本戦1回戦 チーム永瀬VSチーム天彦、ベスト4に進むのはどっち?~生放送振り返り~

本戦1回戦 チーム永瀬VSチーム天彦、ベスト4に進むのはどっち?~生放送振り返り~

ライター: 紋蛇  更新: 2020年08月01日

*前回の記事:本戦1回戦 チーム渡辺VSチーム糸谷 振り返り

最後のベスト4の一枠を勝ち取るのは? 7月25日に生放送された第3回AbemaTVトーナメント本戦では、チーム永瀬(永瀬拓矢二冠、藤井聡太棋聖、増田康宏六段)とチーム天彦(佐藤天彦九段、斎藤慎太郎八段、阿部光瑠六段)がぶつかった。チーム永瀬は藤井が史上最年少タイトルホルダーの記録を達成し、勢いを感じさせる。チーム天彦は阿部が唯一のオールラウンダーで、後手番を任せやすいのがポイントだ。
第1局はチーム永瀬の先手が決まった。第3局までの結果は以下の通り。

第1局 藤井◯-●斎藤
第2局 増田●-◯佐藤
第3局 藤井◯-●阿部

いきなり棋聖とA級棋士が激突したが、藤井が幸先のよいスタートを決めた。第2局は佐藤が貫録を見せて、タイに戻す。しかし第3局は再び藤井が出て2勝目を挙げ、チーム永瀬が1歩リードした。

【第4局】永瀬拓矢二冠VS斎藤慎太郎八段


斎藤慎太郎八段VS永瀬拓矢二冠

1分のオーダー会議はチームの個性が出た。チーム天彦は第4局に斎藤の出場を初めから決めていたようで、ほぼ第3局の感想戦に費やしている。チーム永瀬は、リーダーの永瀬が藤井にオーダーの決定を委ねる。といっても、藤井もこれといった案があるわけではなかったようで、「普通で行きますか、どうですか」と永瀬に出場を薦め、永瀬も時間ギリギリまで悩んで快諾した。
永瀬は1992年生まれ、斎藤は1993年生まれと歳が近い。これまでの公式戦の対戦成績は、永瀬の5勝2敗。2019年度に6局も戦い、9月に開幕した第67期王座戦五番勝負は永瀬がストレートで王座を奪取した。
戦型は相掛かりから力戦に進む。

【第1図は▲4三馬まで】

第1図は3二から馬を引いたところ。以下△6四香に▲7三歩成△同銀▲7四歩△同銀▲6四金△同歩▲同角と攻めたが、△5二金に▲3四馬と引くようでは攻めあぐねている。そこから永瀬は△3八歩を間に合わせた。局後に斎藤は「駒を前に出していたんですが、終盤は難しくて決めきれなかった」と振り返っている。
解説の佐々木勇気七段は▲3六歩を指摘しており、玉頭から猛攻をかけずに天王山の角を使って飛車銀両取りをかけたほうがまさったようだ。ちなみに、永瀬と佐々木勇気七段は幼馴染で、現在も研究会を行っている。永瀬といえば対局中にバナナを食べることで有名だが、佐々木勇気七段によれば現在はシャインマスカットが好みらしい。もしかしたら、そのうちバナナにとって代わるかも?

【第6局】藤井聡太棋聖VS阿部光瑠六段


阿部光瑠六段VS藤井聡太棋聖

第5局は佐藤が粘りに粘って増田を破り、チームとして2勝目を挙げた。第6局は2回目の藤井―阿部戦になり、作戦会議で斎藤は「永瀬さんを温存ですか」と分析している。
作戦について「振り飛車でいこうかと。(振り場所は)そのときの気分で」と阿部は話していたが、先手で角交換振り飛車に構えた。藤井が桂得を果たしてペースをつかむも、阿部が玉頭から嫌味をつけた。

【第2図は▲6六金まで】

第2図で△8六飛と攻め合うのは、△8九飛成とできないのでやや迫力に欠ける。実戦の△2五歩が好手だった。2四に桂を打つスペースを作った意味で、得した桂を玉頭に有効に使おうとしている。実戦は▲4五歩△2四桂▲4四歩△3六桂と進み、先手玉の薄さが響いて藤井よしがはっきりした。
局後のインタビューでは、次のように答えている。
「開き直って反撃したのがよかった」(藤井)
「実戦的には藤井さんに嫌がらせできているかなと思ったが、そのあとに自分が(△2四桂を)うっかりしちゃってダメにしてしまって、反省ですね」(阿部)
藤井は予選で広瀬章人八段に2連敗スタートだったが、次の羽生善治九段戦に2連勝、本戦で3連勝と結果を出している。AbemaTVトーナメントを2連覇した実力を発揮し、チーム勝利まであと1勝に迫った。

【第7局】増田康宏六段VS佐藤天彦九段


増田康宏六段VS佐藤天彦九段

追い込まれた天彦チーム。佐藤が「これまで読まれているということで迷ったんですが」といいながら選んだのは、自分自身だった。ここまで斎藤、佐藤、阿部の順に繰り出していたことを考えると斎藤かと思いきや、リーダーが自らチームのピンチに立ち向かう。そして佐藤の相手は増田が登場し、3回目の対局となった。
戦型は相掛かりで、第5局と同一局面から増田が先に変化して、リードを奪う。佐藤の必死の粘りに手を焼いたが、受けの妙技で突き放した。

【第3図は△3八飛まで】

第3図の飛車打ちに、▲4八歩△同竜▲同金△同飛成▲5八銀△5九銀▲6九玉としのぐ。玉引きで有効な王手が先手玉に続かず、対する後手玉は▲2一角打からの詰めろがかかっている。佐藤は△3一金と手を戻すも、これで再び先手に手番が回った。増田は後に▲4九歩△3八竜▲5九玉と銀さえも取り払い、盤石の勝利で5勝目を決めた。
「チームで勝ち星がないのは自分だけだったので、勝てて突破も決めてよかったです」(増田)
「増田さんとの三連戦ということで、勝ち越しはしたんですけどチームは負けてしまったので、最後の将棋もちゃんとチャンスが少ない将棋になってしまったので、内容的には致し方ない結果かなと思います」(佐藤)
チーム天彦は企画『リーダー天彦が考案! まさかのプレゼント交換お買い物企画★本編対局でもそのプレゼントが出現宣言!』https://abema.tv/video/episode/288-23_s20_p40で互いに選んだネクタイを本戦でも身に着けてチームの結束を誓ったが、斎藤と阿部が波に乗れないまま終わってしまったのが痛かった。チーム天彦の敗退により、予選を1位で突破したチームはすべて姿を消した。
チーム永瀬は藤井の3連勝が大きく、二冠を保持する永瀬を温存したまま準決勝に進んだ。次はチーム康光「レジェンド」と決勝進出を懸けて対戦する。

【最終結果】
第1局 藤井◯-●斎藤
第2局 増田●-◯佐藤
第3局 藤井◯-●阿部
第4局 永瀬◯-●斎藤
第5局 増田●-◯佐藤
第6局 藤井◯-●阿部
第7局 増田◯-●佐藤
総合  5勝 - 2勝

【個人成績】
永瀬二冠 1-0
藤井棋聖 3-0
増田六段 1-2
佐藤九段 2-1
斎藤八段 0-2
阿部六段 0-2

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AbemaTVトーナメント

紋蛇

ライター紋蛇

2012年より、ネット中継に携わる。担当局で一番長い中継が2013年3月の第71期順位戦C級1組の森けい二九段-近藤正和六段戦で、持将棋の末指し直しとなり、終局時刻は翌日の朝5時40分。「中継は体力だ」と痛感している。

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