ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2022年11月04日
里見香奈女流王将に西山朋佳女流二冠(開幕当時)が挑戦した第44期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負。両者は前期も対戦しており、2勝1敗で里見がタイトルを奪取した。今期は立場を入れ替えての戦いとなった。
第1局は宮崎県都城市「霧島創業記念館 吉助」にて。駆け引きの末、西山の角交換振り飛車に里見の居飛車となった。中盤、西山が左桂をさばいて優位に立ち、そのまま差を拡大していく。
【第1図は△3九馬まで】
先手玉は追い詰められているようだが、▲2八金と埋めて後手の攻めは届かない。△4八桂成に▲4二金△同金▲同竜と攻めて寄せ切った。西山が復位に向けて先勝。
第2局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。里見の中飛車、西山の向かい飛車で始まったが、里見はすぐに居飛車に戻す。対する西山は珍しく穴熊を採用した。
【第2図は△5五歩まで】
穴熊から急所の玉頭を攻められているが、駒得の先手はここをうまくしのげれば良くなる。▲6三銀が根元の飛車を責める受け。△5六歩▲4四と△7六歩▲7二銀成△7七歩成▲同玉で大駒を取り切って後手が攻めを続けるのは大変だ。いかも穴熊を生かした猛攻が続いたが、最後は先手が入玉を果たしたところで後手の投了となった。里見はこれまでタイトル戦に60回以上出ているがストレート敗退はなく、今回もしのいで決着は最終局へ。
第3局は東京都渋谷区「将棋会館」にて。本局の1週間前に白玲戦の第7局が行われ、里見が西山から白玲を奪取し六冠となっていた。里見の一強となるか、西山が食らいつくかの一番となった。
戦型は第2局同様に里見が中飛車から居飛車に振り直す展開に。本局の西山は美濃囲いを選択した。軽快にさばいた西山がリードを奪う。
【第3図は▲5九香まで】
飛車が捕まりそうな格好だが、△6三桂が好打となった。金をかわすと飛車に逃げられてしまうので▲5四香と取ったが、△7五桂▲9七角に△8七桂成▲同玉△5四歩で先手陣はまとめにくい形だ。▲7八玉に△8四香▲8七歩△8五香打と並べる数の攻めが厳しく、以下は素早く寄せ切って西山の快勝となった。
西山が2勝1敗で女流王将を奪還し、通算10期目のタイトル獲得。西山は女流二冠に戻り、里見の独走を阻止することとなった。両者はすぐに倉敷藤花戦三番勝負でも激突するが、今年五度目のタイトル戦はどうなるだろうか。
ライター渡部壮大