女流棋士の熱き戦い!6つのタイトルを知って女流棋戦を楽しもう

女流棋士の熱き戦い!6つのタイトルを知って女流棋戦を楽しもう

ライター: 直江雨続  更新: 2016年09月30日

華やかな袴姿に身を包んだ女性2人が真剣な表情で将棋盤に向き合い、盤上では苛烈な攻め合いが繰り広げられる。戦いの様子を余すことなく伝える中継ブログや白熱する盤上の指し手が即座に反映される棋譜中継。

持ち時間が短めなので、スピーディに進行する序盤、残り時間を気にしながらの長考合戦も見られる中盤、そして手に汗握る終盤戦。強さと美しさを兼ね備えたトップ女流棋士の戦いは、将棋界の花形と言えます。特にタイトル戦が行われる6つの女流公式棋戦は将棋ファンなら知っておいて絶対に損はありません。

  • マイナビ女子オープン
  • リコー杯女流王座戦
  • 岡田美術館杯女流名人戦
  • 女流王位戦
  • 霧島酒造杯女流王将戦
  • 大山名人杯倉敷藤花戦

今回、この6つの女流公式棋戦について、それぞれの特徴や開催時期などを解説していきます。女流棋士たちの対局を観て楽しむための予備知識として、ぜひ覚えておきましょう。

タイトルホルダーは『女王』!マイナビ女子オープン

例年4月から6月にかけて『女王』の座を懸けたタイトル戦五番勝負が行われるのがマイナビ女子オープンです。

『女王』のタイトル保持者と、前年からの予選・本戦トーナメントを勝ち抜いた挑戦者によって五番勝負でタイトルを争います。マイナビ女子オープンは「女子オープン」の名前の通り、女流棋士だけではなく、アマチュアの女性、女性奨励会員にも出場枠があります。アマチュア女性、女性奨励会員もプロアマ混合の予選「チャレンジマッチ」に出場可能です。また、予選が公開一斉対局で行われることも大きな特徴の一つです。将棋ファンにとって、間近で対局を見られる貴重なチャンスとなっています。

マイナビ女子オープンは2007年に創設された、現在2番目に新しい棋戦です。2016年の現在、第10期の本戦トーナメントが進行中となっています。タイトルホルダーである加藤桃子女王は、第7期に里見香奈女王(当時)からタイトルを奪取。第8期は上田初美女流三段の挑戦を3勝1敗で防衛。第9期は室谷由紀女流二段の挑戦を3勝1敗で防衛し、現在三連覇中となっています。なお、加藤桃子女王は女流棋士ではなく、奨励会に所属しプロ棋士を目指している女性奨励会員です。

  • 主催 マイナビ
  • 中継サイト マイナビ女子オープンin将棋情報局
  • 優勝賞金500万円
  • 持ち時間 予選 30分、本戦・五番勝負 各3時間(チェスクロック使用)
  • 第9期女王 加藤桃子

jyoryu_02.jpg

紅白のリーグで挑戦者を決定!女流王位戦

女流王位戦のタイトル戦は例年5月から6月にかけて行われています。この棋戦の特徴は紅白2ブロックのリーグ戦を戦い、紅白の優勝者が挑戦者決定戦を行うという点です。予選はトーナメントで行い、その勝ち上がり者とシード棋士6人により、紅白それぞれ6名ずつのリーグ戦を行います。つまり、女流王位戦のリーグは毎年12名しか入れない狭き門なのです。女流王位戦のリーグを戦い、成績が下位の3名はリーグから陥落し、来年再び予選からの出場となります。リーグに残留できるかどうかもまた、この棋戦では重要なポイントです。なお、この棋戦はアマチュアの出場枠はなく、女流棋士のみが参加となっています。

女流王位戦の創設は1990年。2016年の今年行われた第27期女流王位戦五番勝負は里見香奈女流王位に岩根忍女流三段が挑戦しました。結果は3勝0敗のストレートで里見女流王位の防衛となりました。里見女流王位はこれで二連覇となりました。現在は次の第28期の予選が始まっています。女流王位リーグ入りをかけた熾烈な戦いは始まったばかりです。

  • 主催新聞三社連合:北海道新聞・東京新聞・中日新聞・神戸新聞・徳島新聞・西日本新聞
  • 中継サイト 女流王位戦中継サイト
  • 優勝賞金 非公開
  • 持ち時間 予選 各2時間リーグ戦 各3時間、タイトル戦 各4時間
  • 第27期女流王位 里見香奈

jyoryu_04.jpg

スピーディなTV棋戦!霧島酒造杯女流王将戦

女流王将戦は本戦トーナメントとタイトル戦三番勝負がすべてTVで放送される棋戦です。そのため、持ち時間は各25分で切れたら40秒以内に指すという、早指し対局となります。出場枠としては、女流棋戦タイトルホルダー、女流棋士、選抜されたアマチュア女性となっています。予選をトーナメントで行い、 その通過者とシード者、あわせて16人で本戦トーナメントを行います。タイトル戦は10月ごろに行われます。例年、タイトル戦の第1局は宮崎県都城市にある霧島創業記念館「吉助」が対局場となります。

女流王将戦は1978年に創設された、女流タイトル戦では2番目に古い歴史を持つ棋戦となります。昨年、第37期女流王将戦三番勝負では、三連覇を狙う香川愛生女流王将(当時)に里見香奈女流名人・女流王位(当時)が挑戦し、2連勝で女流王将のタイトルを奪取しました。そして今年、香川愛生女流三段が本戦トーナメントを勝ち上がり、挑戦者として再びタイトル戦の舞台に登場することとなりました。里見VS香川というカードでの女流王将戦三番勝負はこれが3度目となります。果たしてどちらが勝つのか、注目の第一局は10月1日に行われます!

  • 主催株式会社囲碁将棋チャンネル・協賛霧島酒造株式会社・協力BTVケーブルテレビ株式会社(旧 都城ケーブルテレビ)
  • 中継サイト 囲碁・将棋チャンネル
  • 優勝賞金 非公開
  • 持ち時間 挑戦者決定トーナメント・三番勝負 各25分、切れたら40秒
  • 第37期女流王将 里見香奈

jyoryu_05.jpg

世界最強を決める戦い!リコー杯女流王座戦

女流王座戦の特徴はアマチュア予選を開催し、一次予選にアマチュア枠を設けている点と、『海外出場枠』がある点です。海外で活躍しているアマチュア女性による『海外招待選手選抜大会』を行い、優勝者に一次予選への『海外出場枠』での参加が認められます。また女性奨励会員もこの棋戦に出場可能となっています。つまり、この棋戦は文字通りの意味で、世界一将棋の強い女性を決める棋戦と言えます。また、女流王座戦の優勝賞金は500万円で、マイナビ女子オープンと並び、女流棋戦の最高峰となっています。タイトル戦は五番勝負で例年10月から12月にかけて行われます。

リコー杯女流王座戦は2011年創設で、女流のタイトル戦としては最も新しい棋戦です。2016年の今年は第6期となり、すでに加藤桃子女流王座への挑戦者は里見香奈女流四冠に決定しています。タイトル戦五番勝負の第1局は10月26日に「シェラトングランドホテル広島」で行われます。現在女流六大タイトルのうち、4つを里見、2つを加藤が分け合っている図式。まさに最強対最強の究極のカードです。この注目の五番勝負は絶対に見逃せませんね!

  • 主催株式会社リコー・特別協力日本経済新聞社
  • 中継サイト リコー杯女流王座戦中継サイト
  • 優勝賞金500万円
  • 持ち時間一次予選 各40分(チェスクロック使用)、二次予選 各3時間(チェスクロック使用)、本戦・決勝五番勝負 各3時間
  • 第5期女流王座 加藤桃子

jyoryu_01.jpg

倉敷市で行われるタイトル戦!大山名人杯倉敷藤花戦

倉敷藤花戦は主催が「倉敷市・倉敷市文化振興財団・山陽新聞」ということで、市が主催している棋戦です。倉敷市出身の大山康晴十五世名人の功績を讃え、倉敷市芸文館の開館に合わせて1993年に創設されました。そのため、例年タイトル戦三番勝負の第2局と第3局は倉敷市で行われ、第2局の午後は公開対局となります。この棋戦では全女流棋士とアマチュア女性2名によるトーナメントで挑戦者を決定します。また、例年、トーナメントのうちの1対局が、大山将棋記念館がある青森県おいらせ町で行われています。

倉敷藤花戦は1993年に創設され、今年は第24期となります。里見香奈倉敷藤花の挑戦者を決める第24期大山名人杯倉敷藤花戦の挑戦者決定戦が9月28日(水)に行われ室谷由紀女流二段が挑戦者に決まりました。

  • 主催 倉敷市・倉敷市文化振興財団・山陽新聞
  • 中継サイト 大山名人杯倉敷藤花戦中継
  • 優勝賞金 非公開
  • 持ち時間 各2時間(チェスクロック使用)
  • 第23期倉敷藤花 里見香奈

jyoryu_06.jpg

最も伝統のある女流棋戦!岡田美術館杯女流名人戦

女流の六大タイトルのうち、一番長い歴史を持つのが女流名人戦です。1974年に誕生し、今年2016年は第43期が進行中です。アマチュアの出場枠はありません。全女流棋士で予選トーナメントを行い、その通過者4名と前期の残留者6名による『女流名人リーグ』を戦い、最上位者が女流名人に挑戦します。なお、女流名人リーグの最終9回戦は一斉対局として行われます。A級順位戦の最終局にならい、『女流棋界の一番長い日』と呼ぶ人もいます。女流名人への挑戦者とともに、女流名人リーグ陥落者もこの日決まるとあって、将棋ファンにとっては注目の一日なのです。タイトル戦の五番勝負は例年1月から2月にかけて行われます。

女流名人戦は2009年の第36期以降、里見香奈女流名人が七連覇中となっています。第43期となる今年は9月現在、女流名人リーグが進行中です。誰が挑戦者となるのか、そして里見香奈女流名人の八連覇を阻止することができるのでしょうか。

  • 主催 報知新聞社 ・特別協賛株式会社ユニバーサルエンターテインメント
  • 中継サイト 女流名人戦中継サイト
  • 優勝賞金 非公開
  • 持ち時間 タイトル戦 各3時間、リーグ戦・予選 各2時間
  • 第42期女流名人 里見香奈

jyoryu_03.jpg

6つある女流公式棋戦をご紹介しました。

予選方式の違いやアマチュア枠の有無など、それぞれの棋戦に特徴があります。また、公開対局のあるマイナビ女子オープンやTV棋戦である女流王将戦など、ファンにとっては観る楽しみが多い棋戦も存在しています。美しくも苛烈な女流棋士の熱い戦いをぜひご覧ください!

*写真は女流王座戦中継ブログマイナビ女子オープン中継ブログ女流名人戦中継ブログ女流王位戦中継ブログ倉敷藤花戦中継ブログより引用

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています