チーム羽生VSチーム山崎 ABEMAトーナメント2023~予選Bリーグ第一試合振り返り~

チーム羽生VSチーム山崎 ABEMAトーナメント2023~予選Bリーグ第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年05月10日

 5月6日(土)に放映された予選Bリーグ第一試合、チーム羽生「不動心」(羽生善治九段、梶浦宏孝七段、伊藤匠六段)対チーム山崎「フロンティア」(山崎隆之八段、中村太地八段、佐々木大地七段)戦の模様をお伝えする。

第1局 佐々木大地七段─伊藤匠五段

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 振り駒の結果、第1局はチーム山崎の先手番に。対戦カードは伊藤―佐々木戦となった。両者は公式戦で過去に2回対戦しているが、いずれも佐々木先手の相掛かりである。手番が一致した本局もそのように進んだ。先日、棋聖戦で初タイトル挑戦決めた佐々木だが、相掛かりはその原動力となった戦型なので、まずは双方の予想通りというところか。

【第1図は▲9五歩まで】

 中盤で佐々木の指し過ぎをとがめた伊藤が形勢をリードし、迎えたのが第1図である。先手がアヤを求めた端歩突きに対し、伊藤は構わず△8七歩▲同銀△8六歩と連打する。佐々木はさらに▲同銀と応じたが、これは一目△2六飛の両取りが気になるので指しにくいように思える。ところが△2六飛には▲3六銀があった。以下△2九飛成には▲6五角が王手竜取りになるのが▲3六銀の効果だ。非勢でも逆転のために手段を尽くすプロの指し方だ。「色々罠を張っているね、さすがだなあ」と山崎リーダー。

 伊藤もその罠を見破って、▲8六同銀に△8八歩と打った。対して▲同金はいかにも利かされである。佐々木は▲8七角と攻防に打ち(敵陣に利かせるだけではなく、将来の△7六桂に備えている)、△5四歩に▲9七桂とかわしたが、△8九歩成とと金を作ったのはやはり大きい。最終盤のこのと金の活用で先手玉を寄せた伊藤が勝利した。

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第3局 中村太地七段─羽生善治九段

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 幸先のいいスタートにチームメイトも勢いに乗ったか、2回戦では梶浦が山崎の一手損角換わりを破った。続く3回戦はリーダーの羽生が出陣し、中村との対戦。両者は過去2回のABEMAトーナメントでチームを組んだ仲でもある。開始前に中村は「いままでの大将に謀反を起こすような形で......」と笑いを誘っていた。

【第2図は△5四歩まで】

 盤上は角換わりに。攻め将棋の中村が持ち味を生かして優位に立つ。だが「攻め過ぎてつんのめってしまった」と局後に振り返っていた。その局面が第2図か。色々と駒が当たって忙しい局面だが、中村はさらに▲6四桂△同歩▲6三銀と当たりを増やす。だがこの瞬間の後手玉はまだ安全で、羽生は△9八銀不成と飛車を取った。先手玉も詰めろではないため中村は▲5二銀成△同玉▲5四香△4二玉▲6二馬と迫ったが、次の△2六角が攻防の名角である。王手をかけただけでなく、▲4四馬を消しているのが大きいのだ。以下は羽生が勝ち切った。

 戻って、第2図では▲6二馬と金を取る手がまさった。△同飛は▲5四香で後手は歩切れがきつい。まさか角合いはできないし、△4二玉にはそこで▲2八飛がピッタリとなる。そして▲6二馬に△同玉は▲2八飛でよい。以下△5五歩には▲4一銀が厳しく、あるいは△5一飛と割打ちに備えても▲6六桂から▲7四桂を見せれば先手の攻めは切れない。角2枚の後手は先手陣に迫る手段がない。

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第5局 中村太地七段─梶浦宏孝七段

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 チーム羽生はメンバー全員が勝利しての3連勝。こうなっては勢いが止まらない。第4局では伊藤が山崎を破って4連勝、そして続く第5局の梶浦―中村戦は角換わりから途中は千日手模様となる。先手番の中村は果敢に打開したが、その過程で残り時間に差がついたのも大きかったか、徐々に後手ペースとなる。

【第3図は▲7三角まで】

 第3図は次に▲6四角成が実現すれば逆転だが、さすがに梶浦がそれを許すはずもない。△6三金▲9五角成△9四歩▲8六馬△8五銀▲7五馬△7四金▲9七馬△8六歩▲6九玉△8七歩成▲同馬△8六銀と馬を追いつつ8筋を圧迫して、不敗の体勢を築いた。以下は的確に勝ち切って、チーム羽生が圧巻の5連勝。予選通過に大きく前進した。

 対して厳しい状況となったチーム山崎だが、チーム羽生がチーム斎藤も破ってくれれば、最後の直接対決で勝てば文句なく予選通過を果たすことができる。続いて5月13日(土)に放映される予選Bリーグ第二試合、チーム羽生対チーム斎藤の対戦もどうぞお楽しみに。

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【総合成績】
第1局 伊藤○-●佐々木(第1局はチーム山崎が先手番。以下は交互)
第2局 梶浦○-●山崎
第3局 羽生○-●中村
第4局 伊藤○-●山崎
第5局 梶浦○-●中村
総合5勝 ― 0勝

【個人成績】
羽生九段 1-0
梶浦七段 2-0
伊藤六段 2-0
山崎八段 0-2
中村八段 0-2
佐々木七段 0-1

対局時の段位は当時のもの

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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