ライター一瀬浩司
対振り飛車における「5筋位取り」の注意点と発展形とは?【玉の囲い方 第36回】
ライター: 一瀬浩司 更新: 2018年06月08日
前回のコラムでは、対振り飛車における「5筋位取り」の組み方をご紹介しました。今回は、組む際の注意点と発展形を見ていきましょう。それでは、5筋位取りに組むまでの手順の復習です。
初手から▲7六歩、▲2六歩、▲4八銀、▲5六歩、▲6八玉、▲7八玉、▲5八金右、▲9六歩、▲2五歩、▲3六歩、▲6八銀、▲5七銀左、▲5五歩、▲5六銀(第1図)。
【第1図は▲5六銀まで】
それでは、まずは組む際の注意点を見ていきましょう。
組む際の注意点
第2図をご覧ください。
【第2図は△4五歩まで】
いま▲5五歩と突いた手に対して、後手が△4五歩と伸ばしたところです。▲5六銀と上がるのでは、4六の利きがなくなるため、△4六歩から飛車先を交換されてしまいます。かといって、▲3七銀と上がってから▲5六銀とするのは、3七の銀が中途半端な感じがしますし、銀がいるため3七へ桂を跳ねることもできません。
では、第2図は先手が困っているのか? そうではありません。4筋交換が見えていますが、堂々と▲5六銀と上がるのが正解です。このままですと、▲5七銀~▲3七桂とすれば4五の歩をタダ取りできますね。後手も△4三銀~△4四銀として4五の歩を守りたいのですが、△4三銀の瞬間に飛車の利きが止まるので、▲4五銀と歩をタダ取りすることができます。よって、後手も△4六歩と突いてきますが、▲同歩△同飛に▲5七銀(第3図)が好手です。
【第3図は▲5七銀まで】
ん? ▲4七銀上じゃなくて▲5七銀? 第3図は△4九飛成と成られちゃうじゃない。こう思われる方も、もちろん多いことでしょう。
しかし、第3図は誤植ではありません。△4九飛成には▲4八銀と引くとどうでしょうか? 4九の竜が身動きできませんよね。次に▲5九金引(寄)として竜を殺す手が、どうやっても後手は防ぐことができません。よって、後手は△4二飛や△4一飛と引いてきますが、▲4五歩とすれば、5筋に続いて4筋の位も取ることができ、とても手厚い陣形になりました。
▲5五歩の瞬間に△4五歩は気になる手ですが、構わず▲5六銀としてしまえば、後手の動きを逆用することができます。よって、△4五歩を恐れることはありません。では、次に囲いの発展形を見ていきましょう。
囲いの発展形
第4図をご覧ください。
【第4図は▲6七金右まで】
▲6六歩~▲6五歩と一歩交換をして、▲6七金右と上がったところです。6筋の歩を交換したので、終盤で飛車を打ち込まれた際に▲6九歩と金底の歩で堅く受けることができます。また、6七の歩がいなくなったので、第4図のように6七に金を上がって上部を厚くすることもできました。
しかし、第4図から後手に△6五歩と位を取られる手が気になる方もいるでしょう。ですが、▲7七桂△6四金▲6六歩△同歩▲同銀(第5図)となれば、△6五歩と打たれても▲同桂△同桂▲同銀右△同金▲同銀で先手の数が多いですし、第5図から▲6五歩と打つことができれば、とても手厚い形になりますね。
【第5図は▲6六同銀まで】
また、第4図の▲6七金右に代えて▲6七金直もあります。以下▲7七桂~▲6六銀とした後に▲7九角と引く手が狙いです。機を見て▲2四歩と仕掛けたり、▲5七角~▲6八金寄として角の位置を転換したりします。7七に桂を跳ねてしまうと角が8八なら活用は見込めませんが、5七に移動させれば2四と3五や、7五と玉頭方面にも利いてきて、とてもよい位置になります。
玉の囲い方
監修杉本和陽四段
1991年生まれ、東京都大田区出身。2017年4月に四段。師匠は(故)米長邦雄永世棋聖。バスケットボールを趣味とする。ゴキゲン中飛車を得意戦法とする振り飛車党。