Abemaドリームチーム予選突破となったか?~予選Dリーグ3回戦・チーム広瀬VSAbemaドリームチーム振り返り~

Abemaドリームチーム予選突破となったか?~予選Dリーグ3回戦・チーム広瀬VSAbemaドリームチーム振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2020年07月04日

*前回の記事:予選Dリーグ3回戦・チーム広瀬 VS Abemaドリームチーム 事前特集

 6月27日に放映された第3回AbemaTVトーナメントの予選Dリーグ3回戦、チーム広瀬対Abemaドリームチームの団体戦の模様をお送りする。
 先鋒、中堅、大将は以下の通り。

先鋒 青嶋未来六段―三枚堂達也七段
中堅 黒沢怜生五段―羽生善治九段
大将 広瀬章人八段―鈴木大介九段

【先鋒戦】青島未来六段VS三枚同達也七段

がけっぷちのAbemaドリームチームだが、先鋒戦の第1局は三枚堂が先勝し望みをつなぐ。続く第2局は後手の青島が四間飛車から穴熊に潜った。第1図はその中盤で「形勢は先手がいいかもしれないが、先手の手が見えにくい局面」と解説を担当する橋本崇載八段。実戦はここから▲4三角△6八桂成▲同金△4一飛と進み、さらに▲3二角成△6一飛▲4三馬△4一飛と千日手の可能性が出てきた。青嶋は「ここでは苦しいと思っていたので、千日手なら十分の勝負手」という。

【第1図は△7六桂まで】

 実戦はさらに▲3二馬△6一飛▲4三馬△4一飛と進み、ここで▲5五桂と三枚堂が打開したが、この打開順がまずかったか。以下△7四銀▲9三歩成△同桂▲7二歩△同金上▲5二馬△5九角と進んでみると、後手玉は穴熊の遠さが生きているのに対し、先手玉は▲6八金と寄っても、△8五桂~△7六香の順が猛烈に厳しい。

 ▲5五桂では▲9五桂の打開策がまさった。対して△4三飛は▲8三桂不成△同銀▲同香成で先手勝ち。桂打ちには△7四銀打と8三を補強することになるが、やはり8三の地点で清算してから▲9三銀と打ち込めば先手に分があった。

第3回AbemaTVトーナメント予選

 逆転勝ちの青嶋は、続く第3局も勝利。この時点でチーム広瀬の予選通過とAbemaドリームチームの予選敗退が決まった。「2局目で踏みとどまれなかったことに、自分の弱さがある」と三枚堂は振り返った。

【中堅戦】黒沢怜生VS羽生善治九段

第3回AbemaTVトーナメント予選

 中堅戦。第1局は黒沢が得意の先手中飛車を採用。「手応えがつかめ、良い将棋が指せた」と振り返り、終盤でも好手を放った黒沢が先勝。先後を入れ替えた第2局は羽生が序中盤でリードを奪う。黒沢も「反省点が多い一局、力戦になったのがよくなかった」と振り返る。

【第2図は△5三玉まで】

 第2図はその終盤で、▲4一角に△5三玉と寄った局面。直前の先手必勝モードと比べると、ここはやや怪しくなっていると橋本八段。実戦は以下▲5二角成△4四玉▲4五歩△3三玉と進む。
 ▲5二角成では▲5二銀成がまさったか。対して△4四玉には▲2三角成と成れるのが大きい。また▲5二銀成に△6三玉ならば▲8八銀と受けておけばよい。△同銀成▲同玉の局面は、先手に飛車を渡すと自玉が簡単に詰むため、後手は指す手に困っている。
 △3三玉に対する▲2二歩が敗着。これは後手玉の詰めろになっていないため、代えて▲8八銀と受けておけば難しかった。実戦は△6九飛成▲同金引△同竜に▲4三馬から詰ましにかかったが、黒沢が正確に応対し、2連勝。 「この将棋は勝たなければいけなかった。呆れてます」と局後に羽生は嘆息した。

【大将戦】広瀬八段VS鈴木九段

 チーム広瀬の勢いは止まらず、大将戦でもリーダーが第1局を制勝。そして第3図は第2局の終盤だ。

【第3図は▲6八金まで】

秒に追われた鈴木は△5三銀と自陣に打ち付ける。執念を思わせる一着だが、ここでは△6七銀や△4八歩成と敵陣に迫る方がよかった。実戦は▲5三同金△同桂だが、そこでの▲6四歩△同金▲6二歩が絶品の順である。後の▲4四銀~▲5三銀不成をより厳しくしている。後手は受けることが難しく、また先手の穴熊の遠さも大きい。以下は数手で鈴木が駒を投じた。

第3回AbemaTVトーナメント予選

 広瀬は予選の1日を振り返って「こんなに出来の良い日は二度とない。ただ、一度は振り飛車穴熊を指したかったが、指す余裕がなかった」と語った。

 予選Dリーグ3回戦が終わった結果、チーム広瀬がプラス7ポイントで1位通過を決めた。プラス3ポイントのチーム永瀬が続く。
 決勝トーナメントを果たしたのは以下の8チームとなる。
チーム久保 久保利明九段、菅井竜也八段、今泉健司五段(予選Aリーグ1位)
チーム天彦 佐藤天彦九段、斎藤慎太郎八段、阿部光瑠六段(予選Bリーグ1位)
チーム糸谷 糸谷哲郎八段、高見泰地七段、都成竜馬六段(予選Cリーグ1位)
チーム広瀬 広瀬章人八段、青嶋未来六段、黒沢怜生五段(予選Dリーグ1位)
チーム三浦 三浦弘行九段、本田奎五段、高野智史五段(予選Aリーグ2位)
チーム渡辺 渡辺明三冠、近藤誠也七段、石井健太郎六段(予選Bリーグ2位)
チーム康光 佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段(予選Cリーグ2位)
チーム永瀬 永瀬拓矢二冠、藤井聡太七段、増田康宏六段(予選Dリーグ2位)

 7月4日(土)からいよいよ決勝トーナメントが生中継で始まる。予選を勝ち抜いた8チームいずれも精鋭揃いだ。果たしてどのチームが優勝するのだろうか?放送をどうぞお楽しみに。

■ABEMAプレミアムで公開中 予選の動画一覧はこちら>>

予選Aリーグ:
予選Aリーグ第一試合<チーム豊島 VS チーム久保>
予選Aリーグ第二試合<チーム豊島 VS チーム三浦>
予選Aリーグ第三試合<チーム久保 VS チーム三浦>

予選Bリーグ:
予選Bリーグ 第一試合<チーム天彦 VS チーム稲葉>
予選Bリーグ 第二試合<チーム渡辺 VS チーム天彦>
予選Bリーグ 第三試合<チーム渡辺 VS チーム稲葉>

予選Cリーグ:
予選Cリーグ 第一試合<チーム康光 VS チーム糸谷>
予選Cリーグ 第二試合<チーム木村 VS チーム糸谷>
予選Cリーグ 第三試合<チーム康光 VS チーム木村>

予選Dリーグ:
予選Dリーグ第一試合<チーム永瀬 VS チーム広瀬>
予選Dリーグ第二試合<チーム永瀬 VS Abemaドリームチーム>

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AbemaTVトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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