チーム永瀬VSチーム豊島 ABEMAトーナメント2023~予選Aリーグ第一試合振り返り~

チーム永瀬VSチーム豊島 ABEMAトーナメント2023~予選Aリーグ第一試合振り返り~

ライター: 相崎修司  更新: 2023年04月18日

 今年もABEMAトーナメントの季節がやってきた。この第6回からは新たに5つの個人賞(最多勝利賞、最高勝率賞、最多対局賞、予選最高成績賞、敢闘賞)が設けられ、より一層の熱戦が期待される。まずは4月17日(土)に放映された予選Aリーグ第一試合、チーム永瀬「川崎家」(永瀬拓矢王座、増田康宏七段、本田奎五段)対チーム豊島「百折不撓」(豊島将之九段、木村一基九段、池永天志五段)戦の模様をお伝えする。

【第1局 増田康宏七段-木村一基九段】

abema2023_0415_pb_01.jpg

 振り駒の結果、開幕の第1局はチーム永瀬の先手番に。対戦カードは増田―木村戦となった。戦型は後手の木村が横歩取りに誘導する。序盤は後手の作戦負けだったが、木村もそこは織り込み済みで、差を広げられないようについて行って、終盤を迎えた。

【第1図は▲8九金まで】

 第1図は逆転して後手が指しやすくなっている。ここでは△9八角と打ち込む手も有力だったが、木村は△9六竜と引いた。先手のカナメ駒である馬に狙いをつけている。対して増田は▲6六馬と寄った。馬取りなので当然なようだが、△5五角が痛打となった。馬を消しに行くのと同時に、先手陣の急所である7七を狙っている。▲9九香と攻防手で切り返すも、△8六竜が冷静で、以下▲5五馬△同銀▲7八銀△7七成香まで、木村の勝ち。投了から▲7七同銀としても△8九竜と金を取られて見込みがない。

abema2023_0415_pb_02.jpg

 戻って、△9六竜には▲8七馬という勝負手があった。△同竜に▲8八香と打ち返し、△9六竜には▲9九香ともう一枚の香車を打って、意外と難しい。角香交換の駒得であるため、後手が指しやすいのは確かだが、これは長い勝負だ。

 初戦を落としたチーム永瀬だが、第2局ではリーダーの永瀬が池永を破ってタイに持ち込む。第3局は本田―木村戦で、木村勝ち。第4局は永瀬―豊島のリーダー対決を永瀬が制した。

abema2023_0415_pb_03.jpg

【第5局 増田康宏七段-豊島将之九段】

【第2図は△7六歩まで】

 2勝2敗のタイで仕切り直しとなった第5局。チーム永瀬は増田が2度目の出陣、対してチーム豊島はリーダーが意表の連闘である。増田の先手で角換わりに進んだ。第2図が勝負どころとされた局面で、ここで増田は▲6五飛と走った。対して△7七歩成は▲5四銀△同玉▲5五飛で先手勝ち筋だ。飛車走りに豊島は△5四銀と受けたが、▲7五飛△7四桂▲5五歩△6三銀▲5四銀△同銀▲同歩△6三玉▲4五角と進み、先手勝勢となった。後手はわかっていても▲5三歩成△同玉▲8一角成の順が受けにくく、先手玉はまだ安全である。局後に豊島は「△7六歩の局面はいい勝負と思っていたが、▲6五飛を見落としていた」と振り返った。

abema2023_0415_pb_05.jpg

 第6局は永瀬―池永となり、これは手番も含めて第2局の再現である。第2局同様、池永は矢倉模様に進めたが、永瀬は雁木で対抗した第2局とは異なり、早目に右桂を活用しての速攻に出た。結果的にはこの攻めが功を奏したのか、快勝でチーム永瀬が4勝目を上げた。

【第7局 本田奎五段-木村一基九段】

abema2023_0415_pb_06.jpg

 後がなくなったチーム豊島は第7局でここまで2連勝の木村を投入。対してチーム永瀬の出場は本田。こちらも本田先手という手番を含めて第3局の再現だ。そして盤上も第3局同様の角換わりとなる。

【第3図は△6五銀まで】

 第3図。ここで本田は▲9五角と飛び出し、△8四歩に▲8六角と引く。次の狙いは▲9三歩成だ。尋常な手段では受けにくいと見たか、木村は△8五歩▲9五角△7二玉と非常手段に出る。先手の角が9五にいる限りは▲9三歩成に△同香が角取りになるため、歩は成りにくい。

 だが、△7二玉には▲5五桂△5四金▲6六歩が好手段だった。△6六同銀は▲6七歩で銀取りが受からず、先手は銀を手にすれば▲7三銀の狙いが生じる。実戦は▲6六歩に△5六銀▲5七歩△9四香▲5六歩△9五香▲同香と進んで先手勝勢となった。▲9九飛の追い打ちもあり、後手は9筋突破が受からない。

 開幕戦はチーム永瀬がリーダーの3連勝もあり、5勝2敗の好成績で制した。続いて4月22日に放映される予選Aリーグ第二試合、チーム永瀬対チーム稲葉の対戦もどうぞお楽しみに。

abema2023_0415_pb_07.jpg

【総合成績】
第1局 増田●-○木村(第1局はチーム永瀬が先手番。以下は交互)
第2局 永瀬○-●池永
第3局 本田●-○木村
第4局 永瀬○-●豊島
第5局 増田○-●豊島
第6局 永瀬○-●池永
第7局 本田○-●木村
総合5勝 ― 2勝

【個人成績】
永瀬王座 3-0
増田七段 1-1
本田五段 1-1
豊島九段 0-2
木村九段 2-1
池永五段 0-2

ABEMAトーナメント

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています