西山が女王7連覇 5月上旬の注目対局を格言で振り返る

西山が女王7連覇 5月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年05月22日

叡王戦は伊藤匠七段が2勝目をあげ、藤井聡太叡王を追い込んでいます。マイナビ女子オープンは西山朋佳女王が3連勝で防衛し、7連覇を達成。竜王戦では山下数毅三段が6組で決勝に進出し、5組へ昇級の快挙を果たしました。

第82期名人戦七番勝負第3局

【第1図は△2二歩まで】

第1図は第82期名人戦七番勝負第3局(▲藤井聡太名人△豊島将之九段)。後手の雁木に対し、先手は棒銀から攻め掛かっています。単に▲2三歩も見えるところですが、実戦の▲1六角が「遠見の角に好手あり」でした。4三の銀と6一の金をにらんでいるので△5二金と受けますが、飛車の横利きを止めた意味もあります。以下▲2三歩△3一玉▲2二歩成△同金▲2三銀不成と攻めて先手ペースに。1六の角は後に3八へと転換して働き、先手の快勝になりました。

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写真:田名後健吾

第9期叡王戦五番勝負第3局

【第2図は▲2七同銀まで】

第2図は第9期叡王戦五番勝負第3局(▲藤井聡太叡王△伊藤匠七段)。角換わり腰掛け銀から先手の押している将棋でしたが、後手の猛攻を受けきれずに逆転。後手が優位に立ちました。図は終盤で勝ち方は色々あるところですが、△1五桂が「敵の打ちたいところへ打て」の決め手。1五から王手をされる筋を消せば詰み筋や好防手の心配もありません。実戦は△1五桂で投了となりました。これで挑戦者の2勝1敗に。タイトル戦無敗の藤井叡王は追い詰められました。

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写真:翔

第17期マイナビ女子オープン五番勝負第3局

【第3図は△5八角まで】

第3図は第17期マイナビ女子オープン五番勝負第3局(▲西山朋佳女王△大島綾華女流二段)。相穴熊から先手が強く踏み込んで終盤戦に突入しました。ここで飛車取りを受けるようでは△2五角成が手厚い形ですが、▲3五歩と「終盤は駒の損得より速度」で踏み込みます。△7六角成▲3四歩は駒損でも後手玉が薄く先手優勢。よって△2三銀と引きましたが、▲4三歩成△5一角とさらに利かしが入ったので、▲6七歩と手を戻してこれも先手優勢です。本局は快勝で西山女王が3連勝。7連覇を達成しました。

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写真:牛蒡

第35期女流王位戦五番勝負第2局

【第4図は▲8六桂まで】

第4図は第35期女流王位戦五番勝負第2局(▲加藤桃子女流四段△福間香奈女流王位)。急戦から居飛車が好調な攻めでペースをつかみましたが、振り飛車も粘り強い指し回しで勝負していきます。当然ながら△8五銀が「桂先の銀定跡なり」の受け。▲9四桂△同銀に▲5九香が「下段の香に力あり」のようでしたが、△5八歩と叩かれて効果が薄く、以下は後手の逆転勝ちとなりました。

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写真:生姜

第37期竜王戦6組ランキング戦

【第5図は△9五歩まで】

第5図は第37期竜王戦6組ランキング戦(▲山下数毅三段△井出隼平五段)。△9五歩は「3歩持ったら端攻め」の通りの勝負手で、▲同歩は△9八歩から連打して攻められます。手抜いて▲1一と△9六歩▲9八歩が好判断で、端は詰められても飛車を成っての攻め合い勝ちを目指しました。本局を勝った山下三段は6組決勝進出で5組昇級の快挙。6組優勝すれば次点を獲得(進行中の三段リーグで降段点を取らないことが条件)できるため、決勝はプロ入りの掛かった大一番です。

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写真:胡桃

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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