ライター池田将之
村田智弘六段による「8三桂成」。西川和宏六段との戦いの中で、王手銀取りを選ばなかった理由は?【プロの技】
ライター: 池田将之 更新: 2017年01月31日
村田智弘六段は関西研修会、西川和宏六段は関西奨励会の幹事を務めています。未来の棋士を育てる2人が11月2日のC級2組順位戦で戦いました。村田将棋の特徴は、筋がよいにもかかわらず形を気にしない力強さです。奨励会のころから詰将棋を解くのが非常に早かったですね。
西川六段は中学3年生のときに6級で奨励会に入りました。それで四段になった人は珍しく、本当に努力の人です。奨励会の苦しさを知っているので後輩の面倒見がとてもよいですね。優しい人柄ですが、将棋は妥協を許しません。
【第1図は△4三角まで】
戦型は後手が向かい飛車に構えました。第1図は先手の攻めを後手がしのごうとしている局面です。仁王立ちの5六金はまさに村田流ですね。
ここで▲8三桂不成なら王手銀取りです。以下△8二玉▲7一桂成△同玉で先手が悪いわけではありません。けれど△8七歩▲同金△9五桂のような反撃が生じているのが気になります。
本譜で村田六段は、▲8三桂成としました。不成が自然なだけに、これはなかなか指せない手です。以下△8二歩なら▲5二歩が手筋です。△同角は▲9二成桂△同玉▲2一飛成(参考図)で先手よし。△8二歩と打たせているので前述の反撃を心配しなくてすみます。
【参考図は▲2一飛成まで】
実戦は▲8三桂成に△4二銀と投入しましたが、▲2一飛成△同角▲8四桂が鋭い踏み込み。次いで△8二飛▲9二桂成△同飛▲同成桂△同玉▲4五香(第2図)で後手は収拾困難になりました。後手は銀を手放してしまったので△8七歩の反撃に今度は迫力がありません。今回は、関西研修会幹事の村田六段の快勝譜となりました。
【第2図は▲4五香まで】
これがプロの技!
監修畠山鎮七段
1969年6月生まれ。1989年、プロ棋士となる。関西奨励会の幹事を長きにわたり務め、現在の若手関西棋士の育成に貢献。 棋風は居飛車党で、攻め将棋を得意としている。著書に「横歩取りの教科書」「これからの相矢倉」(マイナビ出版)などがある。