里見、大激闘の最終局制す

里見、大激闘の最終局制す

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年12月27日

 里見香奈女流王座に加藤桃子女流三段が挑戦した第12期リコー杯女流王座戦五番勝負。加藤は挑戦者決定戦で西山朋佳女流二冠を下して5期ぶりの五番勝負登場だ。

第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局

 第1局は東京都文京区「ホテル椿山荘東京」にて。里見の先手中飛車に加藤は左美濃に構え、仕掛けからリードを奪ったが......。

【第1図は△6六角まで】

 第1図は6六の歩を取って角を飛び出したところだが、この手はまずかった。▲7七銀と両取りに当てる手が厳しい。△5九竜▲同金に△3三角と撤退するのではつらく、▲4五香と歩の裏をついて先手の調子が良くなった。以下は手厚く指して先手が制している。

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写真:睡蓮

第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第2局

 第2局は福島県郡山市「郡山ビューホテルアネックス」にて行われる予定だったが、里見が新型コロナウイルスに感染したため延期、第3局以降を前にずらして行うこととなった。

 第2局は岐阜県岐阜市「十八楼」にて。里見のゴキゲン中飛車に加藤が作戦勝ちからリードを奪うが、里見の勝負手もあって徐々に局面が際どくなっていく。

【第2図は△6二銀まで】

 加藤はここで一分将棋に入ったが、▲6二同馬が決断の一手。角を渡すと△5六角が残って怖いが、△6二同金▲7一銀△8五歩▲8二桂成△9三玉▲9四歩△8四玉▲6二銀不成と進めてピッタリ寄っている。加藤が勝って1勝1敗に。

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写真:翔

第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局

 第3局からは東京「将棋会館」にて。里見の先手中飛車に、第1局と異なり加藤は穴熊を選ぶ。

【第3図は△7九角成まで】

 第3図で▲5三歩が軽手で、後手はしびれた。次に▲5二歩成△同飛▲4三歩成が狙いだが、分かっていても受けが難しい。△3三桂と勝負に出たが、▲同桂成△同金寄▲2五桂△2三金寄▲4三歩成△同飛▲同飛成△同金▲4一飛と攻め立てられて、薄くなった穴熊は耐えきれない。里見が快勝で再びリード。

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写真:常盤秀樹

第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局

 第4局は先手番の加藤が再び居飛車穴熊を選択。先手がうまく局面を動かせるかの戦いとなった。

【第4図は△2一飛まで】

 ここで▲4四角が強手。△同歩の一手に▲4三銀△5三角▲3二銀成△5一飛▲3三成銀の二枚換えに進めて先手は楽しみが多い。△6九角にも▲5九桂と丁寧に応じ、以下は駒得とともに形勢もリードを拡大していき快勝となった。加藤が追い付き、決着は最終第5局へ。

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写真:八雲

第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第5局

 ここまで先手番がすべて勝ってきたシリーズで、第5局の先手となったのは里見。中飛車から角交換の形となる。加藤がリードする時間の長い将棋だったが、里見も緩急織り交ぜて勝負形に持ち込んでいく。

【第5図は△4八とまで】

 大熱戦となり、第5図は180手を超えて双方一分将棋の局面。次に△2八金からの詰めろで、と金の攻めは受からないため、後手玉への詰みか好防手があるかどうか。実戦は▲2三金△同玉に▲3五桂と眠っていた4七の桂が活躍。△1二玉に▲4五角△3四歩▲同角△2一玉▲2三飛△2二角▲同飛成△同銀▲5四角で後手玉は詰み筋に入っている。大駒の王手に対し、後手は合駒が強力すぎるのが痛い。

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写真:文

 手数199手となった最終局を制し、里見が3勝2敗で防衛を果たした。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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