西山朋佳女流王座に里見香奈女流四冠が挑戦した第10期リコー杯女流王座戦五番勝負。女流三冠対女流四冠の激突で、前期と立場を入れ替えての女流棋界の頂上決戦だ。
第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第1局
第1局は東京都文京区「ホテル椿山荘東京」にて。相中飛車の出だしだったが、途中で里見が居飛車に戻す珍しい展開に。振り飛車の攻めが決まって優勢になるが、徐々に形勢は怪しくなっていく。
【第1図は△6八馬まで】
図は大詰め。1分将棋の先手は▲4六桂と合駒したが△同馬と取られて詰んでしまった。図では▲4六銀打の合駒なら先手玉は詰まず、▲4四桂や▲6二とといった厳しい攻めが残っており先手の勝ち筋だった。まずは西山が先勝。
撮影:常盤秀樹
第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第2局
第2局は東京都港区「明治記念館」にて。西山の石田流に対し、里見が居飛車で迎え撃つ展開。急戦から手厚い受けを見せた居飛車がペースをつかむ。
【第2図は▲6三銀まで】
先手の食いつきを余せるかの局面。角をはさんで竜が向かい合っているので、大技にも注意が必要だ。ここから△4二金寄▲6二銀成△5二桂が冷静な対応。▲4一角成を喫しなければ大丈夫だ。△5二桂以下▲同角成△7一竜▲4二馬△同角▲7一成銀と進んだがこの瞬間がぬるく、△6七歩成から反撃して後手が勝ち切った。1勝1敗のタイに。
撮影:常盤秀樹
第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第3局
第3局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。本局は相振り飛車から里見は居玉のまま動いていった。
【第3図は△7三玉まで】
図の△7三玉は力強い受けだが危険だった。▲8五歩△同歩▲9五歩がテンポの良い攻めで、△同歩は▲同角がうるさい。実戦は△8六桂▲9七飛△8四桂としのいだがここに桂を2枚使うのではつらく、▲5五歩で歩を手にしての▲8七歩を狙われて苦しくなった。以下も気持ちよく攻めて居玉のまま押し切っている。これで里見は復位まであと1勝。
第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第4局
第4局からは東京都渋谷区「東京・将棋会館」にて。相振り飛車から角交換になって手将棋となった。後手の里見が優勢になるが、西山も必死に攻めて楽をさせない。
【第4図は△2四飛まで】
先手の勝負手が実り、ようやく逆転にこぎつけた。▲6三銀△同角▲5三角が強手。△同金▲同桂成△7二玉▲6三金△8二玉▲7五歩で先手勝勢だ。逆転で西山が制し、決着は最終局へ。
撮影:常盤秀樹
第10期リコー杯女流王座戦五番勝負第5局
最終第5局は里見が先手となり、角交換型の相振り飛車へ。里見が後手の駒を圧迫し、忙しくなった西山が駒損の猛攻に出る。
【第5図は△9九飛成まで】
先手優勢だったが、少しずつ差が詰まっている。実戦の▲3三歩成△2一香▲1二竜△2八銀不成▲3二との順は危険だった。以下△3九竜▲4七玉△3七銀成▲同銀△2七香成に▲3一と△4二香でついに逆転。▲3三歩成では▲6六歩と桂馬を取って▲6九香と外堀を作っておけば先手玉に迫る手段は難しかった。また、最後の▲3一と△4二香の交換も損で、黙って▲4八銀と受けておく方が良かったようだ。
第4局、第5局と執念の逆転で制した西山がフルセットで防衛。里見にとっては復位目前だっただけに、悔いの残るシリーズとなった。
撮影:日本将棋連盟
注目対局プレイバック
ライター渡部壮大
高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
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