藤井、史上最年少で二冠に

藤井、史上最年少で二冠に

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年09月29日

 昨年史上最年長で初タイトルを獲得した木村一基王位。挑戦者の藤井聡太棋聖は予選から勝ち上がり、挑戦者決定リーグも全勝と勢いに乗る。史上最年少でのタイトル獲得を目指す(開幕時点で)立場で、対照的な構図となった。藤井が二日制を戦うのはもちろん初。藤井は棋聖戦と並行してのダブルタイトル挑戦となった

第61期王位戦七番勝負第1局

第1局は愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」にて。両者は公式戦では初手合だ。藤井得意の角換わり腰掛け銀から藤井が攻め、木村が受ける両者の棋風通りの展開に。

【第1図は△3一桂まで】

 後手玉を追い詰めているが、詰めろが途切れると△4八馬で逆転する。有力手が色々見える中、▲1五歩△同歩▲2六金が確実な寄せだった。▲1四金△同玉▲1五香の詰めろになっている。実戦は△2三桂と埋めたものの、▲1五香△1四歩▲1一とでうまく手をつないだ。以下もピッタリの寄せを決めて藤井が制勝。

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撮影:常盤秀樹

第61期王位戦七番勝負第2局

 第2局は北海道札幌市「ホテルエミシア札幌」にて。相掛かりから木村が巧みな指し回しで駒得に成功。はっきりと優位に立つが、藤井も必死の粘りで楽をさせない。時間切迫もあり、局面が徐々に怪しくなっていく。

【第2図は▲1一竜まで】

 一時を思うと△5三香が玉頭を埋めながら5七への突進も見せた攻防手。▲7九玉と早逃げしたが、△2六角もうるさい追撃で▲4二歩△4八角成▲4一歩成△5七銀不成と踏み込む。後手玉は左辺が広くわずかに詰まず、後手の勝ち筋に入った。藤井は大きな逆転勝ちで2連勝。

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撮影:金子光徳

第61期王位戦七番勝負第3局

 第3局は兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」にて。矢倉から持久戦となり、長い駒組を経て戦いとなった。

【第3図は▲1五角まで】

先手好調の攻めで粘るのが難しいようだが△6二銀が木村らしさの出た根性の粘り。▲5一角成や▲7一角の筋を消している。依然として形勢は苦しいものの、簡単には負けない。粘りが実って終盤で藤井に一失あり、後手にもチャンスが訪れたがとらえきれず藤井の勝利に終わる。藤井が一気の3連勝。

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撮影:中野伴水

第61期王位戦七番勝負第4局

第4局は福岡県福岡市「大濠公園能楽堂」にて。第2局に続き木村が相掛かりを選択。

 

【第4図は▲8七銀まで】

図は封じ手の局面。△2六飛の一手のように見えたが、藤井は封じ手時刻が過ぎても考え続ける。翌朝の封じ手は△8七同飛成。後手は飛車の打ち込みに強い陣形とは言え、かなり早い飛車切りだ。以下▲8七同金△3三角▲5五角△同角▲同飛△3三角▲6六角△8六歩と進み、うまく手を作ることに成功。後手玉も薄いもののうまく先手の反撃を見切り、先手玉を寄せきった。

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撮影:中野伴水

 藤井が4連勝で王位奪取。棋聖戦五番勝負に続き、藤井の強さが光るシリーズとなった。藤井はタイトル2期により八段にも昇段。史上最年少で二冠、八段昇段となった。驚異的な進化を見せ続ける藤井はどこまで成長するのだろうか。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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