夏のダブルタイトル戦第2幕がスタート―伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負展望―

夏のダブルタイトル戦第2幕がスタート―伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負展望―

ライター: 夏芽  更新: 2023年07月05日

 藤井聡太王位に佐々木大地七段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦七番勝負の開幕が近づいてきた。両者は現在、第94期ヒューリック杯棋聖戦でも五番勝負を争っており、ダブルタイトル戦はいよいよ山場に入る。

全冠制覇に向けて

 タイトル保持者の藤井聡太王位は現在3連覇中。連続5期(または通算10期)で得られる称号「永世王位」まであと2期に迫っている。
 6月には名人を奪取し、史上2人目の七冠を達成。唯一タイトルを持っていない王座戦は挑戦者決定戦まで勝ち進み、前人未到の「八冠」が現実味を帯びてきた。
 いまだタイトル戦は負けなしで、現時点の通算タイトル獲得数は15期。特に2日制のタイトル戦はカド番にすら追い込まれたことがないという圧倒的な強さを見せている。
 年内に全冠制覇を成し遂げるには、棋聖を防衛し、王位を防衛し、そして王座戦の挑戦者になり、奪取することが条件。通算勝率8割を超えても、やはり大変な道のりであることは変わらない。

outlook_oui64_01.jpg
写真:金子光徳

初の2日制タイトル戦

 挑戦者の佐々木大地七段は長崎県出身の若手実力者。この王位戦では出場2年目の第59期(2018年)から6年連続で挑戦者決定リーグに入っている。
 今期は白組のリーグで岡部怜央四段、冨田誠也四段、渡辺明名人(対局時)、増田康宏七段、池永天志五段の5人を相手に全勝。挑戦者決定戦では羽生善治九段を破り、棋聖戦に続くタイトル挑戦を決めた。

64oui_outlook_02.jpg
写真:康太

【第1図は▲6六歩まで】

 第1図は挑戦者決定リーグの最終戦、池永五段との一戦から。
 相掛かりの中盤戦で▲6六歩の桂取りに対し、△8八と▲同角に△6七角と捨てたのが強手。以下▲同金に△8七飛成が角金の両取りで、先手玉の寄せを狙える形になった。実戦は、その後も力のこもった攻防が続き、最後は佐々木七段が接戦を制してリーグ優勝を決めた。
 佐々木七段は今回が初めての2日制タイトル戦。持ち時間が各8時間と長いため、棋聖戦とはまたペース配分が求められる。

先後と戦型

 実績は藤井王位が大きく引き離しているものの、両者の対戦成績は藤井王位4勝、佐々木七段3勝と拮抗している。
 成績に関して特に目を引くのは両者の「先手番」の強さ。藤井王位は昨年7月以降、先手番で負けたのは3月の棋王戦第3局(渡辺明棋王戦)のみ。対する佐々木七段も2023年に入ってから先手番で連勝しており、両者の過去の対戦も7局中6局で先手番が勝っている。
 ともに居飛車党で、藤井王位は角換わり、佐々木七段は相掛かりが主力戦法。お互い後手番は相手の注文を受けて立つタイプなので、今期の七番勝負は、このふたつの戦型が中心になりそうだ。
 佐々木七段の師匠・深浦康市九段は王位戦で3連覇しており、3期とも4勝3敗のフルセットだった。師弟そろって相性のよい棋戦。第7局までもつれ込む展開を期待したい。

 注目の第1局は7月7、8日(金、土)、愛知県豊田市「豊田市能楽堂」で行われる。

夏芽

ライター夏芽

2011年から関西を拠点にインターネット中継記者として活動。将棋は指すより見て楽しむタイプ。暇さえあれば書店の将棋コーナーに足を運んでいます。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています