充実の西山女流王将に香川女流四段が挑む―霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負展望―

充実の西山女流王将に香川女流四段が挑む―霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負展望―

ライター: 相崎修司  更新: 2023年10月05日

 西山朋佳女流王将に香川愛生女流四段が挑戦する霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負が10月7日より始まる。女流王将の他、女王と女流名人の三冠を併せ持ち、また白玲戦でも奪取にあと一歩まで迫っている西山は充実期にあると言ってよいだろう。対して香川は2016年の第38期女流王将戦以来となるタイトル戦登場となる。女流王将戦は第35期から4期連続で番勝負に出場していた(獲得は第35、36期)縁の深い棋戦だ。相性のよい舞台で、久々のタイトル獲得を目指す。

 今期の女流王将戦を振り返ってみると、本戦トーナメントで香川は木村朱里女流1級、中井広恵女流六段、小高佐季子女流初段を連破して挑戦者決定戦へ進出した。逆の山では渡部愛女流三段が山根ことみ女流二段、甲斐智美女流五段、加藤桃子女流四段を破って勝ち上がっている。

【第1図は▲6四歩まで】

 香川―渡部戦となった挑戦者決定戦は後手番の香川が三間飛車に振った。第1図の局面は△2七竜と飛車を取れそうだが、それは▲4五角で後手がまずい。香川は△6四同歩と我慢し、▲4五角に△5四角と丁寧に受ける。以下▲6三歩△5二玉▲2三角成△2七角成▲7二銀△5一金▲2四馬△3三金の進行は混戦だ。最後は後手玉の入玉がほぼ確定し、穴熊の姿焼き状態で香川が渡部を投了に追い込んだ。

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写真:囲碁・将棋プラスより

 挑戦を受けて立つ西山にとっても女流王将戦は相性のよい棋戦である。初参加の第41期でいきなり挑戦を果たし、奪取。第43期では里見香奈女流五冠に奪われたが、翌年に挑戦して取り返した。第2図は西山が復位を果たした昨年の第44期第3局である。里見の先手中飛車に対し、西山は向かい飛車に振る。その後里見が2筋に振り直して、対抗形のような進行となった。中盤の入り口でリードを奪った西山が徐々に優勢を拡大して迎えた局面だ。

【第2図は▲5七銀まで】

 ここでは△8七香成が普通に見えるが、西山は△8七香不成と突っ込んだ。▲同桂は△同香成▲同玉△7五桂でよい。そして実戦の▲6八玉には△8九香成とできるのが不成の効果である。▲4六歩△7九成香▲4五歩△6九成香▲同玉△6八歩と進んで後手の勝勢がハッキリした。先手玉は寄り筋に入っている。以下数手で終局し、西山が女流王将へ復位した。

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写真:文

 改めて、今回の西山―香川戦である。過去の対戦成績は西山の7勝1敗と、圧倒的に分がいい。西山を持ち味と言えば、こん棒を振り回すとも言われる力強い攻めだが、受けの時にもその力強さは現れる。

【第3図は▲7一同飛成まで】

 第3図は前期女流王将戦準決勝の▲香川―△西山戦。この王手に対し、玉を逃げるのは▲2一竜があるし、また不用意な合い駒を打つと▲7二銀と絡まれてうるさい。よって西山の△6一飛はこの一手だ。対して▲同竜△同玉▲9一飛は△7一歩で問題ない。玉の位置を変えた効果だ。実戦は△6一飛に▲7二竜だが、△9四角が攻防手になった。以下▲3四桂△3三銀に▲5九金と手を戻すしかないのでは先手がつらい。ここから西山は△6四歩▲7三歩△7一歩▲9二竜△6二飛▲7二銀△7三金▲9三竜△7二馬と、先手の攻め駒を根こそぎ掃除した。自玉の安全をはっきりさせてから寄せに転じて勝利し、挑戦者決定戦に進出。前期の復位につなげた。

 対戦成績からすると西山に分がありそうな今期の三番勝負だが、上記の通り香川にとっては縁の深い棋戦だ。また三番勝負という短期決戦でもあるので、初戦を取って勢いをつけたいところだろう。まずは開幕の第1局に注目である。

霧島酒造杯第45期女流王将戦三番勝負第1局は、囲碁将棋チャンネルの公式YouTubeチャンネル「囲碁将棋プラス」で無料LIVE配信、また一部、囲碁・将棋チャンネルでも生放送される。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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