藤井─羽生戦開幕! 1月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井─羽生戦開幕! 1月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年01月31日

 藤井聡太王将と羽生善治九段のタイトル戦がいよいよ開幕。夢のシリーズは一局でも多く見たいところです。また、女流名人戦も開幕しました。

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

【第1図は△7四歩まで】

 第1図は第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第1局(▲藤井聡太王将△羽生善治九段)。世紀のシリーズの開幕戦は一手損角換わりの相早繰り銀となりました。第1図の△7四歩は「敵の打ちたいところへ打て」で▲7四桂を防いだ手です。しかし▲6五歩△7三銀▲6四歩△同銀▲6六桂がそれを上回る好手順。6六の歩を消して「桂は控えて打て」を実現しました。△7三銀に▲7七桂と桂を出動させて攻めをつなぎました。

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写真:金子光徳

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局

【第2図は▲4一飛まで】

 第2図は第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局(▲伊藤沙恵女流名人△西山朋佳女王・女流王将)。後手の三間飛車に先手は急戦模様から玉頭の位を取りました。うまくさばいた後手が優位に立ち、後はどう決めるか。△2七銀が「玉は包むように寄せよ」です。飛車を逃げれば△3六金で包囲網が完成します。実戦は▲4七玉でしたが、△6三金から的確に後手が寄せ切りました。

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写真:常盤秀樹

第7回YAMADA女流チャレンジ杯決勝

【第3図は▲2三飛成まで】

 第3図は第7回YAMADA女流チャレンジ杯決勝(▲堀彩乃女流1級△加藤結李愛女流初段)。3年ぶりに開催されたYAMADAチャレンジ杯です。相掛かりから先手に分のある終盤戦でしたが、決め手を逃して後手がチャンスを迎えています。△5三玉が「玉の早逃げ八手の得」で、これで後手玉は寄りにくい格好になりました。▲2一成桂△4二銀打▲4三歩に△5五桂と反撃し、▲4二歩成に△6七桂成▲4九玉△6六角が好防手で後手が逆転に成功しました。加藤女流初段は初の棋戦優勝です。

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写真:睡蓮

第81期順位戦A級7回戦

【第4図は△7四角まで】

 第4図は第81期順位戦A級7回戦(▲菅井竜也八段△糸谷哲郎八段)。対抗形らしいねじり合いで迎えた終盤戦ですが、▲4八香の王手が厳しい一着。「下段の香に力あり」で、3九への角の利きを止めながら4筋の制空権を握ることに成功しました。以下△5四玉に▲2五竜△4四銀▲7五歩△同角▲3四竜と迫り、自玉を安全にしながらの攻めで難解な終盤戦が続きましたが、最後までこの香が生きる形となり、先手が制しました。

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写真:名人戦棋譜速報

【第5図は△4三金まで】

 第5図は順位戦A級7回戦(▲佐藤康光九段△佐藤天彦九段)。残留争いの大一番です。先手の方針が問われる局面ですが、▲5七角が好手。△6七竜に▲9三角成△6九竜▲5七馬引で先手陣は鉄壁。「馬は自陣に引け」「馬の守りは金銀3枚」とも言われるように、二枚馬が強力な守備駒となっています。先手がリードした終盤戦でしたが、最後は後手が逆転勝ちを収めました。

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写真:名人戦棋譜速報

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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