ライター渡辺弥生
将棋にとっては悪くない――渡辺弥生女流初段
ライター: 渡辺弥生 更新: 2020年11月10日
将棋ファンの皆さま、こんにちは。女流棋士の渡辺弥生です。
ナマコの親戚
さて、将棋もゴロゴロ、日常生活もゴロゴロしているのが大好きなナマコの親戚のような私だが、このコロナの騒ぎが始まってからはいよいよ「動かざること山の如し」である。緊急事態宣言が出たころは昼に起きて昼食を食べるとまた横になり、夜になったら夕飯を食べてまたすぐに寝ていた。これには訳があって、この少し前から日に4度検温をするようになったのだが(仕事がなくなって暇なのである)、平熱35度台の私が昼間はかると熱が37度を超えている。こりゃ熱を下げないと大変だということで、一緒に暮らしている両親とも口をきかないようにして布団の中に引っ込んでいたわけである。
それにしても良くならないし、熱があるだけで身体はなんともない。しばらくして将棋をしていると体温が上がるのだということに気が付いた。将棋をやめて30分くらい経つと体温は36度台に下がり、さらに外を散歩すれば35度台に戻った。早指しでネット将棋をしたり、一桁台の簡単な詰将棋を解いているだけなのに、ここまで身体に変化があるのには驚いた。対局のあと体重が減るのは汗をかくせいなのかと思っていたが、実は脳がフル回転で運動していたのだと納得がいった。
日がな一日中ゴロゴロして将棋ばかりやっているのは身体にはいいとは思えないが、将棋にとっては悪くないようで私にしては調子がいい。あくまでも「私にしては」ですよ。
ベビーブーム
このコラムを書いているのは10月なのだが、この月はいいことがいろいろとあった。まず弟夫婦と従妹夫婦にちょうど一日違いで赤ちゃんが産まれた。弟は三人目の女の子。結婚式で「100万人子どもを作って日本の少子化問題を解決する」と言っていたが(兄弟が100万人いたら逆にいろいろと問題が起きそうだ)、本当に子だくさんである。
13歳年下の従妹はまだ結婚したばかりで一人目の男の子。従妹は直前にうちに遊びに来てくれて、久しぶりにおしゃべりすることができた。帰り際に「頭が良くなるように触って!」と言われておなかを撫でたら、赤ちゃんが動いているのがわかった。最近はずっとひとの身体に触れないように気を付けていたから、なんだかホッとして温かい気持ちになった。
久しぶりの関西遠征
私自身は対局で大阪へ行ってきた。2019年に第1期ヒューリック杯清麗戦(今期から大成建設杯清麗戦)がスタートするまで関西所属の女流棋士と当たるのは3回戦くらいまで勝ち上がったときや予選を抜けたときだったから、未だに関西遠征は嬉しい。今は記録係が女流棋士なので、朝早めに対局室に行って話すのも楽しみだ。向こうは対局の準備をしているところだから少し迷惑かもしれない。
撮影:翔
対局前日の移動日は多少車酔いして気持ち悪いので、夜7時前にさっさとベッドに潜り込んで例のゴロゴロ開始である。全然眠くはないし、そもそも目覚ましをセットしてもすぐに鳴り出してしまうのでまだ部屋の電気は消さずに棋譜中継を見たり、テレビを見たりしている。大阪に行ったときはお笑い番組や歌番組、冬であればフィギュアスケートを見るのが好きだ。棋譜中継は要注意で、順位戦の日などは「あと一手見たら寝よう」と思っているといつの間にか12時をまわっていることがある。ABEMAで放映されている麻雀のMリーグも大好きで、こちらも応援しているチームが出ている日に勝負が長引くと大変。とは言え麻雀の方は初心者なので目が冴えて困ることはない。
母へのプレゼントは
今回は対局が終わったあと時間があった。自分が例によってゴロゴロ、ダラダラした将棋を指し続けるかもしれないと思い、持ち時間2時間の将棋なのに19時57分の新幹線を予約してしまっていたせいだ。でもちょうど良かった。母に早めの誕生日プレゼント、自分にはたこ焼きを買って食べた。温かくてとても美味しかった。家に着いたのは0時近かったが、両親ともまだ起きていて、母にプレゼントを渡すと眠そうな顔をしながらも喜んでくれた。渡したストールを巻いて「暖かい」と言っているのを見ていたら、ようやく対局の緊張が解けて気持ちが和んだ。今度は新大阪で肉まんを買って帰ろう。
まだまだ大変な時期が続きそうですが、どうか皆さまも体調にはお気をつけてお過ごしください。
※写真は新大阪で食べたたこ焼きです。