ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年11月18日
大山名人杯第33期倉敷藤花戦の挑戦者決定戦は加藤桃子女流四段と伊藤沙恵女流四段のライバル対決となった。
【第1図は△4二角まで】
先手はチャンスと見て居玉のまま積極的に動く。後手は自陣に角を投入して、何とか攻めを止めようとする。ここで▲4五歩が急所の攻め。△同歩に▲4四歩△同銀▲1六角が厳しい。次に▲3三歩成の開き王手があるが、後手は4三に埋める駒を持っていない。仕方なく△5一玉と下がったが非常に危険な形で、▲3六銀と繰り出して、飛車角銀桂が存分に働く形だ。以下は△5三銀上に一度▲6八玉と居玉を解消してから、先手が攻め続けて押し切っている。伊藤は倉敷藤花戦で2年連続4回目の三番勝負登場だ。

写真:睡蓮
第1局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。先手の福間が中飛車から居飛車に戻しての対抗形となった。
【第2図は△3九飛成まで】
後手が猛攻を続けて先手が面倒を見る展開が続いていたが、▲9四桂と反撃に出た。△同香に▲9三銀がスピードアップの手筋で、△同玉▲9四歩△8二玉▲9三歩成△7三玉▲8二銀△6二玉▲5四桂△同金▲同馬で後手玉を一気に受けなしへ追い込んだ。後手に駒を渡したものの、先手陣は中央が手厚く詰まない。福間が開幕戦を制した。

写真:銀杏
第2局は岡山県倉敷市「倉敷芸文館」にて。福間の中飛車に、伊藤は居飛車からバランス型の中住まいに構えた。
【第3図は△5一飛まで】
後手玉を追い込んでおり、打ち歩詰めの状態が続いている。桂か歩以外の駒が持駒に加われば詰むが、現状は駒を拾える場所はない。実戦は▲3五歩と受けに回った。後手が暴れて駒が入れば受けなしに追い込める。以下△7六馬▲4八玉△4七歩▲同銀△4三角に▲2五金△3七歩▲6四桂と押さえて必至を掛けた。先手玉にはかなり王手の続く格好だが、結果的には詰まず伊藤が逃げ切った。これで1勝1敗となり決着は第3局へ。

写真:翔
第3局は第2局の翌日、同じく「倉敷芸文館」にて。福間が先手で相振り飛車となった。
【第4図は△2四角まで】
次に△3六歩の決戦を見せたところだが、強く▲7六金で攻め合いを目指したのが好判断。▲8九飛から▲8四歩が回れば後手玉に迫ることができる。実戦は△3六歩▲2四角△同飛▲5四歩△4六歩に狙いの▲8九飛を決行。▲4二角のキズもあり、先手の攻めが続く形になった。以下は一方的に攻めて、福間の快勝に終わっている。

写真:翔
福間はこれで11連覇、通算16期目の獲得で、女流棋戦における同一タイトル獲得記録をさらに更新した。

ライター渡部壮大