チーム永瀬VSチーム稲葉 ABEMAトーナメント2024~決勝戦振り返り~

チーム永瀬VSチーム稲葉 ABEMAトーナメント2024~決勝戦振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2024年09月20日

ABEMAトーナメント2024、9月14日(土)に放映されたのは決勝戦の、チーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢九段、増田康宏八段、森内俊之九段)対チーム稲葉「井上一門」(稲葉陽八段、藤本渚五段、上野裕寿四段)の対戦だ。永瀬リーダー対稲葉リーダーの決勝というのは昨年に続くカードであり、増田八段も2年連続でチーム永瀬の一員としての決勝進出となった。昨年はチーム永瀬が5連勝という圧巻の成績で優勝を果たしたが、今年はどうだろうか。
また個人賞の争いも白熱している。すでに三枚堂達也七段の予選最高成績賞(5勝0敗、勝率1.000)と、山本博志五段の敢闘賞(初参加の棋士中で最高勝率が受賞対象。4勝2敗、勝率0.667)は確定しているが、その他3つの賞は決勝開始の時点で未確定だった。
可能性があるのはそれぞれ
最多勝
 永瀬拓矢九段 10勝1敗
 藤本渚五段 9勝3敗

最高勝率賞
 永瀬拓矢九段 0.909(10勝1敗)
 藤井聡太竜王・名人 0.889(8勝1敗)

最多対局賞
 藤本渚五段12局(9勝3敗)
 永瀬拓矢九段 11局(10勝1敗)
 上野裕寿四段 11局(6勝5敗)
 森内俊之九段 10局(6勝4敗)

というメンバーである(数字は準決勝終了時点)。

1局目 森内俊之九段─上野裕寿四段

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振り駒の結果、第1局はチーム永瀬の先手番に。対戦カードは▲森内―△上野戦で、戦型は相矢倉となる。

【第1図は△5八飛成まで】

森内が徐々にリードを広げて迎えたのが第1図だ。ここからの▲6七銀打△5九竜▲7七角打△5七竜▲5八歩が絶対に負けないという順で、△5四竜と引かせて自玉を安泰にしてから▲2三桂成と寄せに出て勝利。チーム永瀬が連覇に向けて幸先のいい白星を飾った。

2局目 永瀬拓矢九段─藤本渚五段

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続く第2局は永瀬―藤本戦。チーム成績だけでなく個人賞も占う大一番はなんと293手で持将棋に。一時は藤本が必勝の局面もあったが、永瀬の執念が実った形だ。

【第2図は▲6四銀まで】

第2図が成立局面で、後手は24点でギリギリ持将棋を満たしている。解説の佐藤紳哉七段も熱戦ぶりを称えていた。そして指し直し局は藤本が勝利し、チーム成績をタイに戻した。また永瀬が1敗したことで、この時点で藤井竜王・名人の最高勝率賞が確定した。

第3局は▲増田―△上野戦で、相掛かりの将棋を上野が制した。

4局目 永瀬拓矢九段─稲葉陽八段

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続く第4局は▲稲葉―△永瀬のリーダー対決となる。

【第3図は▲4六銀まで】

第3図は角取りに銀が上がった局面だ。ここで△4六同角と角を見切ったのが好判断。▲同飛に△3五金が用意の切り返しである。▲7六飛は△4五金で二枚換えの後手が十分だ。稲葉は飛車を逃げず▲3三桂不成と飛び込んだが、△4六金▲2一桂成△同金▲4六角に△3六歩が好手で後手の攻めが続く形になった。桂馬をはがされたとはいえ後手の穴熊はまだ堅く、対して先手陣は2枚利いているとはいえ3七の地点に駒を打ち込まれると支えきれない。

これでチーム成績は2勝2敗、個人賞も11勝2敗の永瀬と10勝3敗の藤本が拮抗している。ただ残りの対局が1局の永瀬に対し、藤本は2局残しの状況だ。果たして、第5局では藤本が森内に勝ち、勝利数でも永瀬に並んだ。さらに第6局では永瀬が上野に敗れる。

7局目 稲葉陽八段─増田康宏八段

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第7局は▲増田―△稲葉で、横歩取りの急戦に進む。

【第4図は▲3三香成まで】

第4図からの△9七角が好手で、以下▲4三成香△7九角成▲同金△9八飛▲7八金打△8八銀の進行は後手勝勢である。最後はリーダー自らがチームの優勝を手繰り寄せた。またチーム稲葉としての優勝は一昨年に続く2回目の優勝となった。稲葉リーダーは「今日は頼もしい弟弟子の2人が頑張ってくれたので、最後は自分で決めたかった。(井上一門として)師匠に優勝を報告できるのはうれしいです」と述べた。

また最多勝利賞は藤本と永瀬が11勝で、最多対局賞は藤本と永瀬と上野が14局で並んだが、チーム成績と勝率の関係で、藤本のダブル受賞となった。「凄くうれしいです。個人賞はそこまで意識していたわけではありませんが、たくさん指し、勝つことで、チームに貢献できました」と受賞についての感想を語った。
ABEMAトーナメント2024はチーム稲葉の優勝で幕を閉じた。引き続きABEMAの将棋チャンネルでは新たな企画が進行中であるので、将棋ファンの皆様は楽しみにお待ちいただきたい。

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【総合成績】
第1局 上野●-○森内(第1局はチーム永瀬が先手番。以下は交互)
第2局 藤本○-●永瀬(持将棋指し直し)
第3局 上野○-●増田
第4局 稲葉●-○永瀬
第5局 藤本○-●森内
第6局 上野○―●永瀬
第7局 稲葉○―●増田

総合5勝―2勝

【個人成績】
稲葉八段1-1
藤本五段2-0
上野四段2-1
永瀬九段1-2
増田八段0-2
森内九段1-1

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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