チーム渡辺VSチーム三浦の準決勝、いきなりリーダー対決!~生放送振り返り~

チーム渡辺VSチーム三浦の準決勝、いきなりリーダー対決!~生放送振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年08月07日

*前回の記事:本戦1回戦 チーム永瀬VSチーム天彦 振り返り

 第3回AbemaTVトーナメント。8月1日に放映されたのは準決勝第1試合のチーム渡辺(渡辺明二冠、近藤誠也七段、石井健太郎六段)対、チーム三浦(三浦弘行九段、本田奎五段、高野智史五段)の対抗戦である。

【第1局】渡辺明二冠VS三浦弘行九段

第1局でいきなり渡辺―三浦のリーダー対決が実現。渡辺の先手から相居飛車の力戦となったが、中盤で渡辺がリードする。だが三浦の懸命な粘りもあり、形勢は二転三転。最後は三浦が抜け出してチーム三浦が白星スタート。


オーダー部屋で局面を振り返るチーム渡辺

局後、オーダー部屋に戻ってきた渡辺が「どうやるんだった?」と問いかけた時、近藤が「▲2三金入らないで、単に▲2二歩だったら優勢だったのでは」と返したのが第1図の局面である。

【第1図は△5六角まで】

金取りに角を打たれた局面から、実戦は▲2三金△同角▲2二歩△同玉▲3四銀△2五歩と進んでいるが、第1図で単に▲2二歩だと△同玉に▲4一飛成が成立する。この手を指摘された渡辺は思わず「ブーッ」と吹き出していた。▲4一飛成に△同銀は▲3三銀△同桂▲2三飛成△3一玉▲3三金で後手玉が受けなしになる。また▲4一飛成に△3四角は▲3一銀△3三玉▲5二竜で先手勝勢だ。

【第5局】近藤誠也七段VS高野智史五段

第2局は近藤が本田を破ってチーム成績をタイに戻す。第3局は高野が石井を破ったが、第4局で渡辺が本田を下してのデッドヒートが続く。「黒星先行でも2、4回戦を勝てているのはいい展開」とは4局目を終えた時の渡辺の言葉だ。

改めて五番勝負の形式となり迎えた第5局は近藤―高野戦。角換わりから迎えたのが第2図の局面である。

【第2図は△1三同香まで】

ここで近藤は▲3五歩と突いた。この時点で持ち時間は近藤が2分ちょっとなのに対し、高野は4分以上残している。勝負所とみたか、高野はここで40秒ほど考慮時間を投資した。
実はこの▲3五歩は緩手である。局後にオーダー部屋で渡辺から「△8四桂打たれたらどうするの?」と問いかけられた近藤は返答に窮していた。代えて▲1四歩と香取りに打つべきだったか。
だが、高野が指した△3五同歩がまずかった。▲1四歩に△同香とは取れないからだ。▲1三角~▲2四角成がある。▲1四歩からは△3七馬▲1三歩成△4八歩成▲5七金△4二玉▲1四角と進み、先手が優勢になった。


近藤誠也七段VS高野智史五段

▲3五歩には渡辺の指摘通り△8四桂、あるいは歩を取るにしても△3五同銀ならば(前述の▲2四角成がない)、後手が指せていた。
第5局を終えて、初めてチーム渡辺が白星を先行させた。チーム三浦は第6局でタイに戻すべく、リーダーが二度目の出陣となったが、石井が序盤の作戦負けを跳ね返しての逆転勝ち。決勝進出へ王手をかけた。

【第7局】近藤誠也七段VS高野智史五段


チーム三浦の作戦会議室

第7局は近藤―高野戦。先後を含めて第5局と同一カードである。今度は角換わりではなく相矢倉となり、先手の近藤が端を突破して後手矢倉を崩壊させれば、高野も△8六桂の矢倉崩しを炸裂させて、手に汗握る終盤戦となった。

【第3図は▲8二角成まで】

明暗を分けたのは最終盤の第3図。ここで後手が△8二同銀と馬を取ったため、▲6二角成△同玉▲7二飛△5三玉▲5一竜から即詰みに打ち取られてしまったが、第3図で△6一金ならば勝負はどう転んだかわからなかった。対して▲6五桂は△4四玉で捕まらないし、また▲8一馬と桂を外して▲7三角成をみるのは△6二銀という順がある。この瞬間、先手は後手に角金銀を持たれると自玉に即詰みが生じるので、角取りを催促されると対策が難しいのだ。


チーム渡辺が5勝2敗で決勝進出。準決勝では3連勝、本戦トータルではここまで5勝0敗と負けなしの近藤について「順調に期待に応えていただきました」と渡辺リーダー。
事前に、決勝進出を果たすと所司一門グッズを作ることを公約に掲げていたが、

渡辺「実現しちゃいましたね、何作るか考えますか。普通に指したら扇子でしょ」
近藤「扇子で。一門が多いので全員の名前が入った」
石井「扇子か、あるいは夏なのでタオルとかもいいかも」

どのようなグッズが誕生するかにも注目したい。

次回は8月8日に放映予定。チーム永瀬(永瀬拓矢二冠、藤井聡太棋聖、増田康宏六段)対チーム康光(佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段)の一戦をどうぞお楽しみに。

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AbemaTVトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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