大島がタイトル初挑戦 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

大島がタイトル初挑戦 3月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年03月19日

 棋王戦は藤井聡太棋王の終盤力が光り、2連勝としています。マイナビ女子オープンでは若手の大島綾華女流二段が挑戦権を獲得。新たな風を起こせるでしょうか。

第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

【第1図は△3八歩成まで】

 第1図は第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局(▲藤井聡太棋王△伊藤匠七段)。角換わりから先手が攻勢を取り、後手が受ける展開でしたが図は先手優勢ですが、△4八とが間に合う前に寄せ切る必要があります。▲5五香が単純な数の攻めながら厳しい一着。△5四歩と突かせて▲6四桂△6一玉▲5四香△同銀▲5三桂成△同銀▲7二金と流れるような寄せが決まりました。「玉は下段に落とせ」の形を実現できれば寄り筋に入ります。勝った藤井棋王は2勝0敗(1持将棋)とリードしました。

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写真:八雲

第17期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦

【第2図は▲6八銀まで】

 第2図は第17期マイナビ女子オープン挑戦者決定戦(▲北村桂香女流二段△大島綾華女流初段)。互いにタイトル初挑戦の懸かった本局は意表の横歩取りになりました。先手は自陣の角で何とか長引かせてチャンスを待とうとしています。狭いところですが△8八飛と打ち込みました。▲5三角成に△5七歩▲6七玉△6九飛▲7八金△5八歩成で後手の攻めが決まり、勝ち筋です。「二枚飛車に追われる夢を見た」と言うくらい、二枚の飛車を使った攻めは強力です。勝った大島女流初段は大舞台に初登場で、二段に昇段も決めました。

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写真:牛蒡

第35期女流王位戦挑戦者決定戦

【第3図は△5二玉まで】

 第3図は第35期女流王位戦挑戦者決定戦(▲加藤桃子女流四段△伊藤沙恵女流四段)。駒得の先手が優勢ですが、自陣の角の働きがいま一つなのは不安なところです。▲5九金が「金は引く手に好手あり」で、角にヒモを付けて飛車打ちに備えつつ、4九角の利きを通す味の良い一着でした。実戦は△7五銀に▲8五歩△7四飛▲7六歩と角を生かして後手の攻めを受け止めてリードを拡大しています。勝った加藤女流四段は第31期以来、4年ぶりの女流王位戦五番勝負登場です。

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写真:生姜

第82期順位戦B級1組

【第4図は▲2三角成まで】

 第4図は第82期順位戦B級1組(▲屋敷伸之九段△増田康宏七段)。先手が2筋からの突破を試みましたが、後手にうまい対応がありました。△2七歩▲同飛△2五歩▲同飛△2四歩▲同馬に△2二香がしのぎの手筋。▲2三歩に△2四金▲同飛△3三銀▲2八飛△2七歩(▲同飛は△3四角)で2筋を収めることに成功しました。「大駒は近付けて受けよ」で、先手を取って受けています。以下は数手で先手の投了となり、増田七段がA級昇級と八段昇段を決めました。

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写真:生姜

伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定リーグ紅組

【第5図は△2二歩まで】

 第5図は伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(▲佐々木大地七段△藤本渚四段)。激闘の終盤戦ですが、形勢は先手良し。▲8七玉が「玉の早逃げ八手の得あり」です。8六の金にヒモを付けながら、△4八竜が王手になるのを防いでいます。それでも後手は△4八竜と取るくらいですが、▲1六桂△2三金▲2四歩が厳しく、先手勝勢です。歴代最高勝率の可能性もあった藤本四段でしたが、この敗戦で事実上届かないこととなりました。

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写真:牛蒡

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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