永瀬、持ち味出して4連覇達成

永瀬、持ち味出して4連覇達成

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年10月11日

 4連覇を目指す永瀬拓矢王座に豊島将之九段が挑戦した第70期王座戦五番勝負。両者は十番勝負とも称された第5期叡王戦七番勝負以来の対戦だ。

第70期王座戦五番勝負第1局

 第1局は東京都港区「グランドプリンスホテル高輪」にて。角換わり腰掛け銀の研究勝負から豊島が徐々に抜け出す。

【第1図は▲5五桂まで】

第1図から△6九銀が攻めを加速させる捨て駒。▲同玉と取らせてから△8七歩成とすればより厳しくなっている。以下▲5八玉△7八とに▲3六銀と必死の勝負手だが、冷静に△同歩と応じて後手の勝ち筋だ。豊島が快勝で開幕戦を制す。

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第70期王座戦五番勝負第2局

 第2局は愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」にて。角換わり腰掛け銀から豊島が研究でリードし、局面、時間ともにリードするが長考の末に勝ち切れず千日手へ。指し直し局は永瀬が先手番かつ時間もリードと有利な状況でスタート。角換わりから後手の豊島が棒銀に出るが、永瀬もバランスの良い構えで迎え撃つ。

【第2図は△2四銀まで】

鋭く踏み込んで形勢は先手がリード。▲7九飛が丁寧な指し回しで、△2八飛成なら▲8一馬から駒を拾えば良い。実戦は△7九同飛成に▲同金で陣形が安定。△2六歩に▲7一飛△2二玉▲2五歩△3三銀▲3五歩△1二角▲1四歩と調子よく攻めて先手が押し切った。永瀬が苦しい将棋を千日手で跳ね返し流れを変えた。

第70期王座戦五番勝負第3局

 第3局は京都府京都市「ウェスティン都ホテル京都」にて。角換わり相早繰り銀から研究勝負となるが、永瀬が早い段階からリードを奪った。

【第3図は△4二同金まで】

駒得かつ陣形の安定度にも差があり、先手良しだ。▲3四歩が確実な手で、単に▲3一飛と打つよりも厳しい攻めだ。△7六歩▲6六銀に△2二角と攻防に打ったが▲5五銀直と自然な指し手を重ねてリードを拡大していき、そのまま押し切っている。永瀬が夕食休憩前の快勝で2勝1敗と逆転。

第70期王座戦五番勝負第4局

 第4局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。またも角換わりから腰掛け銀となり、先手の豊島は堅陣、後手の永瀬は右玉で持久戦となった。千日手模様から豊島が打開、形勢の揺れ動く熱戦となった。

【第4図は▲7三桂まで】

後手が入玉できるかの終盤戦となった。△2六角が制空権を握りにいく好打。▲7九飛△4五歩▲5六桂に△4七角とさらに投入し、▲4四歩△5五歩▲6一桂成△5六角成▲6四成桂△4四玉▲3九香に構わず△3五玉が好判断で、空中要塞が強力で後手玉は捕まらない格好になった。以下指し手は続いたが、最後は豊島が諦めて投了となっている。

 永瀬は難敵を退けて3勝1敗で4連覇を達成。千日手に入玉と持ち味の出るシリーズとなった。来期は名誉王座の称号が掛かったシリーズとなるが、挑戦者は誰になるだろうか。

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注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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