ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年11月17日
フルセットの激闘となった王座戦五番勝負は挑戦者の伊藤匠叡王が3勝2敗で制し、二冠目の獲得となりました。タイトル戦初登場となった中七海女流三段は、惜しくも1勝2敗で敗れて初タイトルとはなりませんでした。
【第1図は△8八とまで】
第1図は第73期王座戦五番勝負第5局(▲伊藤匠叡王△藤井聡太王座)。2勝2敗で迎えた最終第5局です。大駒を取り合って終盤戦に突入しました。ここで8八のと金を放置して▲8四桂が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。王手で金を取られる形ですが、後手玉へ迫ることを優先したのが好判断でした。以下は△7三銀▲8一飛△7一歩▲7四歩と、と金を放置したまま手が進んでいきます。この踏み込みが功を奏し、リードを奪った先手が押し切っています。ライバル対決を制し、伊藤叡王が二冠となりました。

写真:文
【第2図は▲8一飛成まで】
第2図は第38期竜王戦七番勝負第2局(▲佐々木勇気八段△藤井聡太竜王)。角換わりから早い戦いになりましたが、後手が抜け出しています。△4六角が自玉の詰めろを消しながら、「要の金を狙え」の決め手。以下▲6一竜△6二銀▲7二銀△5四玉▲6二竜△4五玉まで後手の勝ち。玉を早逃げで安全にしながら、△6八角成からの詰めろを掛けてはっきりしました。

写真:文
【第3図は▲1三角成まで】
第3図はヒューリック杯第5期白玲戦七番勝負第6局(▲福間香奈女流六冠△西山朋佳白玲)。急所に駒が入り、後はどう寄せるか。△1七歩成▲6五桂△5八飛成が「玉は包むように寄せよ」の確実な勝ち方。1七のと金を取るのは△3七桂成があります。挟撃となって先手は粘るのが難しく、以下は数手で後手の勝ちとなりました。西山白玲はライバル対決を制し、4勝2敗で4期目の白玲獲得となりました。

写真:潤
【第4図は▲4二歩成まで】
第4図は霧島酒造杯第47期女流王将戦三番勝負第3局(▲中七海女流三段△西山朋佳女流王将)。次に▲5二とが回ると大変ですが手番は後手。△2一歩▲1二竜△2二金が「金底の歩岩よりも堅し」を実現する受け。これで先手から速い攻めは難しく、▲1一竜に△7五歩で後手勝勢がはっきりしました。第1局を敗れた西山女流王将でしたが、第2局、第3局と底力を発揮し、防衛を果たしました。
【第5図は△5五歩まで】
第5図は第56期新人王戦決勝三番勝負第3局(▲服部慎一郎七段△斎藤明日斗六段)。攻め合いの中盤戦で、▲2三銀不成が「銀は不成に好手あり」の手筋。△5六歩に▲3四銀成と3二の金を取る以外の選択肢があるのが▲2三銀成との違いです。この後は双方にチャンスのある将棋でしたが、最後は先手が競り勝ちました。服部七段は自身最後となる新人王戦を制し、通算3回目の優勝です。

写真:銀杏

ライター渡部壮大

監修高崎一生七段