渡辺明棋王VS永瀬拓矢七段、棋王戦第1局の裏側をご紹介!とちぎ将棋まつりではご当地アイドル「とちおとめ25」も登場?

渡辺明棋王VS永瀬拓矢七段、棋王戦第1局の裏側をご紹介!とちぎ将棋まつりではご当地アイドル「とちおとめ25」も登場?

ライター: 山口絵美菜  更新: 2018年02月19日

第43期棋王戦五番勝負が開幕しました!共同通信社が主催し、契約新聞社(棋譜掲載紙)の地元を転戦する棋王戦五番勝負。今年で創刊140周年を迎える下野新聞社が主催のもと行われた第1局の舞台は栃木県宇都宮市。

栃木県でタイトルを奪取して以来同所では負け無しの渡辺明棋王に、初めて栃木を訪れた永瀬拓矢七段が挑みます。今回は棋王戦第1局と、同時開催された「とちぎ将棋まつり 2018」の模様を合わせてお届けします!

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振り駒の模様。撮影:吟

今年で9回目の開催となる「とちぎ将棋まつり」。今年は佐藤康光日本将棋連盟会長(九段)・中村修九段・深浦康市九段・戸辺誠七段・松本佳介六段・片上大輔六段・甲斐智美女流五段・藤田綾女流二段、そして私、山口絵美菜と、運営にも携わる北尾まどか女流二段が出演しました。

故・永沢勝雄八段(戦後再開された順位戦に参加せず現役を引退)の出身地である栃木県ですが、現在は栃木県出身の現役棋士・女流棋士はいないため「栃木からプロ棋士を!」という熱意溢れるボランティアの方々が毎年運営をされている一大イベントです。

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撮影:山口絵美菜

1,000人を超える過去最高数のファンの方々にご来場いただき、会場は大盛り上がり。開会式を終え、まずは佐藤会長と藤田女流による「棋王戦ミニ解説」。振り駒の結果、先手番になった渡辺棋王が矢倉に組み、後手の永瀬七段が雁木に構えた局面で「矢倉は終わったかどうか」についてや、序盤の駒組についての解説が行われました。

続く「激突!女流棋士対決」は甲斐女流五段・藤田女流二段・私の3人による初手から一手30秒の早指しトーナメント。「優勝者には金一封が贈られますので頑張ってください!」という激励のもと、初戦は藤田女流二段と私が対局しました。

栃木在住の奨励会員・長谷部浩平三段による振り駒の結果、私が先手となり、戦型は向かい飛車対三間飛車の相振り飛車へ。戸辺七段と甲斐女流五段による軽快な解説の一方、勝負はもつれ1時間を越える熱戦になり、終局後すぐ決勝戦が始まりました。

決勝戦は、甲斐女流五段と勝ち上がった私の対戦となり、先手の甲斐女流五段が三間飛車、後手の私が向かい飛車に振って再び相振り飛車に。片上六段と藤田女流二段の解説のもと、30秒の秒読みに苦しみながら甲斐女流五段の猛攻を必死に受け止め続けましたが、最後は的確に寄せられて投了。勝利した甲斐女流五段が優勝となりました。

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決勝戦は、甲斐女流五段と本コラムの筆者・山口女流1級の勝負に!撮影:吟

表彰式の後は午前中最後のプログラム「どうぶつしょうぎ講座」。私が講師を勤め、栃木県のご当地アイドル「とちおとめ25」に生徒役で登場していだだきました。「とちおとめ25」は栃木県の名産で収穫量日本一のいちご「とちおとめ」に、夏でも食べられるようにと開発された「なつおとめ」の品種番号「栃木25号」を掛け合わせたネーミング。平均年齢16歳というフレッシュな4人のメンバーが赤と緑を基調とした、いちご感溢れる衣装で登場しました。

どうぶつしょうぎのルールを一緒に学んだ後は「大人組(ももか・あかね)」と「子供組(きらり・ひかり)」に別れて「どうぶつしょうぎペア対決」。メンバーは「どうしよう~わかんない!」と頭を抱えながらも、真剣な表情で対局していました。子供組が勝利目前の局面になると「本当にその手でいいの??」と大人組からプレッシャーがかかる場面もありましたが、子供組がトライを果たし見事勝利を収め、会場が拍手に包まれました。

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ご当地アイドル「とちおとめ25」の皆さんと一緒に記念撮影。

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どうぶつしょうぎで対局する、とちおとめ25の皆さん。撮影:山口絵美菜

そして午後からは深浦九段と藤田女流二段による大盤解説が開始。金銀四枚を引き付けた堅陣から繰り出される渡辺棋王の攻めを永瀬七段が渋く受けるという展開を前に「これは後手苦しいんじゃないかなぁ...」と早い終局を予想する声も聞こえました。

続いて解説は松本六段と弟子で栃木在住の鹿野隼人奨励会6級にバトンタッチ。柔らかな口調ながらもビシバシと見解を述べる松本六段と緊張でなかなか言葉が出てこない鹿野6級の師弟解説を前に穏やかに見守る時間が流れました。

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棋王戦第1局の大盤解説会の模様。解説と聞き手が交代で行なわれた。撮影:吟

メインステージだけでなくサイン会や指導対局、物販ブースも大にぎわい。午前中に行われた佐藤会長のサイン会では最後尾がどこかわからないほどの長蛇の列ができるほどで、指導対局では戸辺七段が11面指しを行うなど、たくさんの方にお楽しみいただきました。

一方大盤解説には立会人の中村九段と甲斐女流五段が登場し「みなさん、ずっと見続けるのは大変でしょうから、今を休憩時間と思っていいんですよ~」と、穏やかなテンポで解説が進められました。続いて戸辺七段と現在三段リーグ首位の長谷部奨励会三段がマイクを握り、中盤を迎えた局面についてテンポよく解説が進むなか、戸辺七段が「持ち時間を家にもって帰りたくないよね」と切り出し、持ち時間を余して負けることについての話題が展開されました。

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取材本部で局面を検討する中村九段と戸辺七段。撮影:吟

そうこうするうちに棋王戦の局面は混沌。渡辺棋王の鋭い攻めに「棋王の快心譜では」という控え室の評判も、永瀬七段がしぶとく受け続け上部に脱出するという展開を前に「持将棋になる...?」と危ぶむ声へと変わり始めました。

大盤解説には次々と棋士が登壇し、局面の解説やモニターに写し出された対局室の様子について話を広げていきます。決め手を与えない永瀬七段の受けの妙技に舌を巻きつつも、じりじりと勝利を手繰り寄せる渡辺棋王の指し回し。

さすがに勝負あったか...と思われる場面もありましたが、中段に鎮座し大駒の利きで守られ、なかなか寄せが見えない永瀬玉。だんだんと雲行きが怪しくなっていき「これは入玉確定か?」と一気に色めき立つ会場。逆転の可能性が高まる終盤戦へ。

秒に追われながらも難解な局面を切り開き、入玉に望みをかける永瀬七段。するすると逃げていく玉を猛追し、巧みに包囲網を敷いていく渡辺棋王。誰もが手に汗握るなか、ついに渡辺棋王が必死の粘りを振りきり、自陣まで歩みを進めてきた永瀬玉を詰みに撃ち取って、初戦を制しました。

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終局後の模様。渡辺棋王が勝利し、宇都宮での無敗記録を伸ばした。撮影:吟

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戸辺七段、甲斐女流五段と一緒に記念撮影する山口女流1級。

渡辺棋王に不倒の永瀬七段が挑む棋王戦五番勝負。盤上で繰り広げられる死闘から目が離せないシリーズになりそうです。注目の第2局は2月24日(土)、石川県金沢市を舞台に行われます!

山口絵美菜

ライター山口絵美菜

1994年5月生まれ、宮崎県出身の女流棋士。2017年に京都大学文学部を卒業し、在学中に研究した『将棋の「読み」と熟達度』を足掛かりに、将棋の上達法を模索している。
将棋を覚えるのが遅かったため「体で覚えた将棋」ではなく「頭で覚えた将棋」が強くなるには?が永遠のテーマ。好きな勉強法は棋譜並べ。

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