ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2023年12月14日
里見香奈白玲に西山朋佳女流三冠が挑戦したヒューリック杯第3期白玲戦七番勝負。2年連続のカードで、昨年は里見がフルセットで奪取した。
第1局は東京都港区「グランドニッコー東京 台場」にて。相振り飛車で序盤から突っ張って前例のない激しい戦いとなる。
【第1図は▲7七桂まで】
うまく先手が手を作れるかの局面が続いていたが、△6六歩が手筋の突き出し。▲6五桂△6四銀左▲6六角に△5二金と上がって後手陣は安定した格好だ。次に△5五歩と突かれてはたまらないので▲4四角と勝負に出たが、△同飛以下冷静に差を広げていき後手快勝。里見が開幕戦を制した。
写真:琵琶
第2局は鹿児島県指宿市「指宿白水館」にて。先手の里見が中飛車から居飛車に戻してじっくりした展開になった。抜け出したのは里見だったが、西山も勝負勝負と迫っていく。
【第2図は▲9三歩成まで】
後手玉を上から押さえる形を寄り筋に入ったようだが、△5七角が豪打。▲同金なら△4八飛成で先手玉を受けなしに追い込める。実戦は▲6九玉とかわしたが、△9三角成でと金を外して激戦の終盤が続いた。最後は里見玉を捕らえて西山が1勝1敗に追い付く。
写真:夏芽
第3局は石川県金沢市「ホテル日航金沢」にて。角交換系の相振り飛車から、第1局に続いて早い戦いになる。駒得から飛車を奪い、西山が優位に立った。
【第3図は△3二同金まで】
▲8二飛が自然ながら厳しく、△6五角に▲6二銀で先手の勝ち筋に入った。以下は△4一玉に▲6一銀不成で、後手は飛車を取っている余裕がない。西山が快勝で2勝目。
写真:紋蛇
第4局は奈良県奈良市「ふふ奈良」にて。第2局に続き里見が中飛車から居飛車に戻す形に。里見がリードするものの、西山も粘り強く指して差を縮めていく。
【第4図は▲6八同香まで】
△8五銀が攻防手。後手玉は9三の地点から殺到されると危ない形だった。対して▲5九歩と手を入れたが薄い受けで、△4七歩成▲4八歩△1九竜と手駒を増やしながら後手の手が続き、最後は西山が逆転勝ちを収めた。これで第2局から一気の3連勝と追い込む。
写真:翔
第5局は京都府京都市「ザ・ゲートホテル京都高瀬川」にて。相振り飛車からじっくりとした展開になる。うまく西山の攻め手を封じて里見が模様を良くしていった。
【第5図は▲8七角まで】
先手が暴れてきたところだが、△4五銀と手に乗ってさばく。▲同金に△9七飛成▲同香△4五桂▲5四角△6三角と応じ、玉の安定度に差があって後手がはっきり優勢だ。以下は里見快勝。踏み止まって2勝目をあげる。
写真:飛龍
第6局は北海道札幌市「札幌ビューホテル 大通公園」にて。相振り飛車の出だしから先手の里見は袖飛車から急戦調で攻めていく。ポイントをあげてリードを奪い、西山の反撃の面倒を見る展開になった。
【第6図は△9七歩成まで】
後手も堅さを頼りに必死の食い付きだ。しかし、▲9七同香△同竜▲8八馬が堅い受けで、△9四竜▲9九香△9五香▲同香△同竜▲9九香△9六香▲9七歩で先手陣は崩れない。この後に慌てる場面もあったがからくも逃げ切り、3勝3敗のフルセットへ。
写真:睡蓮
第7局は東京都台東区「浅草ビューホテル」にて。振り駒で西山が先手となり相振り飛車へ。堅い陣形から攻めの形を作り、西山がペースをつかんだ。
【第7図は△8四同歩まで】
図は8四の地点に歩を合わせたところだ。▲2六歩が玉の深さを生かした継続手で、△同飛なら▲8四飛~▲5四飛が5五の角取りになる。実戦は△9五香▲2五歩△7七角成としたが、▲8四飛△8三歩に▲同桂成△同桂▲9一銀が厳しい寄せになり、先手勝勢となった。
フルセットの激闘を制し、西山が昨年のリベンジを果たした。これで8つの女流タイトルを西山、里見が4つずつ分け合う形になった。
写真:八雲
ライター渡部壮大