三冠対四冠の激突 1月上旬の注目対局を格言で振り返る

三冠対四冠の激突 1月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年02月01日

 注目の王将戦七番勝負が始まりました。渡辺明王将(名人・棋王)と藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖)の三冠対四冠の激突は将棋界初です。

第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

【第1図は▲5五桂まで】

 第1図は第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局(▲藤井聡太竜王△渡辺明王将)。相掛かりから激戦の終盤戦で、▲5五桂と王手をしたところです。どこに逃げるか悩ましい王手です。実戦はここで残り少ない持ち時間を割いて△5四玉と逃げました。「桂頭の玉寄せにくし」で、▲6三桂成なら△5七歩成から迫れます。以下▲5六歩△6七歩▲同玉△6六歩▲同玉△7七桂成▲6五金から熱戦が続きましたが、最後は先手が競り勝っています。藤井竜王が史上最年少五冠へ好スタートを切りました。

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写真:日本将棋連盟

第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局

【第2図は△8七竜まで】

 第2図は第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局(▲伊藤沙恵女流三段△里見香奈女流名人)。双方居玉ですが、先手の玉は7六まで行った後に戻った形です。何か攻めたい局面ではありますが、▲4八玉が「居玉は避けよ」です。5九のままでは簡単に上から押さえられる形になってしまい危険ですが、一つ上がることによりグッと安全度が高まりました。以下△5六歩▲4六銀△7九歩成▲同銀△8九竜に▲6五歩から反撃し、先手が制勝しました。伊藤女流三段は悲願の初タイトルなるでしょうか。

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写真:日本将棋連盟

第80期順位戦A級7回戦

【第3図は△6四歩まで】

 第3図は第80期順位戦A級7回戦(▲斎藤慎太郎八段△羽生善治九段)。先手の駒が前に出ておらず、動くのは難しそうな局面ですが、ここから先手は巧みに手を作ります。▲8四角と揺さぶり、△5二金と受けさせてから▲7五角が軽快。玉を間接的ににらみ、「角筋は受けにくし」の形を実現しました。△6三金と受けましたが▲9五歩△同歩▲6四歩△同角▲同角△同金に▲9四歩で先手良し。△同香ならば▲8三角があります。以下は差が開いて先手快勝。斎藤八段が2期連続の挑戦に大きく近づきました。

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写真:睡蓮

第80期順位戦B級2組9回戦

【第4図は▲2九飛まで】

 第4図は第80期順位戦B級2組9回戦(▲阿部隆九段△中村太地七段)。相居飛車の持久戦ですが、ここから後手が動きます。△7五歩▲同歩△8三桂が「桂は控えて打て」の手筋で、この形の常套手段ともいえる動きです。▲7六金に△9五歩▲同歩△7四歩と合わせて後手好調。以下は攻めをつないだ後手が快勝し、中村七段が今期最初の昇級者となりました。

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写真:虹

第15回朝日杯将棋オープン戦本戦

【第5図は△3五歩まで】

 第5図は第15回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲永瀬拓矢王座△藤井聡太竜王)。タイトルホルダー同士が2回戦で激突しました。▲4四飛が決断の飛車切り。「一段金に飛車捨てあり」で、仮に5八金の形だととても飛車は切れません。以下△同銀右▲4五銀に△3六歩▲5九金と難しい応酬が続きました。

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写真:日本将棋連盟

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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