ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2019年10月31日
増田康宏六段が最多タイの3度目の優勝を果たすか、高野智史四段が初優勝を手にするか。若手棋士の登竜門を制するのはどちらになるか注目の集まった第50期新人王戦決勝三番勝負。
【第1図は△5四歩まで】
第1局は高野が先手となり相掛かりに。お互いにバランスの良い構えにするのが現在の流行だ。増田が桂を捨てて飛車角交換に持ち込んだ中盤戦。第1図から▲2七角と自陣角を放つ。さらに△7五歩▲8六歩△8四歩に▲9八角と二枚の自陣角で防戦。増田が攻め、高野が受けに回る棋風通りの展開だ。以下も長い戦いとなったが、攻めをつないだ増田が勝って三番勝負を先勝。3度目の優勝に近付いた。
対局開始前の様子
先勝した増田六段
【第2図は▲6五桂まで】
第2局は先後を入れ替えて再び相掛かり戦に。駒損ながら歩の枚数でまさる増田がペースをつかんだものの、高野も辛抱してチャンスを待つ。少しずつ差が詰まり、流れが後手に傾いてきたのが第2図。ついつい5三の地点を受けたくなってしまうが、△5四銀が攻めを催促する強い受け。▲5三銀△同金▲同桂右成△同角右▲同桂成△同角で、局面をさっぱりさせることに成功した。形勢はまだ難しいところもあるが、最後は高野が詰めろ逃れの詰めろを決めて勝利。三番勝負は1勝1敗のタイに。増田は過去の2回は2連勝で決めていたので、決勝三番勝負では初黒星となる。
第2局は高野四段の勝利
【第3図は▲6八金右まで】
第3局は増田が先手となり雁木を目指す。以下は右玉に構えて、後手の高野は矢倉の出だしから中央を厚くしていく。難しい戦いだったが、厚みをうまく生かした後手が形勢をリードする。図は駒損ながら、急所に歩の拠点が刺さって後手が勝勢だ。ここから△5五銀打が厚みを生かす好防の決め手。先手の角の利きを止めながら△5六桂の攻めも狙っている。以下▲2五歩△3五銀▲8八角に△4六銀左と出て押しつぶした。
高野は1局目に敗れた後の連勝で逆転優勝。嬉しい初の棋戦優勝となった。新人王を獲得するとタイトルホルダーとの記念対局が組まれるが、ご存じの通り師匠(木村一基王位)も先日タイトルを獲得したばかり。師弟戦が見られる可能性もある。
初の棋戦優勝をはたした高野四段
*画像は新人王戦中継ブログより
ライター渡部壮大