ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年12月24日
竜王戦は豊島将之竜王が3勝目をあげ、初防衛まであと1勝としました。王将戦はプレーオフの末に永瀬拓矢王座が初の王将戦挑戦権を得ています。
【第1図は△3六角まで】
第1図は第33期竜王戦七番勝負第4局(▲豊島将之竜王△羽生善治九段)。横歩取りから飛車交換になって戦いが始まりました。ここで▲7九金が「金は引く手に好手あり」で、駒を使わず陣形を引き締めることができました。2枚の一段金が安定していて、後手は飛車を使うのに時間が掛かる状況です。以下△1八角成に▲9二香と俗手で攻め、先手の方が速度でまさっています。
写真:日本将棋連盟
(第2図は▲4八玉まで)
第2図は第28期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第2局(▲中井広恵女流六段△里見香奈倉敷藤花)。ゴキゲン中飛車対急戦から、うまく端で逆襲した後手が優位に立ちました。△2六香が「玉は包むように寄せよ」の手堅い勝ち方で挟撃を実現させました。以下▲6四歩△2七香成▲6三歩成△7六馬と「金はトドメに残せ」の格言通り寄せて受けなしです。里見倉敷藤花が2連勝で防衛を果たしました。
写真:日本将棋連盟
(第3図は△7三同金寄まで)
第3図は第41回将棋日本シリーズ決勝(▲豊島将之竜王△永瀬拓矢王座)。永瀬王座の四間飛車ミレニアムに豊島竜王の居飛車穴熊です。堅さを生かしたさばきが決まり、居飛車の勝勢です。図から▲6一銀△7四桂▲7二銀不成△同金▲7三歩△同金▲5一角成と「要の金を狙え」の要領で寄せにいきます。以下△8二銀に▲6二銀△7二香▲5五馬としつこく金を狙い、受けが難しくなりました。豊島竜王が強敵を連破して2度目の優勝です。
写真:日本将棋連盟
(第4図は▲5八金まで)
第4図は第70期王将戦挑戦者決定リーグプレーオフ(▲豊島将之竜王△永瀬拓矢王座)。日本シリーズ決勝に続き大一番での激突です。角を合駒に使わせて後手優勢です。ここから△6一玉が「玉の早逃げ八手の得」「居玉は避けよ」の格言通りで、▲7一銀のキズも消して味の良い一着です。以下も手堅い手を重ねた永瀬王座が押し切り、初の二日制タイトル戦登場を決めました。
(第5図は△4五歩まで)
第5図は第46期棋王戦挑戦者決定トーナメント(▲糸谷哲郎八段△広瀬章人八段)。角換わり早繰り銀の中盤戦です。▲1五歩△同歩▲2四歩△同歩としてから▲3七桂と跳ねたのが「開戦は歩の突き捨てから」です。1筋は後からでは入らない可能性もあるので、早めに突き捨てて攻めの幅を広げるのが相居飛車の手筋です。以下△4四銀左▲5四歩△8六歩で攻め合いになりました。先手の攻めをうまく受け止めてカウンターに成功した広瀬八段が挑戦者決定二番勝負に進んでいます。
(第6図は▲8六桂まで)
第6図は第47期岡田美術館杯女流名人戦リーグ最終戦(▲加藤桃子女流三段△加藤圭女流初段)。美濃囲いに対する常套手段の端攻めですが、△8五銀が「桂頭の銀定跡なり」の一着で、まだまだ形勢不明の戦いです。以下も激戦が続きましたが最後は先手が競り勝ち、加藤女流三段が9戦全勝で初の女流名人戦挑戦権を手にしました。
ライター渡部壮大