ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2025年01月14日
棋王戦五番勝負の挑戦者は増田康宏八段に。大舞台に初登場です。2年連続で同じカードとなった銀河戦の決勝戦は丸山忠久九段が連覇を果たし、銀河戦における最年長優勝記録をさらに更新しました。
【第1図は△5二同玉まで】
第1図は第50期棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第1局(▲増田康宏八段△斎藤明日斗五段)。先手が快調に攻めており、あとはどう決めるか。▲5三歩成△同飛▲6一銀が「玉は下段に落とせ」の的確な寄せ。△同玉▲5三馬△6二銀▲3一飛△5一桂▲5四歩とつないで、下段に落とされた後手玉は粘るのが難しい格好です。以下も押し切って増田八段が挑戦権を獲得し、藤井聡太棋王に挑みます。
写真:八雲
【第2図は▲8八同銀まで】
第2図は第32期銀河戦決勝戦(▲藤井聡太竜王・名人△丸山忠久九段)。銀河戦は2年連続で同一カードとなりました。角換わり腰掛け銀から先手が押していましたが、一瞬のスキを突いて逆転。△4五角が「要の金を狙え」の厳しい一手。先手は受けに適した駒がありません。▲5七金と受けましたが、△7八角成▲同玉△7六銀と押さえ、厳しい寄せを続けた後手が勝ち切っています。54歳の丸山九段は2連覇で、銀河戦の最年長優勝記録を更新しました。
写真:常盤秀樹
【第3図は▲3四桂打まで】
第3図は第38期竜王戦ランキング戦1組(▲森内俊之九段△郷田真隆九段)。桂の王手で対応が複数あり、悩ましい局面です。実戦の△3四同銀▲同桂△3三玉が「桂頭の玉寄せにくし」の応手です。銀は渡しましたが、図で△1二玉や△3一玉とかわすよりも寄りにくい形です。以下▲4六銀の勝負手にも△同銀▲同玉△5四桂から迫り、2九の飛車を取って自玉を安全にしながら勝ち切りました。レジェンド同士の本局が、移転前の東京・将棋会館における最後の一局となっています。
写真:睡蓮
【第4図は▲3七同歩まで】
第4図は第52期女流名人戦予選(▲川又咲紀女流初段△中七海女流三段)。堅い陣形で攻勢を取り、後手優勢の終盤戦です。△3六歩▲同歩△2四桂が「桂は控えて打て」の急所の攻め。▲2五銀と桂先の銀で受けますが、△5五角から後手好調の攻めが続きました。三段リーグの経験もある大型新人が、白星発進です。
写真:飛龍
【第5図は△8七竜まで】
第5図は棋士編入試験五番勝負第4局(▲西山朋佳女流三冠△宮嶋健太四段)。後手は先手の攻め駒を責めて粘り強く指しています。▲2六香△8五竜▲5一角成が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。1筋が素通しなのは怖いのですが、先手玉はまだ安全なので寄せの形さえ作ってしまえば勝ちに近付きます。実戦は△8二竜と受けましたが、▲2三香成△同玉▲4一馬の寄せが厳しく、先手勝勢となりました。これで2勝2敗となり、合否は最終第5局の結果で決まることとなりました。
写真:武蔵
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段