ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年06月09日
名人戦は第4局、第5局と連続で千日手になる熱戦に。第5局では苦戦の将棋を藤井聡太名人が逆転して防衛を決めました。王位戦では永瀬拓矢九段が挑戦権を獲得し、まだまだ戦いは続きます。
【第1図は△6六金まで】
第1図は第83期名人戦七番勝負第5局(▲藤井聡太名人△永瀬拓矢九段)。第4局に続き千日手指し直しになりました。先手がかなり苦しい将棋でしたが、藤井名人が勝負術を発揮していつの間にか逆転。ここで▲3七桂が「桂は控えて打て」の厳しい一着。次の▲2五桂が厳しく、後手はしのぐのが難しい形になってきました。以下も押し切って藤井名人が4勝1敗で3連覇を果たしました。
写真:八雲
【第2図は△4七角成まで】
第2図は第10期叡王戦五番勝負第4局(▲斎藤慎太郎八段△伊藤匠叡王)。難しい戦いが続いていましたが、先手の攻めが急所を突いて流れが来ています。▲4一銀が「要の金を狙え」の寄せ。△4六馬なら▲4三角成△同金▲3二銀打で寄せ切れます。実戦は△2五桂と上部への逃げ道を作りましたが、▲3二銀成とはがせたのは大きな手。以下も熱戦が続きましたが、先手が押し切っています。五番勝負は2勝2敗となり、決着は最終第5局へ持ち越されました。
写真:文
【第3図は▲5六歩まで】
第3図は第18期マイナビ女子オープン五番勝負第3局(▲福間香奈女流五冠△西山朋佳女王)。4五の桂や6五の歩など拠点はありますが、9筋に手が付いているので緩い手は指していられません。△8四角が「遠見の角に好手あり」でした。4八の金取りかつ、6六~5七をにらむ厳しい自陣角です。▲7五歩△同角▲4九歩と耐えましたが、△6六歩▲7六金△5五角▲同歩△5六歩で、後手の攻めは切れない格好です。この将棋は西山女王が押し切りましたが続く第4局は挑戦者が勝ち、女流名人戦に続くフルセットになっています。
写真:紋蛇
【第4図は▲9七同桂まで】
第4図は第36期女流王位戦五番勝負第3局(▲伊藤沙恵女流四段△福間香奈女流王位)。穴熊の香をはがしましたが、後手は歩切れなのでこれ以上の攻めはありません。△3二飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」の手筋。飛車で3三の地点を受けて、△4六角を狙いとして見せています。実戦は▲9四桂△8三玉▲4七金△4五歩▲同銀△5五銀で局面を動かし、後手ペースの戦いです。
写真:潤
【第5図は△3三玉まで】
第5図は伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦挑戦者決定戦(▲永瀬拓矢九段△佐々木勇気八段)。角換わり腰掛け銀の攻め合いから、先手が抜け出しました。あとはどう勝つかですが、▲4八金が「金は引く手に好手あり」です。△5八角成や△3八銀の筋を消し、これで先手陣には憂いがなくなりました。以下は確実に先手が勝ち切り、永瀬九段は王位戦でも挑戦者になりました。
写真:文
【第6図は▲5二とまで】
第6図は第7期清麗戦挑戦者決定戦(▲加藤桃子女流四段△渡部愛女流四段)。駒得しながらの攻めで、後手が勝勢になっています。ただ、現状は詰めろ。△2二玉が「玉の早逃げ八手の得」の自然な勝ち方。持駒を使わずに自玉を安全にすることができました。以下▲6一とに△8九飛成で後手の寄せ合い勝ちです。渡部女流四段は清麗に初挑戦となりました。
写真:琵琶
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段