ライター一瀬浩司
プロの実戦から学ぶ6筋位取りの注意点と発展形とは?【玉の囲い方 第38回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年06月21日
前回のコラムでは、対振り飛車における「6筋位取り」の組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。
それでは、6筋位取りに組むまでの手順の復習です。初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲5七銀、▲6六歩、▲6五歩、▲6八銀上、▲6七銀(第1図)。【第1図は▲6七銀まで】
それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点
第2図をご覧ください。
【第2図は▲6五歩まで】
いま先手が▲6五歩と6筋の位を取ったところです。え? これまでに読んだ通り6筋の位を取ったのになにがいけないの? そう思われるかもしれません。それでは、第2図を見てなにも問題がないと感じた方は、第2図から後手が△5四銀と出てきたらどう対応するか考えてみてください。次に△6五銀と歩を取られてしまったらなんのために6筋の位を取ったのかわかりませんね。こんな序盤早々に、なんの代償もなく歩をタダ取りされるわけにはいきません。
では、6五の歩を守ることを考えてみましょう。現状では、▲7七桂と桂を跳ねて守るしかありませんよね? でもそれでは8八の角が非常に使いづらくなってしまいます。ではなにがいけなかったのか? 右銀を5七に上げる前に6筋の位を取ってしまったことが問題でした。
もし、第2図の▲6五歩に代えて▲5七銀と上がり、△7二銀となったあとで▲6五歩と位を取れば、そこで△5四銀なら▲6六銀(第3図)と形よく位を守ることができます。
【第3図は▲6六銀まで】
さらに第3図からは、次に▲5五歩と突けば△4三銀と引かせることができます。もちろん、後手の銀が3二や3一の場合は5七に銀が上がっていなくても▲6五歩と位を取っても問題はありませんが、すぐに5四に出れる形の場合は注意が必要です。それでは、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形
第4図をご覧ください。
【第4図は△9四歩まで】
平成25年7月31日、第22期銀河戦予選、▲上村亘四段ー△宮田敦史六段戦(肩書は当時)です。上村四段は△5四銀と上がった手に対し、▲6六銀と右銀で位を守った後に▲6八銀~▲6七銀と6七銀型に組み、▲7七角~▲8八玉~▲7八金と8八へ深く玉を囲いました。
さて、第4図までにいたるところで、上村四段はいつでも▲5五歩と突いて、△4三銀と後手の銀を後退させることができました。後手に二手損させることができますし、すぐ突きたくなるところですが、なぜ上村四段は突かなかったのでしょうか? それは第4図からの次の一手でわかります。
▲5七銀! と6五の歩の守りを放棄して銀を引くことが狙いでした。実戦でも△6五銀と歩を取られてしまいましたが、▲3三角成△同桂▲7七角△4三飛▲2四歩と、歩損の代償に2筋を突破することができました。続いて第5図です。
【第5図は▲6六銀まで】
平成24年5月15日、第25期竜王戦昇級決定戦5組、▲熊坂学五段ー△遠山雄亮五段戦(肩書は当時)です。熊坂五段は6筋の位を取った後、▲7七角~▲8八玉~▲7八銀と左美濃に組みました。このように、6筋の位を取ったあとに左美濃に組む指し方も玉が堅く、有力な作戦となります。6筋の位を取った後はさまざまな組み方がありますが、ぜひ皆さまもいろいろと試して自分好みの形を見つけてみてください。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。