ライター池田将之
石本さくら女流2級の見事なデビュー戦。丁寧な指しまわしで、きっちり勝ち切る【プロの技】
ライター: 池田将之 更新: 2017年03月28日
今回は石本さくら女流2級のデビュー戦を紹介します。昨年12月21日に行われた船戸陽子女流二段との第44期岡田美術館杯女流名人戦予選の対局です。石本女流2級はアマチュア時代にリコー杯女流王座戦で本戦に進出した実績があります。予選では、第3期でなんと、タイトル経験者である甲斐智美女流四段を破りました。
本局、先手になった石本女流2級は三間飛車から石田流に構えました。第1図は後手が△4四銀と上がったところです。
【第1図は△4四銀まで】
先手はここから▲3六歩△5五歩に、勢いよく▲6五桂と跳ねました。以下△6四歩なら▲7三桂成△同桂▲7四歩で戦えます。
畠山七段は、▲3六歩から▲6五桂について「非常に実戦慣れしいていることがうかがえる」と話します。図ですぐに▲6五桂もありますが、桂を渡す可能性が高いので、あらかじめ▲3六歩と突いて△3五桂の筋を消しているのです。
第2図は飛車角交換が行われ、△5六歩と突かれたところです。
【第2図は△5六歩まで】
本譜は以下▲同銀△7九飛▲9七香と進みました。畠山七段は先手の二手を「形に明るいですね」と言います。本来は、形よく▲5六同歩としたいところですが、将来△5七歩とたたかれる筋が気になります。▲9七香も簡単に駒を取らせない落ち着いた一手です。
第3図は先手優勢で迎えた終盤です。
【第3図は△3三同歩まで】
ここから▲3四歩△同歩▲1四歩△同歩▲1三歩△同香▲2五桂として、一気に穴熊を攻略しました。畠山七段は「見事なデビュー戦でした。寄せ方もきれいですし、タイトル戦の舞台で戦う姿を一日でも早く見たいです」と期待を寄せました。
これがプロの技!
2010年からフリーライターとして活動開始。2015年まで将棋連盟モバイル中継記者。現在は新聞社に観戦記、将棋世界で「関西本部棋士室24時」などの記事を執筆している。
監修畠山鎮七段
棋士・七段
1969年6月生まれ。1989年、プロ棋士となる。関西奨励会の幹事を長きにわたり務め、現在の若手関西棋士の育成に貢献。 棋風は居飛車党で、攻め将棋を得意としている。著書に「横歩取りの教科書」「これからの相矢倉」(マイナビ出版)などがある。
1969年6月生まれ。1989年、プロ棋士となる。関西奨励会の幹事を長きにわたり務め、現在の若手関西棋士の育成に貢献。 棋風は居飛車党で、攻め将棋を得意としている。著書に「横歩取りの教科書」「これからの相矢倉」(マイナビ出版)などがある。