ライター池田将之
糸谷八段-山崎八段の同門対決。兄弟子である、山崎八段の「△1二角」が勝負を決めた!【プロの技】
ライター: 池田将之 更新: 2016年12月20日
同門対決はいつの時代も、弟弟子の猛攻を兄弟子が真っ向から受ける展開がつきものです。11月10日のB級1組順位戦、糸谷哲郎八段-山崎隆之八段の同門対決は兄弟子の山崎八段が貫禄を見せました。両者は広島県の同郷で森信雄七段門下です。2人が前回対戦したあとはバーで一緒に飲んでいました。本当の兄弟のように仲がよいですね。
本局が行われた日は、このコーナーの監修をしている畠山鎮七段も関西将棋会館で対局していました。順位戦では初対戦ということもあり、特に糸谷八段は朝から非常に楽しみというか、うれしそうな雰囲気だったそうです。
後手の山崎八段が横歩取りに誘導しました。第1図は糸谷八段が▲3一飛成としたところです。既に終盤戦の入り口なのですが、先手はまだ1時間も使っていません。先手は次に▲2三歩△同金▲2一竜を狙っています。
【第1図は▲3一飛成まで】
ここで山崎八段が受けの底力を見せます。△1二角が攻防の好手です。前述の▲2三歩を受けただけでなく6七の地点を睨み、将来の反撃を含みにしています。糸谷八段はそこで▲3四歩と突けなかったのが誤算だったようです。つまり、以下△5一金▲2五歩△1五角▲1六歩に、△4八角成▲同金△3二金(参考図)で飛車を捕らえて後手が優勢になるからです。先手は居玉なので飛車打ちに弱い形です。
【参考図は△3二金まで】
実戦は△1二角に▲7七桂としましたが、△6二玉▲6五桂△3二金▲5一銀△同金▲5三桂成に△6一玉(第2図)がギリギリの凌ぎです。先手は▲4二成桂と飛車を取りましたが、△3一金▲同成桂に△8六歩▲同歩△8八歩と反撃した後手の快勝となりました。
【第2図は△6一玉まで】
これがプロの技!
監修畠山鎮七段
1969年6月生まれ。1989年、プロ棋士となる。関西奨励会の幹事を長きにわたり務め、現在の若手関西棋士の育成に貢献。 棋風は居飛車党で、攻め将棋を得意としている。著書に「横歩取りの教科書」「これからの相矢倉」(マイナビ出版)などがある。