ライター渡辺弥生
嵌め手満載の「横歩取り△4五角戦法」の基本を押さえよう!【第1回 奇襲戦法】
ライター: 渡辺弥生 更新: 2018年08月01日
「横歩取り△4五角戦法」の幕開け
高段者でも内心「やられたら困る」と頭を悩ませる、そんなとんでもない嵌め手満載の「横歩取り△4五角戦法」。今回はその基本的な狙い筋をご紹介します。奇襲戦法とは言っても、実際プロのタイトル戦で指されたこともあります。そして、現在プロの間で数多く指されている横歩取り3三角戦法を指す上で、この△4五角戦法を知っておくことは先手側にとってある意味必須です。
まずは横歩取り戦法の出だしを見ていきましょう。
初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛(第1図)。
【第1図は▲3四飛まで】
横歩取り△4五角戦法は横歩取り後手番の戦法。お互いの角がぶつかったまま飛車先をどんどん伸ばしていきます。先手が▲3四飛(第1図)と横歩を取って戦型が「横歩取り」に決まります。この▲3四飛は油断のならない一手で、次に▲2二角成と角を交換されると、△2二同銀は▲3二飛成、△2二同金は▲3一飛成でたちまち後手が敗勢となってしまいます。(参考図1)
【参考図1】
一見すると意味不明?恐ろしい△4五角の狙い
一歩かすめ取られた上に、また受けなきゃならないの?心配無用。▲3四飛と歩を取った瞬間、先手は飛車の位置が不安定。そこを狙って動くのが横歩取り△4五角戦法です。
第1図以下の指し手
△8八角成▲同銀△2八歩▲同銀△4五角(第2図)。
【第2図は△4五角まで】
まず△8八角成と角を交換し、▲同銀に△2八歩と打ち捨てます。この△2八歩が肝要な一手。理由は次回ご説明します。△2八歩に▲7七角が気になるところですが、△7六飛と寄っておけば、▲1一角成には△7八飛成と金を取れるので大丈夫です。△2八歩▲同銀にいよいよ狙いの△4五角の登場です。
さて中空に放った△4五角、飛車取りなのは一目瞭然ですが一見すると意味がわかりませんね。まずは▲3五飛と角に当てて飛車を逃げた場合を見てみましょう。結論を先に書いてしまうと、単純に何も考えず先手が指していると、いっぺんに敗勢となってしまいます。
第2図以下の指し手
▲3五飛△6七角成▲同金△8八飛成(第3図)。
【第3図は△8八飛成まで】
△6七角成のタダ捨てが狙いの強手。▲8七歩には△7八馬▲8六歩△8八馬の二枚換えで後手良しです。先手は△6七角成を▲同金と応じるよりありませんが、△8八飛成と銀桂取りに飛車を成りこんだ局面は後手優勢です。第3図、▲6八金と引く手には△8九竜▲6九歩に△9九竜と香を取り、△6四香を狙うのがわかりやすいでしょう。(参考図2)
【参考図2】
強手!歩頭の飛車捨て
さて、後手が△4五角と打った第2図に戻りましょう。△4五角に▲3五飛は一方的に攻め込まれて先手が面白くありません。△4五角には▲2四飛と飛車成りを見せながら飛車を逃げるのが正しい応手で、後手にとっても一番怖い手になります。
(※実を言いますと、最新の研究では▲3五飛という手も見直されています。▲3五飛△6七角成▲7七角!といった手順です。この後、難しい変化となりますが、先手も指せそうなことが分かってきました。但し、ここでは、読者を初級者という前提で進めておりますので、この変化は割愛させていただきます。)
▲2四飛には一旦△2三歩と受けるのが良い手です。▲2四飛になおも△6七角成と飛び込むのは▲同金△8八飛成が銀取りにならず、▲2一飛成と攻めあいにこられて後手も容易ではありません。
まず先手が△2三歩に▲8七歩と打ち返してきた場合を見てみましょう。
第2図以下の指し手
▲2四飛△2三歩▲8七歩△7六飛▲7七歩△6六飛▲同歩△7八角成(第4図)。
【第4図は△7八角成まで】
▲8七歩に飛車を取り合うのでは角を手放している後手が面白くありません。ここでも強く攻めあいます。▲8七歩に△7六飛と寄り、▲7七歩に△6六飛と歩頭に飛車を捨てるのが驚きの一手。この△6六飛に▲8四飛は△6七角成▲同金△同飛成が、次に△5七竜▲5八金△4八金からの詰めろで後手優勢です。△6六飛に▲6八玉も△6七飛成▲同金△2四歩で、以下▲8五飛の角桂取りには△6九飛▲同玉△6七角成が詰めろ飛車取りで技ありです。(参考図3)
【参考図3】
△6六飛を▲同歩と取った第4図も飛車銀取りが残り後手有利。▲8四飛には一旦△8二歩と受けておき、次に△8八馬~△8九馬と銀桂を取るのがわかりやすいでしょう。銀桂を持てば△5六桂▲同歩△5七銀が厳しい寄せとなります。
△2三歩に▲8七歩では少し弱気だったようです。次回は△2三歩に先手最強の応手、▲7七角と打つ手を解説したいと思います。