菅井が銀河戦優勝 12月下旬の注目対局を格言で振り返る

菅井が銀河戦優勝 12月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年02月01日

 銀河戦は菅井竜也八段が渡辺明名人を破り、全棋士参加棋戦初優勝を決めました。棋王戦は永瀬拓矢王座が4年ぶりの挑戦を決めています。

第29期銀河戦決勝

【第1図は△3一金まで】

 第1図は第29期銀河戦決勝(▲菅井竜也八段△渡辺明名人)。振り飛車穴熊から中央を突破し、駒損ながら先手ペースです。▲5四歩と垂らし、△6七馬にも構わず▲5三歩成と攻めて「5三のと金に負けなし」です。以下△5八馬に▲4三と△同銀▲5四歩△5二銀▲同銀不成△同飛▲4三銀△8二飛▲5三歩成と再度と金を作ります。大駒は渡しましたが自玉は鉄壁の穴熊で、と金で食いつけば問題ありません。絶品の振り飛車穴熊を見せた菅井八段が初優勝を飾りました。

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写真:日本将棋連盟

第47期棋王戦挑戦者二番勝負第1局

【第2図は▲7七同金まで】

 第2図は第47期棋王戦挑戦者二番勝負第1局(▲郷田真隆九段△永瀬拓矢王座)。矢倉模様の出だしから先手が穴熊、後手がバランス型に構えました。後手が的確に攻めて穴熊を薄くし、形勢をリードしたところです。△6八角が「要の金を狙え」の攻めで、△3五角成と手厚く受けに回る含みも持たせています。実戦は▲3四歩と取り込みましたが△9五歩▲同歩△7七角成▲同桂△7八金と絡み、金のいない穴熊は粘るのが難しくなりました。勝者組トーナメントを勝ち上がった永瀬王座が勝ち、4年ぶりに渡辺棋王への挑戦権を獲得しました。

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写真:玉響

第35期竜王戦1組ランキング戦

【第3図は▲9一角まで】

 第3図は第35期竜王戦1組ランキング戦(▲渡辺明名人△豊島将之九段)。1組の初戦から豪華なカードが実現しました。大熱戦から持将棋となり、深夜の指し直しです。実戦は△4二金と玉頭を受けましたが、▲3四歩△2二銀▲4三歩が厳しく、先手の勝ち筋に入りました。ここは△8四歩と香を取り、▲8二角成に強く△5六香で攻め合えば後手に分のある終盤戦だったようです。飛車を取られますが「終盤は駒の損得より速度」で、玉に迫ることが大事になります。

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写真:吟

第35期竜王戦6組ランキング戦

【第4図は△6四銀まで】

 第4図は竜王戦6組ランキング戦(▲大平武洋六段△小山怜央アマ)。「三歩持ったら端に手あり」で、▲1五歩が効果的な端攻めです。△3四銀▲2六角と角を追ってから△1五歩と手を戻しましたが、▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲3五歩△4三銀▲2五桂がうるさく、手になっています。前期竜王戦で快進撃を見せた小山アマですが、今期は2回戦で敗退となりました。

第80期順位戦B級1組

【第5図は△6四歩まで】

 第5図は第80期順位戦B級1組(▲佐々木勇気七段△千田翔太七段)。A級昇級を目指す上位対決です。▲3五歩△2六角▲5八飛△7五歩▲2四歩△同歩とあちこちで歩がぶつかっていきます。「開戦は歩の突き捨てから」で、3筋、7筋の突き捨てが入れば跳ねている桂の利きに歩が打てるようになります。2筋の突き捨ては後に▲2三歩を含みにしていて、激しい攻め合いを予感させる進行です。結果は千田七段が難解な戦いを制し、混戦になっています。

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写真:牛蒡

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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