将棋コラム

▲9七桂が狙いの一手。「向かい飛車」を覚えよう【はじめての戦法入門-第13回】

▲9七桂が狙いの一手。「向かい飛車」を覚えよう【はじめての戦法入門-第13回】

更新: 2017年07月14日

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はじめての戦法入門

皆さん、こんにちは。高野秀行です。 「四間飛車」「ゴキゲン中飛車」「三間飛車『石田流』」に「コーヤン流三間飛車」とご紹介してきました。振り飛車編も戦法はあと一つとなります。今回から「向かい飛車」をご覧頂きたいと思います。

居飛車に対抗すべく、同じ筋に飛車を振る「向かい飛車」。自らドンドン動いて行けるのが、魅力の一つです。本来は後手でやる戦法ですが、本講座では先手で「向かい飛車」を行います。実はこれには秘めた狙いがあるのです。早速ご覧頂きましょう。

【第1図は△5三銀まで】

飛車を8筋に振り、後手の飛車と直接対峙する「向かい飛車」。3手目▲9六歩は決して無駄な一手になりません。

初手から
▲7六歩△3四歩▲9六歩△8四歩
▲6六歩△8五歩▲7七角△6二銀
▲8八飛△4二玉▲6八銀△3二玉
▲6七銀△5四歩▲4八玉△5二金右
▲3八玉△5三銀(第1図)

3手目▲9六歩は互いに振り飛車党だった場合など、様子を見る一手。これから「向かい飛車」にすると、この一手がもったいないように感じますが、実は油断ならない端歩なのです。

一方居飛車ですが、駒組みで注意が必要です。△4二玉で△5四歩と突いてから△4二玉と上がるとすかさず▲8六歩があります。△同歩▲同角(参考1図)がいきなりの「王手」。△同飛は▲同飛で、次の飛車成りが受からず、また△3二玉は▲3一角成~▲8二飛成と飛車を素抜かれ、いきなり必敗となります。

【参考1図は▲8六同角まで】

いきなりの「王手」で居飛車は受けがありません。△5四歩を突かず駒を組むのが大事なポイントとなります。

「四間飛車」や「三間飛車」では△5四歩~△4二玉でも問題ありませんが、「向かい飛車」はこのような反撃を秘めているのです。

駒が組み上がりつつある第1図から、「向かい飛車」は攻撃態勢を整えます。

【第2図は△2二玉まで】

▲7八金と上がり▲8六歩と仕掛けるのが「向かい飛車」狙いの構想。飛車の打ち込み場所がなく、飛車交換は大歓迎。

第1図からの指し手
▲7八金△7四歩▲4八銀△3三角
▲8六歩△同歩▲同飛△8五歩
▲8八飛△2二玉(第2図)

▲7八金と飛車の横に金が上がるのが、「向かい飛車」ならではの構想。本来なら「玉の囲いは金銀三枚」の原則があり、▲5八金左と囲うこところですが、▲7八金と上がり、一回▲4八銀と締まってから▲8六歩と突くのです。△同歩▲同飛が力強いさばき。△同飛▲同角と進めば、先手陣に飛車の打ち込む場所がなく、一方後手陣は8二や7一などいろいろな場所に飛車を打ち込むスキがあり、早くも「向かい飛車」優勢となります。

この仕掛けができるのも▲7八金の効果で、もし▲5八金左と上がっていると△8七飛(参考2図)とスキを突かれてしまいます。セオリーに反する手で隙のない陣形が出来上がる。将棋の難しさ、面白さですね。

【参考2図は△8七飛まで】

金が5八だと、8筋にスキができてしまいます。以下▲8二飛△8九飛成▲8一飛成△9四桂で先手不利。

△8五歩で飛車交換を拒否し、一旦局面を落ち着かせて△2二玉と後手は玉を囲って来ました。持久戦になると、▲7八金と守りの金を攻めに使っているため、陣形の差が出て来てしまいます。動きを止めてはいけません。ここで狙いの一着が出ます。

【第3図は▲9五角まで】

妙手▲9七桂でやはり飛車交換を挑み、△7三桂と受けた桂を目標に▲7五歩~▲9五角で攻めが決まりました。

第2図からの指し手
▲9七桂△7三桂▲7五歩△8四飛
▲9五角(第3図)

▲9七桂が狙いの一着。次に▲8五飛となれば、やはりスキの無い陣形が生きて、先手優勢。△7三桂と受けても▲7五歩~▲9五角で攻めが決まった格好です。

通常は▲7七桂~▲6五桂と跳ねるのが、筋の良い桂の使い方ですが、3手目▲9六歩を生かした▲9七桂が妙手で、「向かい飛車」大成功となりました。

では今回のおさらいです。

  • 3手目▲9六歩と様子を見てから「向かい飛車」に。これがのちの妙手を生む。
  • ▲7八金と守りの金を飛車側に上がる。守りの観点からはセオリー無視だが、スキのない陣形ができる。
  • この陣形を生かして▲8六歩から仕掛ける。飛車交換は大歓迎。
  • ▲9七桂が妙手。飛車交換を迫りつつ、▲7五歩~▲9五角と攻めが決まり、「向かい飛車」大成功!

▲7八金から▲8六歩で飛車交換を挑む。シンプルですが、迫力ある戦法であることがお分かり頂けたかと思います。

しかし、いくらなんでもうまくいきすぎ?そうですね、第2図の最終手△2二玉に変えて、△9四歩と突けば、▲9七桂△7三桂▲7五歩△8四飛に▲9五角がなく、受かっています。

次回は妙手▲9七桂に備え△9四歩と突いた局面をご覧頂きたいと思います。

はじめての戦法入門

高野秀行六段

ライター高野秀行六段

1972年6月横浜市生まれ。1984年に6級で中原誠十六世名人に入門。1998年4月に四段。棋風は居飛車本格派。趣味はゴルフ。将棋教室で多くの子供たちに将棋を教えている。

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