ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年11月02日
若手棋士の登竜門である新人王戦と加古川青流戦が決着。どちらも初の棋戦優勝と成りました。竜王戦は挑戦者が2連勝で、竜王名人に近付いています。
【第1図は▲6八金まで】
第1図は第32期竜王戦七番勝負第2局(▲広瀬章人竜王△豊島将之名人)。相掛かりからお互いにバランスの良い陣形を組む展開になりました。後手が駒損ながら竜を作る展開に。図で△6四桂が「桂は控えて打て」の好打。先手からの▲6四歩も消しており、攻めだけではありません。実戦は▲4七玉と上がって△5六桂を受けましたが、△2七歩成と玉の近くにと金を作って後手好調です。最後は終盤の混戦を制し、豊島名人が2連勝となりました。
竜王戦中継ブログより
【第2図は△2二角まで】
第2図は第41期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負第2局(▲里見香奈女流王将△西山朋佳女王)。里見女流王将が居飛車で、西山女王の三間飛車を迎え撃ちました。端を破って先手優勢の終盤戦です。ここで▲6九香が「下段の香に力あり」で、6筋にさらに圧力を加えていきます。以下△5三金に▲5六銀でさらに駒得が見込める展開となりました。里見女流王将が快勝で、シリーズは最終第3局へともつれ込みました。
【第3図は▲3六同玉まで】
第3図は第50期新人王戦決勝三番勝負第2局(▲増田康宏六段△高野智史四段)。相掛かりから双方一分将棋の熱戦となった終盤です。先手玉は詰まず、攻防手が求められる局面で、△3四歩が「敵の打ちたいところへ打て」。角を支えて先手玉に詰めろを掛けながら、▲3三桂成の後に3四に打つスペースを消した決め手です。玉の接近戦は勢力争いが何よりも大切になります。
【第4図は▲2五歩まで】
第4図は第50期新人王戦決勝三番勝負第3局(▲増田庸宏六段△高野智史四段)。先手が雁木から右玉に構え、後手は中央を手厚くして対抗しました。図は後手優勢の局面で、角取りですが慌てることはありません。当たりに当たりを重ねたと言われる手で、「両取り逃げるべからず」です。△5六歩が先手玉の急所をついた攻め。後手は角を取られても銀を取られても、もう一方は手順に逃げることができるため問題ありません。高野四段が押し切り、逆転で初の棋戦優勝を決めています。
初の棋戦優勝を決めた高野四段 新人王戦中継ブログより
【第5図は▲5三とまで】
第5図は第9期加古川青流戦決勝三番勝負第2局(▲服部慎一郎三段△池永天志四段)。池永四段が第1局を勝ち、迎えた第2局です。後手の急戦矢倉を迎え撃った局面で、駒の損得はありませんがと金が強大で「5三のと金に負けなし」です。後にこのと金で後手の金をはがすことに成功して先手がはっきり優勢となり、そのまま押し切りました。
【第6図は△5一角まで】
第6図は第9期加古川青流戦決勝三番勝負第3局(▲池永天志四段△服部慎一郎三段)。ここから▲6五歩が4六角を生かした攻めで「角筋は受けにくし」です。以下△5二金▲6四歩△3四銀▲5四歩△7三角▲7五歩と、しつこく角のラインで攻めてポイントを重ねていきました。6~8筋でリードを拡大した後は鋭く寄せに出て、一気に先手が押し切りました。池永四段は嬉しい棋戦初優勝です。
棋戦初優勝した池永四段 加古川青流戦中継ブログより
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段