【PR:ローソン×糸谷哲郎八段】本を読み、哲学する心地よさ――糸谷哲郎八段の素顔(PM3時の棋士たち)

【PR:ローソン×糸谷哲郎八段】本を読み、哲学する心地よさ――糸谷哲郎八段の素顔(PM3時の棋士たち)

ライター: 藤田華子  更新: 2020年12月31日

スイーツを口にする時間は、ホッと一息つき、素の自分に戻るとき。
今回はローソンの「どらもっち(あんこ&ホイップ)」を食べながら、スイーツ好きな糸谷哲郎八段の素顔に迫ります。
糸谷八段といえば、早見え早指しの棋士として知られ、力戦型をいとわない、独特の力強い棋風が特徴的。また大学院まで哲学を学ばれていたという異色の経歴をお持ちになり、"ダニー"の愛称で親しまれ普及活動も精力的に行われています。
「今日はひねくれたことしか言いませんよ(笑)」と始まったインタビューですが、言葉の端々に、周囲への気遣い、そしてあたたかいお人柄が。読書や映画、哲学について伺いました。

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リラックスする読書タイム、将棋にも役立つ哲学の考え

――一時期「糸谷哲郎は本当は3人いるんじゃないか?」と噂になるほど、対局に普及活動にお忙しい糸谷八段。お休みの日は何をされていますか?

対局の翌日は休むようにしているんですけど、いまは休みと仕事の境界が曖昧になってきていますね。棋士会でYoutubeチャンネルを始めたこともあり、家での作業も多くなってきました。以前は3〜4時間睡眠でも動けていたんですが、30代に入り体が動かなくなってきたので分身の術は終わりです(笑)。

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――リラックスしていられると思うのは、どんなときですか?

基本的には、とりあえず活字を読むなど脳に何かの情報を吸収させている状態は落ち着きます。何もない状態はイレギュラーで、本を読んでいたり将棋を指していたり、何かを吸収している・考えていることが自分にとって心地よい基礎状態なんだと思います。

――幼少期から読書がお好きだと伺いました。どんなものを読まれていたんですか?

一番古い読書の記憶はミヒャエル・エンデの『ネバーエンディング・ストーリー』か『モモ』です。幼稚園の頃ですかね。昔は1日に8冊ほど読んでいましたが、最近は一気に読破するのが難しくなってきました。ミステリーやSF、伝奇小説、歴史小説を読むことが多いです。ホラー小説の『ぼぎわんが、来る』は面白かったですよ。特に疲れているときはホラーを手にとります。

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――お疲れのときにホラー?

恐怖は感じるだけで済むから、ラクなんですよね。推理小説などは考える工程が必要ですし、論文のために読む哲学書はどこに何が書いているか把握しなくてはいけないので。映画も同じで、何も考えたくないときはゾンビものかアクションシーンが多いもの、何度も観てあらすじを知っているものを流します。一番好きな映画はクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』で、作中の会話までだいたい覚えています。

――あまり読まれないジャンルの本はありますか?

恋愛小説ですね。とんでもない設定のものがあったら読んでみたいです。例えば、異星人間の文化の違いと、どのようにして恋愛が成立するのか文化人類学的な考察を踏まえつつ展開するような物語があったら面白いなと(笑)。

――哲学の研究が、将棋に活きていると感じることはありますか?

哲学は、人間が勝手に抱いている思考の前提を消去して、何を前提として据えたいかをセットして考えるんです。将棋は「この形は端歩をついていくものだ」とか「この局面にはこの手」とか、前提をいくつも積み重ねて局面を考えます。そのほうが効率的なので人間は自分自身では思考のロックを外しにくいのですが、ロックを自分で解除するという発想を持っているか・いないかでは、出てくるものが違う。
将棋AIが出す最善手に「人間はこの手は指さない」というのがありますが、それはたいてい前提を外した手なんです。思考を一段上に、メタにする手助けになるという点で、哲学は非常に将棋にも役立つと思いますね。

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――なるほど。今日お持ちいただきました本にも、哲学の本が入っていますね。

撮影なのできれいな状態のものがいいかなと思い、知り合いが書かれた新しい本を持参しました。

1冊目:
大学院の同級生・戸谷洋志くんと百木漠さんの『漂泊のアーレント 戦場のヨナス:ふたりの二〇世紀 ふたつの旅路』。戸谷くんとは私も一緒に共著『僕らの哲学的対話 棋士と哲学者』を書かせていただきました。
2冊目:
ホラー作家・澤村伊智さんのミステリー『アウターQ 弱小Webマガジンの事件簿』。けっこうホラーとミステリーは近いようで遠いんです。完全なホラーって説明できない、「観たら呪われる」とかルールだけあって解決がないんですけど、これはホラーなのに解決がある作品でそこが面白いです。
3冊目:
先日対談させていただいた山口雅也さんと、菊池篤さんの『刑事コロンボの帰還』です。有名な推理小説家の先生が総指揮を取り、刑事コロンボの魅力について集めた一冊です。

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――棋士の先生はどなたと過ごすことが多いですか?

山崎(隆之八段)さん、西川(和宏六段)さん、都成(竜馬六段)さんが多いですね。山崎さんとはだいたい将棋を指していて、西川、都成とは呑んでいることが多いです。最近は減ってしまったんですけど、関西将棋会館にいるとお互い「ちょっと行きますか」という感じで。

――ご家族と過ごされる時間も、素に戻れるひとときだと思います。ご家族へのメッセージをお聞かせください。

両親は、自分たちの生き方のなかに将棋というものはなかった人たちだと思うんですけど、それでも自分が棋士になることを応援してくれました。いまは結果を見て「おめでとう」とメールをくれたりして、ありがたいですね。

自分のことよりも、相手のことを考える

――パートナーと過ごす時間も、素顔でいられる瞬間だと思います。糸谷八段の将棋は「早見え・早指し」「定跡にとらわれない」などが特徴ですが、恋愛にも通じるところはありますか?

棋風と恋愛が一致する人ってほとんどいないと思うんですけど、みなさんどうですか(笑)?あ、でも、私は人生を賭けた野望のある人が好きで、まわりからは「パートナーに何を求めているんだ?」「道なき道を行く人間ですね」と言われることがあって...そこは定跡にとらわれない将棋を好む部分と近いのかもしれないです。

――好きなタイプが「人生を賭けた野望のある人」とは、糸谷八段らしいです!

あとは、私が予想しない回答をくれる人も好きですね。自分の歩んできた人生以外の景色を見せてくれたり、自分とは違った感覚をお持ちだったり――お互いに、新しい知識や発想を吸収できたら。
デートは、化学反応を起こせるような場所に行きたいです。この人がこれを観たらどんな発想をするんだろうって、映画でも水族館でも、同じものを観てコミュニケーションを楽しめたらいいですよね。お相手の興味関心や好きな食べ物を聞いてどこに行くか考えると思います。自分のことは感覚で済ませちゃうんですけど、誰かのことになると考えたくなるんですよ。

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――将棋以外で習得できたらいいなと思うスキルはありますか?

調理技術と清掃技術ですかね。料理は基礎から鍛え直さなくてはいけないんですが、上手に出汁をとれるようになりたいです。清掃技術は、部屋に本が散らかっているのでその整理からですね。

――本日は私服でお越しいただきました。ポイントを教えてください。

大学の図書館という想定で、ラフだけれども真面目にも見える格好をイメージしました。講義のときは上半身だけ見えて真面目そう、でも下はジーンズでカジュアルに。対局のときのスーツは、長時間正座するので着心地を重要視していますね。色味は紺や青系が好きです。

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――では、お話も進んだところでおやつタイムに入ります。スイーツ好きとしても有名な糸谷八段。今日はローソンの「どらもっち(あんこ&ホイップ)」をお召し上がりいただきますが、お味はいかがですか?

生地がモチっとしていて、本当にお餅というか、求肥みたいな食感ですね。クリームとあんこの甘さが響き合っています。スイーツは新作が出たらけっこう試すんですけど、そのなかでも「どらもっち」は生地と中身のバランスが楽しめるスイーツだと思います。片手で食べられるところも、手軽でいいですね。

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――よく検討室やイベントに手土産を差し入れされると伺いますが、スイーツにまつわるエピソードはありますか?

兄弟子の山崎さんの誕生日がバレンタインなので、毎年チョコレートを贈っていました。世界から集まったチョコレートが一堂に会するフェアに行って、彼が好きな生チョコレートをいくつか見比べたり、個人的に好きな太陽系の惑星をモチーフにした「惑星ショコラ」なんかを見たり、けっこう楽しくて。相手の好みに合うものをピタッと贈れると嬉しいですよね。

10問アンケート

インタビューで聞ききれなかった10の質問を、糸谷八段に伺いました。

Q1
お名前の由来は?
糸谷
母親が「哲学」から「哲」という字をとったんだと思います。考える人になって欲しいという想いからでしょうね。
Q2
お好きな俳優さんは?
糸谷
マーゴット・ロビー、クリス・ヘムズワースですかね。佐々木蔵之介さんや玉城 ティナさんも好きです。玉城さんはギャグができる方ですよね。ホラー映画で怯える演技がうまい方はすごいなと思います。
Q3
どんな音楽を聴かれますか?
糸谷
川谷絵音さんの曲が多いです。あとはマキシマム ザ ホルモンや、ASIAN KUNG-FU GENERATION、感覚ピエロ、ずっと真夜中でいいのに、ヨルシカなどでしょうか。落ち着きたいときに高い声を聞きたくなる習性があるんです。
Q4
好きなお店の好きな一品を教えてください。
糸谷
天満にある「アネロ」というお店の「生ウニのクリームソースパスタ」ですね。イクラや蟹など、季節によって乗っているものがアレンジされるんです。扇町に姉妹店の「アネロ391 扇町」もあり、どちらも美味しいです。福島だと、ラーメン屋兼バーの「味噌ラーメン専門店みつか坊主」ですね。箕輪ビールと産直野菜のおつまみがあるんですよ。野菜をつまみにビールを飲む、そして〆に味噌ラーメンというのがオススメです。
Q5
会ってみたい人はいますか?
糸谷
亡くなってしまっているんですけど、研究対象の哲学者・ハイデガーやヒューパード・ドレイファスです。会って教えを乞いたいです(笑)。
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Q6
いま誰かと議論したいテーマは?
糸谷
(即答で)"人間の身体はどのくらいまで拡張できるのか"ですかね。人間にプラスで四肢をつける――例えば腕の先にショベルカーを加えたら、どこまでが人間の脳の拡張なのか?それとも道具なのか?自我はちゃんとあるのか?そんなことを、この分野の研究をしている方と話したいです。
Q7
多くの哲学者が考えてこられた"愛"について糸谷先生のお考えを教えてください。
糸谷
哲学者の中には、"愛は倫理の根源になるもの"と考える方もいます。人が人を思いやる気持ち、家族愛、隣人愛、恋愛...想い合う気持ちが倫理の根源になる。そうすると話が拡張されてきて、自分がよく使う道具にも「愛着が湧く」って言いますよね。きれいに拭いてあげたほうが喜ぶなんて、擬人化して考える。その感情を自身の年月の拡張として捉えるのか、関係性の中で捉えるのか、それはその人が歩んできたものの表れだと思います。つまり愛は、自分の中にある何かを対象に託している――"拡張した自分"のような概念でしょうか。
Q8
旅の計画は綿密に練っていく派?ノープラン派?
糸谷
「○○がしたい」と決めていくことも、一種のノープランな可能性もあります。例えば民俗学者の柳田國男先生が書かれた『遠野物語』を読んで、私が「河童が見たい」と岩手県遠野地方に行く場合、それって果たしてプランがあるのかないのか、微妙なところです(笑)。私個人としては一応プランは立てますが、「予定は踏み破るもの」という意識で生きています。
Q9
大の猫好きとしても有名です。猫の魅力を教えてください。
糸谷
フサフサの毛を撫でている感触でしょうか。理由は明らかでないのですが、ペットとの触れ合いがあるほうが人間の寿命が延びるという説もありますよね。仲良くなろうとすると逃げてしまうところもかわいいです。
Q10
ファンの方へメッセージをお願いします。
糸谷
今回このような珍しいインタビューを読んでいただきありがとうございます。将棋でも新しいかたちをお見せできるように、そして体力が続く限り普及活動も頑張っていきたいです。応援よろしくお願いします。

PM3時の棋士たち(糸谷哲郎八段)11

写真:阿部吉泰

糸谷哲郎八段

糸谷哲郎八段

1988年10月5日生まれ。広島県広島市出身。森信雄七段門下。2006年四段昇段。2014年、第27期竜王戦でタイトルに初挑戦し奪取。
2018年にA級昇級。2019年、棋士会副会長に就任。早見え早指しの棋士として知られ、角換わりを中心に、力戦型の将棋を得意とする。また、大阪大学卒業後、大学院に進学。文学部哲学・思想文化学専修修士課程終了という、異色の経歴の持ち主。"ダニー"の愛称で親しまれ、大のスイーツ好きとしても有名。

PM3時の棋士たち

藤田華子

ライター藤田華子

音楽雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』の編集者を経て、現在は企業のコンテンツ制作を手掛けています。SDGsやライフスタイルについての連載も執筆。趣味は将棋(将棋ペンクラブのお手伝い)、お風呂(温泉ソムリエです)、読書。観る将・読む将として、将棋の魅力をお伝えしていきます!

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