずっとこのままの形では、終盤戦に入ったときに、玉の逃げ道がなくすぐ受けなしや詰まされてしまうことがあります。
極端な例ですが、第2図で先手の持ち駒に飛車があったとします。その飛車を▲6一飛(第3図)と打てば、後手玉は金銀3枚に角付きで守られているようですが、なんとこれで詰んでいます。
【第3図は▲6一飛まで】
持ち駒がないので、飛車の利きを駒を打って防ぐことはできません。玉を逃げるのにも、2二の銀がジャマをして動くことができません。二段目に行くにも、角や金が逆にジャマ駒となってどこにも行くことができませんね。唯一王手を防ぐ手段は△5一角しかありませんが、▲同飛成とすれば4二の角はいなくなったものの、竜の利きがあって結局逃げ出すことができず、後手玉は詰みとなります。
よって、第2図は非常に悪い形なのですが、あいにく先手の持ち駒にはまだなにもありません。ここまで、後手に都合の悪い話ばかりをしてきましたが、今度はよい話をしていきましょう。
第2図から、先手がなにもしなければ(例えば▲7九玉)△2四歩(第4図)と桂を殺すことができます。
【第4図は△2四歩まで】
「桂馬の高跳び歩の餌食」という格言がありますが、まさにその通りの局面となってしまい、先手失敗の図となります。
そこで、第2図から▲4五歩△同歩▲同飛と、攻めて行くことになります。△4四歩なら、▲同角△同金▲同飛と強襲をかけ、▲4三歩△5三角▲4二金などの攻めが厳しく残りますが、▲4五同飛のときに、△6四角(第5図)と出られるとどうもうまくいかないようです。
【第5図は△6四角まで】
▲4四歩は、△4二金引▲5五歩に△2四歩と桂殺されてしまいますし、▲2二角成△同玉▲4四歩には、△5三金▲4三銀△4二歩▲3二銀成△同玉で、後手陣はだいぶ薄くなりましたが、角金交換の駒損で、続く攻めがなくこれも先手失敗です。
△2四歩があるので、桂を取りきられる前になんとかしなければなりませんが、持ち駒がなにもない状態では、攻めきることはできませんでした。
では、次回のコラムでは、第1図から▲4五歩と仕掛けていく指し方をご紹介していきます。
矢倉の崩し方


監修阿部光瑠六段
1994年生まれ、青森県弘前市出身。2011年4月に四段。2013年に第2回電王戦でコンピュータソフト・習甦(しゅうそ)と対局し、快勝。 2014年の第45期新人王戦で優勝。居飛車、振り飛車ともに指すオールラウンドプレイヤー。