ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年10月02日
王位戦は挑戦者の強さが光り4連勝で奪取。史上最年少での二冠&八段を達成しました。ヒューリック杯清麗戦は里見香奈清麗が初防衛で、タイトル獲得通算を41期としています。
【第1図は▲8七銀まで】
第1図は第61期王位戦七番勝負第4局(▲木村一基王位△藤井聡太棋聖)。図からの次の一手が封じ手です。△2六飛と逃げる一手に見えましたが、藤井棋聖は封じ手時刻を過ぎても考えてから封じます。ここで△8七同飛成が強手で、「一段金に飛車捨てあり」です。以下▲8七同金に△3三角と放ち、手を作ることに成功しました。中住まいと6一の金が安定した形で、飛車を渡してもすぐに打ち込まれる心配がありません。以下は着実に差を広げていき、そのまま押し切りました。藤井棋聖は4連勝で王位奪取、早くも二冠です。
撮影:常盤秀樹
【第2図は△8四桂まで】
第2図は第2期ヒューリック杯清麗戦五番勝負第5局(▲上田初美女流四段△里見香奈清麗)。ゴキゲン中飛車対超速▲3七銀戦法の中盤戦。△8四桂は「桂は控えて打て」で船囲いに対するお馴染みの手筋です。ここで▲8五銀が「桂頭の銀定跡なり」の手堅い受けで、桂の活用を防いでいます。また、好機に▲8四銀と食いちぎることもできます。以下も熱戦が続きましたが、里見清麗が競り勝って初防衛を果たしています。
撮影:常盤秀樹
【第3図は▲4七玉まで】
第3図は第33期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局(▲羽生善治九段△丸山忠久九段)。1手損角換わり対早繰り銀から乱戦となって迎えた終盤戦。△4五銀が「玉は包むように寄せよ」の活用で、先手玉は受けが難しくなりました。以下▲3二竜に△4三飛と質駒を取り、▲同歩成に△5八銀で先手投了。以下は詰みです
撮影:常盤秀樹
【第4図は▲8七同金まで】
第4図は竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局(▲丸山九段△羽生九段)。角換わりの早繰り銀から、双方堅陣に組み上げる持久戦となりました。銀冠の頭を叩かれている形なので、そこに手を入れたくなりますが、△8六歩が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。▲2三歩成△同金と王手で銀を取られますが、まだ後手陣は安全です。以下▲8六金△8五歩▲同金△8七歩▲同玉△5六歩▲5九飛△8四歩と歩を駆使して先手陣を攻略しました。これで1勝1敗となり、決着は第3局へ。
撮影:常盤秀樹
【第5図は△7五同飛まで】
第5図は第70期王将戦二次予選(▲久保利明九段△永瀬拓矢二冠)。王座戦五番勝負で激突する二人が王将リーグ入りを懸けた一番でも対戦しました。図は居飛車が動いてきたところで、▲7八飛が「戦いの起こった筋に飛車を振れ」です。以下△1二香に▲5四歩で決戦となりました。双方チャンスのある将棋でしたが、最後は永瀬二冠が制しています。
撮影:睡蓮
今期の王将リーグのメンバーが出揃いました。(1)広瀬章人八段(2)豊島将之竜王(3)藤井聡太二冠(3)羽生善治九段(5)永瀬拓矢二冠(5)木村一基九段(5)佐藤天彦九段と、豪華なメンバーでどの対局も楽しみです。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段